第5.7話 ケトルベルを使ってゴブレットスクワット
「次は、重いものを実際に持ち上げるときの動きを少しずつ身体に覚えさせるためのエキササイズだ。」
「動きそのものの練習も大事だぞ!」
そう言ったフジカルは、ふと思いついた。
(そうだ、ヤツを呼ぼう)
そして何もない空間に向かってフジカルが声をかけた。
「おーい。出てこーい」
すると、ちょうどフジカルの肩よりも少し高いぐらいのところに、黒い穴のようなものが登場し、そこからタヌキがピョンと出て来た。
出て来たタヌキに向かってフジカルは語りかける。
「マミ、ケトルベルに変身してくれ」
そう言われたタヌキは、にっこりしながら答えた。
「はい。わかったの。なのです」
マミが変身したのは、オモリの上に取っ手がついており、ヤカンに形がにていることからケトルベルという名前がついたダンベルの一種だ。
「これはケトルベルと呼ばれているウェイトだ!」
「いろいろな使い方があるが、これを胸元に抱えてしゃがむゴブレットスクワットは、スクワット初心者にもオススメだぞ!」
ケトルベルを持ち上げながらフジカルが説明する。
「ということで、これから、ケトルベルを使ったゴブレットスクワットを行う!」
「ゴブレットスクワットは、身体の前面側でオモリを持つが、それによって重心を前に寄るので、深くしゃがむときに後ろに倒れてしまいそうになる人にとっては、深くしゃがむときにバランスをとりやすくなるぞ!」
深くしゃがみ込もうとする人には、身体の正面側でケトルベルなどのウェイトを持ってもらうという方法がある。これはケトルベルではなく、ウェイトのプレートなどでも良い。後ろに転んでしまうのは、しゃがんだときに重心が足のかかと側よりも、もっと後ろに行ってしまうからだ。重たいものを身体の前に持つと、その分、重心が身体の前面側に寄るので、後ろに転ばずにしゃがみやすくなる場合もあるわけだ。
「さらに、足首の可動域が足りない、そんなアナタには、この板を使う!」
厚さ4cmほどの薄い板が登場した。
「この板は何の意味があるのでしょうか?」
疑問に思ったエリカが聞いた。
「この板をかかとで踏むことで、深くしゃがみやすくなるんだ!」
今回は板を使っているが、ディープスクワットを改善するための小道具として、ウェイトのプレートが使われることもある。ちょっとした高さがあるものであれば、良いのだ。
「ギエルハルドは足裏全体を地面につけたままの深いゴブレットスクワットは困難であったため、薄い板をカカトで踏みつつ、つま先は地面につけることで、かかとが少し浮く形になる」
「それにより、足首の深い背屈を伴わずに、深くしゃがむことが容易になるというわけだ!」
ウェイトリフティングのためのウェイトリフティングシューズは、かかと側がつまさきよりも少し高くなっている。深くしゃがみこむときに、足首の背屈可動域を軽減できるためだ。今回は、かかとの下に板を置くことで、同じような効果を実現している。
「かかとを浮かすための板を使ったゴブレットスクワットで、深くしゃがみ込むディープスクワットにおける身体の使い方を練習していく。」
足首の背屈可動域に制限がある状態でも、かかとを少し浮かせることで、全体の動きの練習が可能になる。制約が存在する部分があったとしても、工夫をすることで、その制約に引っ張られずに練習をすることもできる。身体全体の使い方は、それはそれで練習が必要なのだ。
「それと同時に、このようなエキササイズを繰り返すことも、足首の可動域を確保する助けになることが期待できる。」
使い続けることで可動域が改善する場合もあるのだ。その可動域が必要な動作を繰り返し行うことも、ときとして大事だ。
「負荷をかけていくと、身体が徐々にその負荷に適応していこうとするので、適度な負荷をかけ続けるのも大事だぞ!」
ただし、負荷が適度であることは重要だ。過剰な負荷をかけてしまうと、怪我をしたり、逆に全く改善しなかったりと、改善にとってマイナスとなってしまうこともある。ただし、適度がどれぐらいなのかが人によっても違うし、同じ人だとしても、トレーニング等の進み具合によって変わっていくこともあるのが難しいところだ。常にどれぐらいが適度なのかを模索する必要があるわけだ。
そんなことを思いながらも、みんながゴブレットスクワットを繰り返す様子を観察するフジカルだった。
そして、おのおのが何度かゴブレットスクワットを行った後に、今度はゴブレットスクワットを行っていた位置のまま、今度はケトルベルを床に置いた。
「元々は、床に置いたインゴットを持ち上げようとして腰を痛めてしまったわけだが、そうなってしまう可能性を下げるためのしゃがみかたをさっきは練習した。」
「今度は、その練習をふまえて、床に置いてあるケトルベルを持ち上げる練習をしてみよう!」
「ゴブレットスクワットと同じように、身体をできるだけ起こした状態で両手を下に伸ばして、床に置いてあるケトルベルの下に手を入れて持ち上げる練習だ!」
「さっきの板をかかとの下に入れたままの状態でやってみよう!」
「ケトルベルの重さだが、そうだな。。。最初は12kgで行ってみようか。マミ、12kgになってからギエルハルの前まで動いてくれ」
ケトルベルに変身したマミにフジカルが語りかける。
「はい。わかりました。なのです」
とケトルベルが答えてから、ケトルベルから足が生え、ギエルハルの前まで歩いていった。
ギエルハルドは、目の前に動いて来たケトルベルを少し眺めると、何度かそれを持ち上げる練習をした。
練習が続くのを見たフジカルは、さらに次の説明を開始した。
「さて、腰を痛めにくいしゃがみかたを練習したわけだが、腰を痛めにくい物の持ち上げ方としては、自分自身の身体の扱いかただけではく、床に置いてある物の角度を工夫するという方法もあるぞ!」
「たとえば、四角いインゴットが床に置いてあったとしよう。まず、最初に、そのインゴットを傾けて角の一部だけが地面についたまま立てる状態にするだ」
「そして、角が地面について立っている状態のインゴットであれば、手で持つ位置が床にベッタリと置かれているときと比べて少し上にできる。」
「なので、無理に深くしゃがんだり、腰を過度に曲げて手を床に近づける必要がなくなるんだ。」
「身体の動かし方だけではなく、持ち上げたい物が傾けたりしても良い物体であれば、持ち上げやすい角度に直してから持ち上げるのも怪我を避ける方法のひとつだぞ!」
ここまで、だいたい15分ほどの軽いトレーニングであったが、今日のところはそれぐらいの軽い内容で終わらせ、その後はギエルハルドは仕事へと戻って行った。
こういった労災を避けるようなトレーニングには、あまり時間をかけることが好まれない傾向もあり、トレーニングを手短に終わらせることが最善になることもある。
そして、トレーニングを続けてもらう必要はあるので、トレーニングを行うことが苦痛になるような時間ではないというのも大事なのだ。
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