開発者の私が何故か乙女ゲームの主人公に憑依した件~悪役令嬢が美味しいところ全部持って行ってしまったので、ナルシストのモブ(※秀才)と一緒に魔法学院の頂点目指します~
30 たったひとりのディアマス寮生、ただしウサ耳マッチョ。
30 たったひとりのディアマス寮生、ただしウサ耳マッチョ。
「のう、ウィス坊よ。そろそろ
ふいに上がった声にソウビと私はそろって振り向いた。
魔導装置が解除され、幻影魔法も消失したレクリエーションルームのちょうど入り口付近。ずうんと効果音でも発していそうな大きな男が立っていた。
カデンツァも長身だが、それよりもさらにデカくていかつい……そして筋肉質だ。
「あ、あなた様は……!」
「リューガ・ハイドランジア⁉」
ソウビの方が早かった、10点先取。くそ、負けた……って早押しクイズじゃないんだった。
エリュシオン
すなわち「薔薇の誇り」の攻略対象のうちのひとりなのだ。
リューガ・ハイドランジア――規格外の生徒を収容するディアマス寮の寮長兼、唯一の寮生。第四学年を何度も繰り返し、自主的な留年を続けている年齢不詳の謎の青年、である。
学院側は学ぶ気がある者を追い出すことはない。学費さえ支払えれば何歳になっても在籍できる制度があるのだが、落第を何度も繰り返し卒業が叶わず夢破れて去っていくものは何人もいる。
そう、落第……ああそうだった、私、落第しかけていたのだった。
「やァやァ、リューガ先輩。首を長ァくシて待ってイマしたよ」
「おぬしの首はもとより長いじゃろ、ひょろ長くて初めて会うたときそういう化物かと思うたわい」
いやあなたの方だって長髪眼鏡白衣のカデンツァに負けず劣らずフェチ心くすぐる外見でいらっしゃいますよ、と開発者モードでコメントさせていただく。
攻略対象の中でも唯一の褐色枠。まずここで差別化をはかっています。
世の中には細身の美形ではなく精悍な顔立ちに、男らしく凛々しい眉、筋肉質な肉体美に魅せられる女性も多いのです。
ただリューガのデザインでなによりも特徴的なのは耳!
そしてもふ尻尾! である。
ラルヴィーン族――というウサギのようなもふもふの長い垂れ耳と狐のようなふっくら大きな尻尾を有するケモ耳族がいる。それがリューガの出身部族だった。
屈強な男性にカワイイアイテムのモフ耳モフ尻尾がついているところを想像してごらんなさい。無理やりではなく平然と、似合う似合わないに関わらずもふもふがくっついているのです。
もふとイケメンの組み合わせはやはり王道、リューガのアダルトな魅力にらぶりーなもふもふふわふわアイテムが追加されればどうなる――?
そう、最強の男が誕生するってワケよ……。
リューガのコンセプトを考えたとき、私を始めスタッフが完徹状態で頭がフワフワしていた、という裏話はあるのだが――いざ実物を前にするとグッジョブ、と仲間たちとハイタッチしたい気分だった。
そうそう、さっきカデンツァが言っていた動物会話が得意なやつというのはリューガのことなのだろう。外見のとおり、動物との意思疎通を得意としており使い魔を大量に使役している。
リューガがたったひとりでディアマス寮に暮らしているのは、その使い魔たちのために十分なスペースを確保するため(動物たちにストレスを溜めないように)というのもあるのかもしれない。
「おお、マイケル……久しいな。元気じゃったか? そうかそうか、カデンツァのもとで頑張っておるようでなによりじゃ」
さかんにお猿がうきき、と話しかけていると思ったがマイケルはかつてリューガのもとにいたようだ。
ほう……それにしてもこれで三人の攻略対象に遭遇したことになる。残る一人は第二学年からイベント起きるから、しばらく会えないかな。もうこれ以上人間関係複雑になるのもだるいので、とりあえずそっとしておきたい。
なんて主人公にふさわしくない消極的発想をしていたところで、リューガとばちっと眼が合った。
「おお、嬢ちゃん。ぬしらがカデンツァの言うておったガキどもじゃな。ほんに、こまいのぅ」
「ど、どうも……」
悪気はないのだろうがばしんばしんと背中を叩かれて若干痛かった。ウサ耳のわりに腕力が強い。
でも「嬢ちゃん」呼びは激アツ……おまえ、あんた、キミ、そして嬢ちゃん! 私は呼び方フェチなのでバリエーションが豊富で嬉しい。
「リューガさん……あの、俺、リューガさんのことめっちゃ尊敬してて」
「お、そうか? そいつは嬉しいのう。若いもんにそんなふうに言われると嬉しくなってしまう」
いつになくソウビの目がきらきらしている。その言葉に偽りはないようだ。
美少年系統のソウビとリューガは対極にありそうなのだが、まさか筋肉トレーニングへ興味が? え、やだソウビってばムキムキになっちゃうの? こ、困る……私の癒しが!
「っ、念話うるさっ……さっさと接続切りなよ、あんたの妄想が頭にどんどん流れ込んで来て不快! 俺はとっくに切ってるのにさぁ」
ソウビは耳を塞いで私に怒鳴った。あ、あれ……駄々洩れでしたか? 恥ずかしいなあ。とはいえ私も、リューガさんにとても興味があるのです。
「リューガ先輩」
「うむ、なんじゃ?」
「その立派なお尻尾を私めがモフらせて頂いても⁉」
「嫌じゃ。おぬし、なんか気色が悪い……」
そんなぁ……――。こら、勝ち誇ったような笑みを向けるのはやめなさい、ソウビくん。
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