第3話 フェリシアさんの事情 ⭐︎
3 フェリシアさんの事情
出来上がったスープをフェリシアさんは美味しいと何度も言って、喜んで食べてくれた。
肉無しの、野菜とキノコのスープとパンだけど気に入ってもらえてよかった。
スープはおかわりを持ってきてあげた。
見た感じお尋ね者には見えないし、どうして山の中で一人で倒れていたんだろう。フェリシアさんの事情を話してもらわなくちゃこの先どうしたらいいかわからないな。力になりたいとは思うけど、じいちゃんにまで迷惑をかけてしまうことになるのは少し困る。
僕だけなら全然良いんだけど、むしろどんどん迷惑かけて欲しい。
食後、少し落ち着いたフェリシアさんに、山越えした理由を聞かせてもらった。
フェリシアさんは隣国で第一騎士団に所属していたそうだ。第一騎士団は街の警護と防衛が主な仕事なんだそうだ。
街の治安を守る騎士団のはずなのに、任命されて配属された先はどうしようもないクズの集まりだったらしい。
悪人からは賄賂をもらい、小さな商店などから護衛料と称して恐喝まがいのゆすりや、食堂での無銭飲食。若い娘をかどわかし、やりたい放題だったそうだ。
それでも頑張って働いていたフェリシアさんだったけど、今回野外訓練だと言われて、国境近くの山で訓練をすることになり、夕方、野営の準備をしていたところを同行していた騎士たちに襲われたそうだ。
訓練に参加していたのは副団長とフェリシアさんを含めて他4名。合わせて5人編成で女性はフェリシアさんだけだったそうだ。
団員の1人の腕を切り飛ばして、フェリシアさんは必死に逃げた。
怪我をさせたことで、騎士団にはおそらくもう戻れないだろうと思い、夜通し走り続けて国境の山を越えたそうだ。
ケガをして倒れていた理由は山奥で熊の魔物に襲われたかららしい。
朝方に少し休憩をしようと水場を探していたら、そこで戦闘になったそうだ。
熊に斬りかかり、深傷を負わせたけれど、フェリシアさんは吹っ飛ばされて山の斜面を転がり落ちてしまった。
痛む足を引きずりながら山を降りようとしたが、途中力尽きて倒れてしまい、そこを僕に助けられたと言うわけだ。
うーん。
話を聞くと、なんかその騎士団の人たち、この村にフェリシアさんを探しに来そうだな。
その副団長けっこう執念深そうだし、たぶんそいつらに捕まっちゃったら、今度はフェリシアさんが何されるかわかったもんじゃないよね。
助けてあげたいな。
綺麗な人だし……………実はかなり好みだし。
山で獣に襲われて殺されたことにでもしてしまおうかな。
鎧の残骸を森にばら撒けば偽装できたりしないかな?
「フェリシアさん。この鎧と剣って大事なもの?処分しちゃっても大丈夫だったりする?」
「剣と鎧は支給品だ。貴重なものではない。……騎士団の紋章が入っているからな。私は隣国から逃亡してきたわけだから、いずれどこかで処分しなければならないな、別に構わないぞ」
「この鎧を壊して森に捨てておこうと思うんだ。血でベトベトに汚しておけばきっと死んだと思わせられるよ。たぶんそのうち追っ手が来る。この辺にはうちの村しかないからね。絶対そいつらこの村にフェリシアさんを探しに来るよ」
フェリシアさんの了解が得られたので、マジックバッグに装備を入れて森に向かった。
森に行く前に小屋で飼ってたニワトリを1羽潰し、羽をむしってバッグに入れる。
ニワトリの血でどこまで誤魔化せるかわからないけど、僕は少し自信があった。
普段は入らない、キラーウルフが出るエリアの近くまで急いで行き、フェリシアさんの鎧を壊す。
僕は非力なので、鎧の継ぎ目の比較的楽に壊せそうな部分を狙ってなんとか分解する。
あたりにニワトリの血を撒いて、鎧にもべったりと血をつける。ニワトリの肉を適当に捌いて、さらに鎧の中に擦り込むようにして仕込んでおいた。
フェリシアさんの髪の毛を少しもらってきたので、それも仕込んでおく。
あまったお肉は夕飯にしよう。
残りの肉はバッグにしまい、キラーウルフが寄ってこないうちにすぐその場を離れた。
剣は適当に放り投げてきた。
たぶん夜のうちにキラーウルフが集まって、適当に荒らしてくれるはずだ。
細工が終わったころにはもう日が暮れかけてきていたので急いで家に帰った。
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