北の洞窟に居合わすは

 依頼名に洞窟と書かれていた通り、街を出て北に進んだ先にあったのは、小さな洞窟だった。

 地面が大きく隆起していて、その断層に大きな大人が一人通れそうなくらいの穴がと開いていた。


「ここが……ドラゴンのいる洞窟か」


 依頼内容を読むにグラトニーリザードは、この一番奥に棲みついているという。


 アルセディアからこの洞窟までかなり距離が離れている上、次の街であるベルデシアに続く道とは方角が違うことも相俟って、周囲にはプレイヤーの気配はない。

 まあ、大抵の人は最初の街で依頼をこなすよりも、冒険を進める方を優先するだろうから当然ではある。




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PN:ブレイ

Lv:10

メインジョブ:騎士(片手剣使い)

サブジョブ:-未解放-

所持金:10ガル


パラメーター

HP(生命力):30

MP(魔力量):25

STR(筋力):35

VIT(耐久力):30

INT(知力):15

RES(精神力):10

AGI(敏捷):15

DEX(器用さ):10

LUC(幸運):5


装備

メイン:騎士の支給剣

サブ:カイトシールド

頭:騎士の支給帽

胴:騎士の支給服(上)

腕:騎士の革手袋

腰:騎士の支給服(下)

脚:騎士の支給ブーツ

アクセサリ:-


スキルシード

・治癒術

・炎魔術

・雷剣術

スキル

・パワースラッシュ

・フラッシュガード

・アキュートスロー

・ファーストエイド

・ファイアボール

・雷刃衝


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 街から洞窟まで距離があるのと、主要な道から外れてモンスターの出現率が上がっていた分、必然的に道中での戦闘回数は増えていた。

 だから積極的にモンスターを狩っていたわけじゃないけど、自然とレベルは上がっていた。


「とりあえず……ここに来るまでのレベルアップでゲットしたポイントは、全部耐久力に振ってみたけど、まだ攻撃方面を重視しても良かったかなあ」


 現状、回避にしても受け流しにしてもプレイヤースキルでどうにかなってるし。


 とはいえ、初見の敵を相手にして全ての攻撃をノーダメージで凌ぎ切る——なんて芸当は流石に現実的ではない。

 加えて昨日の黒チュンチュン……じゃなくてフォロシスクロウと戦った時みたく、自分の耐久力を超える威力の攻撃をガードするとHPが削れてしまう。

 これから戦うモンスターは、まず間違いなくフォロシスクロウよりも攻撃力あるだろうし、それもあって今回は火力よりも耐久を重視してみた。


 欲を言うと一緒にHPも上げておきたかったけど……それはまた次の機会かな。


 それと、どうやらこのゲームってプレイヤーの戦闘中に取る行動がスキル習得のトリガーになっているようで、戦っているうちに新規にスキルを二つ習得していた。


 一つは、敵の攻撃をタイミングよくガードした時に受け流し補正がかかるフラッシュガード。

 もう一つは——の威力に補正をかけるアキュートスローだ。


 ………………。

 ……うん。


 投擲武器も無いのにアキュートスローを習得したのは、間違いなく何回も武器をぶん投げてたからだ。

 なんだかんださっきもMP節約の為に、剣投げて何体か飛んでる敵を倒してたし。

 でも、ブレイの敏捷は低いし、筋力を底上げした影響でちょっと遠くまで攻撃が届くおかげで、現状は近づいて斬るよりも手っ取り早く倒せるんだよね。


「まあ、新しくスキルを覚えるに越したことはないからいっか」


 それよりも気にするべきなのは、どうやってドラゴン(※リザード)を倒すかだ。

 先にちゃんと情報収集してから来れば良かったかな、なんて思いつつも、ここまで来てしまったからにはもう腹を括って挑むしかない。


 意を決して、洞窟に一歩足を踏み入れようとした瞬間だった。

 ズドン!!! と洞窟の中から大きな爆発音が鳴った。


「うわっ!? えっ、何、なんで急に爆発が……!?」


 モンスター同士での争いが起きたのだろうか。

 それとも——奥に誰かプレイヤーがいたりするのか。


 どちらにせよ、どうなってるのか確認だけはしておこう。

 前者だったら漁夫の利を狙えるかもだし、後者だった場合でもしそのプレイヤーが危険な目に遭っていたら大変だし。


 戦闘態勢を整えてから僕は、すぐに洞窟内に突入する。

 中は薄暗くて視界が悪いからモンスターの奇襲を受けないよう用心しながら、慎重に、でも迅速に奥へと進んでいく。

 程なくして少し開けた空間に抜け出ると、そこに広がっていたのは、天井が派手に崩落し、頭上から陽が差し込んだ光景だった。


 ——そして、そのすぐ傍には真紅の長杖を手にした黒髪の少女が佇んでいた。


 プレイヤーネームが表示されている……ってことは、プレイヤーか。


 横顔を見た瞬間、僕はどくりと心臓が高鳴るのを自覚した。

 同時に額には冷や汗が流れ、緊張が最高潮に達する。


 多分、アバターの見た目をデビクエ4の主人公に寄せた勇者ビルドにした影響からだ。


 背中まで癖一つなく真っ直ぐ伸びた濡羽色の髪。

 対照的に、雪のように白くきめ細やかな肌。

 血液を彷彿とさせる真紅の鋭い瞳。


 質素な作りではあるものの、黒を基調とした厚手のコートをマントみたく肩にかけた彼女の容姿はまさに——、


「ペルシス……!?」


 デビクエ4のラスボス——魔王ペルシスをそのまま少女にしたかのようだった。


 思わず声に出してしまうと、それに反応した少女がばっとこちらを振り向く。

 一瞬、ぱあっと目を輝かしていたような気がしたけど、僕の姿を確認するや否や、途端に彼女の表情が険しくなる。

 まるで因縁の宿敵と相対したかのような警戒ぶりに、僕は——恐らく、彼女も僕に対して——確信に近いある一つの直感を抱くのだった。


 あ、この人……コンセプトが自分と完全に真逆だ、と。




————————————

投擲物がどこまで届くかは筋力が影響し、器用さが高ければ命中精度に補正がかかります。

器用さが低くても、プレイヤースキルがあれば十分命中はできますが、クリティカル威力は器用さで変動しますので、火力を求めるのであれば器用さも上げることを意識した方が良さげとのことみたいです。

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