めくれる記憶《有栖》

ああ、まただ…


また父が私の内部を犯してくる。

もう大丈夫と思っても。

何度も何度も。


痛い。

怖い。

悲しい。


声を出したらダメ。

竜之介に聞こえちゃう。


やめてパパ

助けてお兄ちゃん

ママ、助けて

助けて


ハァハァ……


目が覚めると暗闇でひとりだった。

どこ、ここは、どこ。

竜之介がいない。


耳が痛い。

そう思ったら叫んでいるのは自分だった。


「有栖!」

ドアがバタンとあいて、竜之介が慌てた様子で飛び込んでくる。


「ご、ごめんね!暗闇にひとりで怖かったよね。今、兄貴と桃とリビングで話していたんだ…明かりつけとけば良かったね…」


フーフーと私は肩で息をしていた。

涙で顔がべたべたする。

竜之介が包み込むように抱きしめてくれる。


ああ、そうだった。

ここは兄のマンション。

ここは竜之介のベッド。

私はここにいる。

そして私は今日、記者の人に父との写真を見せられたんだった。

あの写真を撮ったのは……


頭が割れるように痛い

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