新作:掌編「謝らない、よりは……」
経過時間。
それは謝罪から誠意を奪う。
問題発生から時間が経てば経つほど――その後の謝罪には、裏側の台本を、受け取る側に意識させてしまう。
時間があれば台本を練ることができたでしょう? どう言えば相手へ謝罪の誠意を感じさせることができるのか……。考え抜いた上で作られた台本をなぞるだけの謝罪から得られる誠意とは、きっと、書き手側のプロの技なのだろう。
問題が起きて、すぐに謝らなかった時点で、誠意はもう取り戻せない。
子供同士がじゃれていて、たまたま指が相手の子の目に入ってしまった……、そこで咄嗟に出た「ごめん!」こそ、最も誠意が感じられる謝罪だ。
菓子折りを持って自宅を訪ねる? カメラの前で謝罪をする? ……それが誠意? 場を整え、抱えたモヤモヤを消化するための儀式である。それが必要なのかもしれないけれど……。
いつでもどこでも、謝ることはできる。
だけど――
誠意が感じられなくてさらにモヤモヤするのは、謝られた側なのではないか?
…了
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