―11― ユメカ、色々と学ぶ

 あのあと配信を終えてから、色んなサイトを巡回してみたが、想像以上にすごいことになっているようだった。

 あらゆるダンチューバーはもちろんダンチューバーと関係ない有名人までわたしに言及している動画があがってる。

 そのなかで論争になっていたのが、『なぜユメカは強いのか?』というものだった。

 どうやらゴールデンミノタウロスというモンスターはわたしの想像以上に強いモンスターだったらしく、それをいとも簡単に倒せたことが世間は信じられないらしい。


「まぁ、わたしが一番驚きなんだけどね」


 だって、わたしってただのポーション密造者だし。

 特訓した覚えがないのに、いったいいつそんな秘められた力を獲得したんだろう。

 いや、まぁ心当たりはあるんだけど。

 そう思いつつステータスを開く。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈虹天ユメカ〉

 レベル:6

 MP:62

 筋力:32

 スタミナ:24

 敏捷:22

 スキル:〈鑑定〉〈アイテムボックス〉〈調合:レベル9999〉〈ポーション中毒:レベル9999〉


△△△△△△△△△△△△△△△


 いつに間にかレベルが6になってる。

 え? なんでだ?

 まぁ、レベルが上がっていることは一旦置いといて、スキルの考察をしよう。


「この〈ポーション中毒〉が怪しいよね」


 格付けSSSの〈スライム一本締め〉も怪しいけど、なんとなくこっちのほうが怪しい気がする。

 そもそも〈ポーション中毒〉ってなんだ?

 ポーションを不必要に飲む、つまりポーション乱用をやってはいけないのは義務教育で習うためみんな知っていることだ。まぁ、わたしは子供の頃からポーションを飲みまくっていたわけだけど。

 なぜ、ポーション乱用をしてはいけないかというと、ポーションを飲み過ぎると、ポーションの効果が効きづらくなるから。

 ポーション中毒になると、いざというときにポーションの恩恵を得ることができなくなるため、飲み過ぎには注意しないといけない。

 だから、わたしはポーションの効果が効かないはずなのだが、動画だと〈スライム一本締め〉の隠し効果を発動させていたみたいだし、よくわからない。


「あ、ステータスでスキルの解説を見ることができるんだ」


 スマホで色々調べた結果、上記の内容にいきつく。早速、〈ポーション中毒〉の見てみよう。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


〈ポーション中毒〉

 レベル:9999


①ポーション依存症を発症

②ポーションの効果が効きづらくなる(なお隠し効果は適用外)

③酩酊時、バーサーカー状態になる(レベル1000で開放)


△△△△△△△△△△△△△△△


 このバーサーカーってやつだ……!!

 バーサーカーって確か思考能力を失う代わりに、めちゃくちゃ強くなるって聞いたことがある。

 なるほど、わたしってポーション飲み過ぎるとバーサーカーになっちゃうのか……。

 バーサーカーなんかになったら憧れのリアンちゃんのようなアイドルになる夢が遠のくな。これからは気をつけよう……。



「おはゆめ! 今日もみんなに笑顔の魔法をかけちゃうぞ。虹天ユメカです!」


 翌日、わたしは池袋ダンジョンにきて小型ドローンを浮かせて配信を始めた。


【なんだその挨拶】

【なにそれ……?】


「えへへっ、ユメカだけの挨拶を考えてみました! こういうのって、なんだかアイドルみたいで憧れていたんですよね」


【まだアイドル設定諦めてなかったんだ】

【ポーション中毒者がアイドルは無理がある】

【今日はポーション密造の配信か? おら楽しみだぞ】


 あぁああああああ、なんでこんなことになったぁああああ!!

 ポーション中毒者だって言われてもちっとも嬉しくないし、それよりかわいいってチヤホヤされたいのに!


 と、昨日までのわたしなら頭を抱えていたに違いない。

 だが、今日のユメカは違う。

 クックックッ……、とっておきの秘策を用意してきたのだ。

 この秘策があれば、ポーション中毒者の汚名を今すぐ返上できる。


「コホン、企画の前に皆さんにお伝えしたいことがあります」


【おっ、なんだろ?】

【わくわく】


 視聴者の注意を引きつけてから、わたしは大々的に発表した。


「ユメカは今後いっさいポーションを飲まないことをここに宣言します!」


 そう、これこそがとっておきの秘策だった。

 題して、禁酒でも禁煙でもなく禁ポー作戦!

 これならユメカからポーション中毒のイメージを払拭できるに違いない。


【あっ……】

【無理そう】

【これは無理なやつですね】

【もって五日かな】

【いや、三日ももたないだろ】


「おおおぉぉい、お前らちょっと応援しろぉおおおおお!!」


 わたしは天を仰いで叫んでいた。


【突然の大声で草】

【アイドルにあるまじき取り乱し方で笑ったwww】

【ついに本性を現わしたね】


 やばっ、つい視聴者に叫んでしまった。

 いけないいけない。ユメカはみんなのアイドル。もっとお淑やかでいないと。このままではせっかく築いたイメージが崩れてしまう。


「いっけなーい。ユメカ、つい取り乱しちゃいましたー。てへっ」


 といって、自分の頭をコツンと叩く。

 どうだ? わたしのかわいいアピールは。


【かわいい】

【かわいい】

【あざとかわいい】

【あざといアピール助かる】


 よしっ、反応は上々。

 視聴者はわたしのかわいさにメロメロになっている。今だったら、なにを言っても応援してくれるはず。


「みんなありがとう♡ ユメカがかわいいアイドル配信者になるためにも、ポーション断ち応援してくださいね」


【いや、応援は無理】

【それとこれは話が別】

【アイドル配信者は諦めて】

【ポーション断ち、一日もたたないことに俺はこの魂を賭けてもいい……!】


 うるさぁあああああい!!

 お前らがなんと言おうとユメカはポーション断ちするんじゃああああああ!












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