異世界召喚は年々増加傾向にあり、政府は一層の規制強化並びに探索事業の拡大を行う方針を………

@nikutarou

異世界拉致は特に日本において深刻な外世界問題となっており

王城、そう表現するほかない絢爛な空間が四二名を出迎えた。

玉座と呼ぶのだろう同じく豪華絢爛な椅子の前で、マントの男が声を張り上げてこう言った。


「よくぞ来てくれた異世界の勇者たちよ!我の名はディスティ=ウィア=レーガルド、このレーガルド王国の君主である!!」


ざわめきが広がる。彼らはほんの数分前まで教室で授業を受けていたのだから、混乱するのも当然だ。


「……おい、どういうことか説明しろ」


クラスの一人、どことなく柄の悪い少年がそう問いかける。すると、先ほど王と名乗った老人の横からスラリとしたスタイルのいい女が歩き出てきた。彼女は持っていた本をパンと畳み、それから


「はい。皆さんは混乱されている事と思いますが、どうか説明を聞いてください」


と言った。その音と説明をすると言う発言のお陰で、場はやがて一応の平静を取り戻した。頃合いを見計らったかのように彼女が口を開く。


「現在、この王国は魔王軍の襲来を受け、国土が壊滅の危機に瀕しています。このままでは、多くの民が命を奪われてしまうでしょう」


そこで!と彼女は声を張り上げて言った。


「異世界から国を救う勇者を召喚する『異世界召喚の儀』を執り行う運びとなったのです!

……どうか、この国のために少し力を貸して下さい」


そう言って頭を下げる。再び大きなざわめきが部屋を包む。

と、どことなく暗そうな少年が、弱々しい声でこう問いを発した。


「あの……これって…?」

「はぁ?」


柄の悪い少年がそう声を漏らす。ただ、それは発言の意味がわからなかったからではない。


「取ってる訳ねえだろ。

「あー、やっぱそうかぁ」


王は既に目を白黒させて、彼らの言葉を反芻するばかりになっている。


「それじゃ、そろそろ迎えがくるのね」

「ヨカッたぁーー、見捨てられたかと思ったよ……」

「だぁークソっ、パンが売り切れちまうじゃねえかよっ! おい沢田っ!!」

「万積まれたって無理ですよっ!!」

「み、皆さん一先ず静かにしてください!!」


慌てて案内の女性が場を制そうとする、が、もはや収拾はつかない。


「ええい、王の御前で喚くでない無礼者っ」


辛抱ならんと言った様子で騎士の一人が切り掛かる。が、その刃は青白い真円形の膜にあっさりと阻まれた。


「なっ!? 防御魔法だとっ!!?」

「あんたマジで何言って……いや、まぁそうか」


実のところ、この防壁は高次元から神秘力(この世界でいうところの魔力)を組み上げ駆動しているので彼の言っていることはあながち間違いではない。

そんな些細なことよりも「異世界人が日本国籍の人物に危害を加えようとした」と言う事実の方が本来深刻であるのだが、彼らにそれを認識することはできない。

そうこう揉めていると、不意に甲高い音が城の外から響いてきた。


「ぐっ、こんな時に魔族が……」


騎士の一人がそううめく、が、それは大きく間違っている。


「おい、やっとが来たぞ」


その言葉の通り、姿を現したのは……


『こちら次元保安庁、直ちの武装放棄並びに拉致被害者の受け渡しを求める。繰り返す。こちら次元保安庁ーー』


白い、鯨だ。空中に描かれた立体が解けるように消えて行き、その全身が顕になる。

全体を抗神秘物理装甲で覆い、二機の龍脈炉と三機の相転移炉を搭載する、神にも等しいまごうことなき

上方に取り付けられた砲塔が静かに旋回し


『尚、従わない場合には』


ぴたりと


『本艦の武装の制限使用が認められている』


王を名乗ったの方を向いた。

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