第9話 まあそんなこと言わないで
皆で疑りの目を向けると、ジェイク副寮長はムッとした顔になる。
「ちょっとー、皆もしかしてこいつが副寮長?適任じゃねえ~!って思ってない?前まではちゃーんと副寮長っぽかったさ。それにぃー、たまーにサボりたくなるだけ。ちゃんと仕事はやってますー。」
本当だろうか。疑わしいが、寮長がしっかりしてそうだから別にどうでも良い。
副寮長を嗜めるように、寮長は張った爽やかな声で皆に呼び掛ける。
「さて。寮部屋は一年は四人で一部屋だ。同室となるとどうしても揉め事は起こるだろう。同室で喧嘩が起きたら僕が仲裁に入るから、遠慮無くやってくれ。解散!」
ということで、なんやかんや私達新入生はセカンドフロアにいる。自分の部屋を探しているところだ。
「部屋は入口に名前が書いてあるから、探しだして各々入って!」
と言い、寮長は走って副寮長の昼ご飯を買いに出ていったのだ。
「えー、薔薇の間はヤツギ、ルーバー?、ガウディ、ケニー……桃の間は……あ、ルカの名前がある。ルカもやっぱセンドパトラか。……あれ、てかここ付近は男子部屋だな。彼方に女子が集まっている。女子部屋はあっちのようだ。」
男女で部屋は北と南、長い廊下で別れていることに気づいた生徒達が、女子は南へ、男子は北へ廊下を移動している。
私もそれに着いていく。
「ここは蓮の間か。……私のは無いようだ。」
事前に部屋割の紙でも制作し配っておけばよいものを、先生も寮長も誰もやらなかったとは。
もっと効率良くいこうよ、と心の中でぼやく。
キョロキョロと辺りの部屋をしらみ潰しに調べていると、北へ向かうルカと鉢合わせになった。
「ああ、ジン。同じ寮になれましたね。僕の勘は的中したようです。桜の間に貴方の名前が書いてありましたよ。ケセラさんの名前もありました。この道を真っ直ぐ行って二番目のあそこです。」
「おや。二人して自分でなく相手の名前を見つけるとは。私もルカの部屋見つけたよ、桃の間。さっき名前が書いてあったのを見た。」
「それはお互い探す手間が省けましたね」
「うん。にしても、三人同じ寮になるとはね。ルカの勘的中だ」
ルカの言った通り真っ直ぐ進むと、二番目の部屋に〈桜の間:ジン・フェニックス、ケセラ・オールナイト、サクラ・レンブラント、レン・ケラー〉と書いてある。
ケセラと同室か。既に顔馴染みとなった者と一緒というのは、とても有難いものだ。
さっそく入ろう
ドアノブを捻り、扉を押すと、少し古いようだ。
キィィーと音を立てて開くと、既に三人揃っていたようだ。皆で部屋の椅子に座り談笑している。
「おっ。最後の一人が来たよ」
「ジンーー!!一緒の部屋とはな!嬉しいぜ」
「おう。宜しく願います~」
嬉しそうに手と尻尾を大きく振るケセラと、ミディアムの緑髪に褐色の肌、黒みがかった緑の瞳がキリッとしている子、そして短い灰色の髪と眠たそうな目をした子が私を出迎えてくれる。
「もう三人揃っていたんだね。私はジン。宜しく」
「おー。自分はサクラ・レンブラントだよ。宜しくね」
「わてはレンだよぉ。宜しくねえ~」
緑髪の子がサクラ、灰色の髪の子がレンというそうだ。
「そして~~!俺がケセラ~~!!!」
左手を腰に、右手の親指を己に突きだしポーズをとったケセラが名乗る。
ドーン!と効果音がつきそうな堂々とした立ち振舞いとどや顔だ。ケセラの人となりが今日で充分にわかったと思う。
「はっはっは、さっきも聞いたよ。面白いなあ」
「うむ。元気でよろしい!」
サクラとレンとも、既に打ち解けているようだ
「この後どうするの?あー荷物取りにいかやんとだっけか。自分は郵便で送ってたが、君達もだろ?」
「おう。俺は大量に送ったからな!ジャーキーとー、ドライフルーツとー、あと缶詰を幾つか。」
「食べ物以外は?生活品もでしょ~?わても不足無いよう詰め込んだからなぁ。」
「じゃあ、全員で取りに行こう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます