第25話 エサ        2023.12.23改定

 25 エサ  

 

 朝起きて、朝食の支度。

 ちょっと手抜きして、昨日のスープと残ってたパンだ。

 フェルは王都の外周を走ってくるそうだ。

 明日から僕もやろうかな?たぶんフェルのペースにはついていけそうにないけど。


 スープが温まったころにフェルが戻って来た。

 一緒に朝ごはんを食べる。

 今日はお昼をギルドの食堂で食べようと思っている。一番安い定食が銅貨4枚だった。


 ホーンラビットの狩り場に着いて橋をかける。

 まだ狩りを始めて3日目だけど立ち入り禁止の森の隣にあるこの荒地には、他の冒険者の姿はない。

 なんか僕らの専用の狩り場みたいになってしまっている。


 ニンジンを小さく適当に刻んで、昨日夕食の時に出たキャベツなどの野菜クズも同じように刻んで、南の森に向かって続く薮の中に撒いていく。

 草むしりをした薮の近くの地面にも多めに撒いて、30メートルくらい離れて弓を構えて待つ。


 しばらくすると藪の中からホーンラビットが次々出て来た。

 それを狙って矢を放つ。全部命中した。

 続けて次々と矢を放つが、矢を撃つスピードよりホーンラビットが増える方が早い。


「このままエサがなくなればあいつら逃げてしまうな」


 フェルがそう言って飛び出した。それを見て僕は撃つのをやめる。

 フェルが次々とホーンラビットを切り捨てていく。早い。


 僕はフェルの後ろで巻き込まれないよう注意しながら、まだ息のあるホーンラビットにトドメを刺してまわった。

 倒したホーンラビットは13匹。とりあえずマジックバッグに入れた。早く血抜きしなくちゃ。

 残ってたニンジンを全部使ってまた餌を撒く。

 今度はけっこう奥の方まで撒いた。


 ホーンラビットの血のあとは軽く水で流しておいて、さっきより多めに草むしりをしたところにエサを用意した。


 フェルが狩りは任せとけと言うので、僕は河原でホーンラビットの血抜きをする。

 昨日買ったロープをホーンラビットの足に結んで、頭を落としたウサギ肉を川に沈める。


 ロープの先は拾った棒を河原に深く刺してそこに結びつけておいた。

 血抜きを仕掛けてフェルのところに戻ると戦闘はもう終わっていた。


「エサがなくなってしまった」


 大量のホーンラビットを集めながらフェルは淡々と言った。

 ものすごい数のホーンラビットの死体だ。


 フェルと2人で川で血抜きする。

 ロープをくくりつける棒がもうないので結べない分は自分たちで持った。フェルは自分のお腹にもロープを結び付けている。


 片手で水筒を出してフェルに渡す。

 僕の分も出して2人で水を飲みながら血抜きが終わるのを待った。


 ギルドに行く前に昨日の野菜売りのおじさんのところに行った。

 形の悪いニンジンや虫食いだらけのキャベツ、折れたキュウリなど箱いっぱいの野菜をもらった。

 今日の成果を聞かれてその数を答えたら、野菜売りのおじさんかすごく驚いていた。


「なくなったらまた言ってくれ。朝は門が開く時間にはここに来てるから前の日言ってくれれば用意しておくぞ」


 おじさんは笑顔でそう言ってくれた。

 

 ホーンラビットをギルドに提出する。

 数が多いことを伝えると解体する場所に直接案内されて、その広いスペースにホーンラビットを並べた。

 ホーンラビットは全部で48匹。

 素材の状態もよく、ちゃんと血抜きをしていたことも評価されて、報酬は銀貨10枚になった。

 1人当たり5万円。これならこれからなんとかやっていけそうだ。


 銀貨を受け取り、それを2人でニヤニヤ見つめた。係の人がちょっと引いていた。


 食堂で一番安い定食を注文する。


 今日くらい贅沢して好きなもの頼んでいいとフェルに言ったけど、倹約は大切だと言って聞かないので、僕も同じ定食を頼んだ。


 味はまあまあだけどとにかく量が多かった。


 お昼を食べたらフェルは訓練場に、僕は解体の講習を受けに行く。

 先ほど納品しに行った加工室に行くと、僕たちが狩ったホーンラビットがちょうど解体されているところだった。もうすでに半分くらい終わっている。

 そのホーンラビットを使って解体を教えてもらう。

 解体には自分の包丁を使った。


 最初にホーンラビットの頭からツノを外す。教えられた部分に深く包丁を入れると簡単にツノは外せた。頭は捨てるそうだ。

 角は薬の原料になる。風邪薬の素材になるので売れなくて困ることはないのだそうだ。

 ここからは特に普通のウサギと変わらなかったので加工室にいる人たちと黙々と作業する。

 加工室の責任者だと言う、大柄でいかつい顔のおじさんが、「お前筋がいいな」そう言って、今度はオークを担いで持って来た。

 僕の身長よりかなり大きい、大物のオークはなかなか解体に手こずったが、コツを覚えればあとは楽だった。

 僕の包丁はもう長いこと使っているので、ちょっと小さい。大きな体のオークを捌くのは少しやりにくかったので、解体用のナイフを借りて3体のオークを肉にした。オークには魔石があって、それは傷つけないようにして取り出した。

 

 ゴブリンにも小さい魔石があるけれど、売っても大した額にならないので、たいていゴブリンの場合は討伐証明の左耳を切って死体は埋めるか燃やしてしまうんだそうだ。たとえ持って来られたとしても、ゴブリンはここでは解体はしない。廃棄してしまうそうだ。


 そのあとキラーウルフ、ダイヤウルフにコカトリス、ロック鳥など、おじさんは窓口に素材が入るたびに僕のところに持って来て解体させた。

最後に巨大なオーガが運ばれて来て、やってみろ。と言われる。僕の包丁では歯が立たなかった。

 解体用のナイフを借りてやってみたが、全く刺さらなくて、それを見ていたおじさんがニヤッと笑って言った。


「いいか、よく見てろよ。これにはちょっとコツが必要なんだ」


 そう言ってナイフを滑り込ませるようにして突き刺す。

 お前に教えることがまだあってよかったと言っておじさんは笑った。

 オーガをなんとか無事解体したら「これで卒業だ、もうたいていの魔物は解体できるだろう」そうおじさんに言われて、解体の講習は終わった。


 訓練場にフェルを迎えに行って、お金も入ったことだし買い物に行くことにした。

 






















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