世紀末モジュール

生成り

第1話 途中参加

「寒っ……ん?」


目を覚ますと知らない場所にいた。


辺りは背の高い建物に囲まれていて、そのどれもがツタや苔に覆われている。

停まっている車も傷と錆だらけで窓は全て割れてしまっていた。


目につくものがすべてが荒廃しており、人がいるとは思えない、まるで世紀末だ。


…?


今の状況を整理してみる……

まず目を覚ましたらなぜか知らない場所にいて、そこは何もかもが荒廃していた。


そして全身どこを探しても携帯が見つからないためここがどこか調べられない、それにもしもの事があっても助けを呼べない、あとお腹空いてるし喉も渇いてる。

そこそこの非常事態


ちなみに今の装備は生地の薄いパーカーその上に羽織ったカーディガン、ジャージのズボン、コンビニの靴下と誕生日に友達からもらった靴……それと切るのを怠った髪を縛っているゴムのみ。


なぜこんなところにいるのか記憶を遡ってみた、しかし最後の記憶は飯とゲームを繰り返した後にベッドに入る所で終わっている。

要するに寝て起きたらここにいた……ということだ。


…?


とりあえずここはどこだろう、近所じゃないことはわかる、頬をつねりながら辺りを見回すがあるのは相変わらず廃墟のみ。

というか近所どころかこんな場所日本にあっただろうか


見た感じそこそこの都会、50m~70mほどの高さのビルが多く並んでいて100mを越えている物もいくつかある。


というより他の100m越えの建物はほとんど倒壊してしまっているようだ、ドミノのように別のビルを巻き込んで瓦礫の山と化している。

そしてそれを覆うとんでもない量の苔とツル…ではなくもはや木、道路や壁は亀裂や雨水による汚れが目立つ。


数百年から数千年はかからないと作れない光景じゃないだろうか。


(いやそんな昔にこんな立派な都市ないか……)


少し計算してみることにした。建物の寿命は確か50~60年くらい、いや…鉄筋コンクリート造のビルなら100年くらい行くんじゃなかったか?

まぁそれ以前に寿命を迎えた瞬間即倒壊なんてことは起きないか、出てくる問題と言えば主にコスト面だろう。


(そういえばビルが自然に倒壊することってあるのかな……)


なら考えられるのは地震か……しかし現在の耐震技術を持ってすれば数棟ならまだしもこの数のビルが1度の地震でここまで壊されることはないはずだ。

よし、じゃあすさまじい規模と被害の地震が数回起こったことにしよう。


わからんが3,4回くらい、なら大体300年くらいあればいけるか?いやもっと必要か…植物の侵食具合も加味して合計でまぁ400~500年くらいにしておこう。


ガバガバ推理だが続けよう、とりあえずそんな昔に車や自販機はない、あったとしても原型やアイディアが出てき始めたくらいだろう。


じゃあ尚更この場所はなんだ?

……いったん答えを出そう、これ以上やっても謎が増えるばかりだ。

考え方を緩めればいい、そうだ……ファンタジーに考えよう


今自分は何らかの理由で未来に飛ばされてそこは世紀末だった、そう…タイムスリップだ、いいじゃないかファンタジーというよりはSFだが。


(辻褄は合うしこれでいっか)|


改めまして、自分は気付くと見知らぬ場所にいてそこは世紀末だった…原因は恐らくタイムスリップ、完璧だこれで行こう


…さて


次は何をするべきか……とりあえず人に会うのが最優先だろう、いるかわからんがもしかしたら自分と同じ境遇の人間に会えるかもしれない。


しかしこのまま地道に歩いて探すとなると時間がかかってしまう、できれば高所から見渡して探すのが望ましいが……

それができそうな建物が見当たらない。


何棟か中に入って確認したが階段や床が崩落していたり植物に塞がれていたりと屋上まで行けそうにない、というより行きたくない、知らない色をした水と知らない虫だらけだからだ。


(もう少し歩こう)


なるべく状態が良くて見渡しのいい建物が理想だ、登って人が見つからなくても最悪そこを拠点にしてサバイバルすればいい、それはそれで楽しそうだ。


そんなことを考えながら歩みを進めた、そして角を曲がったその時、それは突然現れた。


「え……」


思わず声が漏れそのままフリーズした。

目の前に映ったそれは先程と何も変わらないただの廃ビルに、まとわりつく針金のような何かだった。

ビルの高さは30mほどでそれを針金が根を張るように覆っている、どの時代にもなかった異様な光景だ。


(外から覆ってるんじゃなくて中から出てきてる?)

「あ…動いた……」


動いた


恐る恐る近づいて再度確認するがやはり動いている、その動きは針金のグネグネした感じとは異なりカクカクと機械的だった。

近づいて分かったが針金のサイズは最小で髪の毛程度、最大で携帯の充電ケーブルくらいの大きさとばらつきがある。


一応人工物ではあるのだろうが何を目的として造られたのかは検討もつかない。

でもこれで一つ分かった、これがあるということはこれを造った人間もいるということ、こんな世紀末になっても人類はしぶとく生き残ったようだ。


そうなると尚更登れる建物に上って人を探したい、そう考えた時ふと針金に覆われてる建物に目をやった。

よく見るとこのビル、他の廃墟とは違って苔もなければ水も溜まっていない理想に近い状態だ、窓以外に大した損傷も見当たらない。

まぁとっても怪しい針金に覆われてしまっているが…


「お前さえなければなぁ……」


そんなことをつぶやきながら針金触れた。


すると次の瞬間触れた場所の動きが止まり束になっていた針金の先が開いたかと思うとかなりのスピードでビルの中へと入って行く、そして数秒後上階から金属が激しくぶつかる音が響いた。


「…!? ……!?」


しばらく唖然としてしまった。

本来ならこの時点で離れるべきなのだろう、しかし好奇心がその判断を殺した。


「行ってみるか!」

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