第6話お馴染みのウナギ イール

 城と城下町の設備を色々整えた事が、早速僕の能力である事が国民に発表されると、王城前広場やはじっこにあるはずの僕の店(開店前)は感謝を唱える人で埋め尽くされた。 

 

 水が物凄く美味しくなった。 

 

 水汲みが楽になった。 

 

 薪が必要なくなった。 

 

 風呂に毎日でも入れる。 

 

 などなど現代の様に水や火を簡単に使える様になった感謝の波はものすごく、食の使徒という事もあってダンジョン産の高位魔物の献上などが大量によせられた。 

 

 スラム街だったボロボロの家達や資金がなくて修繕できない集団の施設、孤児院なども建物自体から立派になり剥き出しだった下水路も地下に再設置したので、荒くれものからの感謝も凄く、多くの人たちに喜んでもらえた。 

 

 さて、そんなこんなで今度はレシピを頼りにイール、うなぎの調理をしていた。 

 

 地球と同じように捌いて七輪で焼いたら、ぶよぶよの生臭い焼き魚になり、不思議だなぁと考えていた。 

 

 次はレシピ通り浄化か浄化水につけるやり方を試してみたが、しっかり浄化した後のウナギは旨味もなにもない、もそもそとした身になってしまった。 

 

 ぶよぶよのジェルみたいなのに比べれば大分マシだけど、これも地球の物に比べて美味いとは言えない。 

 

 レシピ通りなのに何故?と思いつつ、直に浄化する時にかかる時間の調整をしてみると、見事に味に違いが見れた。 

 

 浄化をかけすぎると旨味なんかも何もかも浄化してしまう様で、また浄化の効力も個人個人違うので一人一人でタイミングが全然変わってくる。 

 

 一人一人が一回のヒールでの回復量が違う様に、浄化の効果もまた一人一人違ってくる。 

 

 ただかければいいって訳でもなければ、長い間丁寧にかけてもダメ、この塩梅が難しい。 

 

 だから屋台や店であんなにも味にばらつきがあるのかと納得した。 

 

 この丁度いいタイミングを計るのが難しい。 

 

 本当に手探りでタイミングを見極めなきゃいけない事や、気分や体調などでも変わってくるので、浄化の魔法が熟練の域に達していても安定供給が難しい。 

 

 その上イール、ウナギ自体も個体によって差があるので、そこも調節しないといけない。 

 

 八百万って店の店主さんは日本人って話だが、よくこんなもんタイミング見極めて美味いウナギ出せるなと思ってしまった。 

 

 何度も何度も調整して、なんとなくわかってきたこと、綺麗に浄化が決まると模様や色に変化がみられることだ。 

 

 その変化を目安に、浄化を調整していくとウナギの模様が明け方の夜空に星を散らしたかのような見た目に変化した! 

 

 観賞魚としても滅茶苦茶綺麗なんじゃないかと思わせるウナギ、同じ要領で他のウナギも変化させていく。 

 

 そして調理、手探りの浄化に比べればなんのその、デカかろうが関係なく綺麗に捌き、焼いていく。 

 

 料理人スキルのおかげか焼きや捌きなんかは、プロの様な手さばきで自分でも驚く。 

 

 タレなんかはまだまだ自分で作るタレよりも、地球産のうなぎタレの方が全然美味い。 

 

 異世界産うな重の完成だが、ウナギが地球の物に比べ倍ぐらい分厚い、もう一回分くらい切って薄い開きにした方が食べやすく見た目もいいかとも考えた。 

 

 骨なんかもスキルで除去されている、骨格標本の様に綺麗に骨がとれた。 

 

 焼きの時にスキルが反応したので、二つ用意している。 

 

 一つは焼きが浅くたたき?レアカツ状態のうな丼としっかりよく焼きの通常のうな丼の二個! 

 

 通常のうな丼から、まずウナギだけを・・・・・・・・・もぐもぐもぐ・・・・・・・・・・・・。 

 

 やばい・・・・・・滅茶苦茶美味い、美味いなんてもんじゃねぇ・・・・・・こんなもん通常のウナギが泥臭いお遊戯に感じる程、ウナギのレベルが違う。 

 

 ゆっくり!ゆっくり味わって噛むんだ!!喉が催促してごくごくと喉に消えて行ってしまう、その飲み込む瞬間まで喘ぎ声がでそうな程美味い! 

 

 飯を食って鳥肌がたったなんて初めての事だった。 

 

 味覚に合わせて、嗅覚や触覚まで新生されたかのような、生まれ変わった新しい感覚が体全体に広がる。 

 

 こわいこわいこわいこわいこわい!美味すぎて怖すぎる。 

 

 危ない薬とかってこんな感じの快感なのか?とちょっと不安になる。 

 

 だが肉体は違った!そんなものと一緒にするな!!と言わんばかりに力が漲ってくる!挌闘漫画やゲームのキャラにでもなったかのような体の動き!それでいて2.3時間ならトップギアで体を動かし続けても問題なさそうな程、体力が溢れる!。 

 

 全力戦闘が何時間でも出来る!剣や刀をもって長時間の全力戦闘がこれなら出来る!その核心に溢れる。 

 

 これはやばい!効果もやばいが味もやばい!ふわふわの身にパリサクの皮、じゅわっと溢れ出る脂がタレと相性抜群で米が異常に美味い! 

 

 売れるか?否売れなきゃ嘘だろ!?王城の料理も城下町の料理も特に感動する事もなければ、毎日これはちょっとと言いたくなるレベルの料理が当たり前の世界で、これが売れなきゃ嘘ってもんだろ? 

 

 次に半レアのうな丼をパクリ、うん、やっぱりたたきって感じだ。 

 

 これもまたばつぎゅんに美味い!!!笑顔!笑顔になる!!こんな美味いもん、笑わずにはいられない。 

 

 にっこり(狂気の微笑み) 

 

 ブサイクか!僕の!嫌!俺の笑顔はブサイクか!!醜いか!子供が見たら狂気を感じて泣き出しそうな笑顔を振りまきながらも一心に食い続ける。 

 

 歯ごたえがとか!食感がとか!身の味がとか!しゃらくさい事はわからない!でも美味い事は確かなんだ!喉奥から五木ひろしが出て来る程うめぇ!! 

 

 俺のだ!全部俺のだ!俺のもんだ!誰にもやるもんか!俺が全部食うんだ! 

 

 海苔!添えられたワサビでまた美味い!雄たけびだ!雄たけびを上げたくなる!はぁはぁ!うぉん!うぉおおん!!ライトニング!ぷらじゅまああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!! 

 

 ふぅふぅ、つい大人げなく叫んでしまった。 

 

 なんつう美味さのうな丼だ!なるほど八百万の店主がレシピ公開して広めたくなるのもわかる!同じ日本人としてこれは広めないと損だ! 

 

 逆に独占したくなるもんじゃないか?僕もそう思った。 

 

 これだけうまかったら一人占めして、なんなら食べたいって人と交渉できる事だろう。 

 

 でも遠い国の八百万店主、同じ日本人である彼はそんな事しなかった。 

 

 むしろ独占したいと考えてしまった自分が恥ずかしくなった。 

 

 食の使徒なんて言われて呼ばれて来たのに、なんて俗物な考えをしてしまったのだろうか。 

 

 美味いものは分かち合う、わけあうのがいい事なんじゃないか。 

 

 後で商業ギルドにレシピの追加記入で浄化の項目も追加してもらおう。 

 

 きっとこれでもっと流行るはずだ。

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