【38・王都城門にて】
ファイの正体を知っていたリカルドが騒いでいたが、とりあえずはとリューリがアイテムボックスから取り出した水を飲み、深呼吸を数回繰り返すと落ち着いてきた。
「まったく、煩いねぇ。ファイがどこの誰であろうが、私らには関係無いじゃないか」
「いやいや、関係ありますからっ!」
「そんな事言ったって、勝手にいつの間にか私らの所に来たんだ。連れて行けば済む事だろう?」
「アリアー……。下手したら僕らがファイを脅して何か企んでるとか勘違いされない?」
「はぁ?あぁー……確かに」
リューリの話に同意するようにリカルドが頷き、私はその可能性に気付くとどうしたものかとファイを見た。
「いやー……ちょっと、散歩までに出てきただけなんだけどなぁ。……ハハッ」
呑気に笑うファイに何故か頭が痛くなって気がした。
「………アリア殿。申し訳ないが、リューリと王太子殿下を乗せて城門まで来てくれませんか?」
だからといって、いつまでも此処に居ても仕方ない。どうしようかと悩んでいると、リカルドは私を見上げて、そう言ってきた。
なんでも、リューリは従魔契約の主として、ファイは王太子殿下なので歩かせる訳には行かないが、こうすれば、友好的に見えるだろうからと。
「………本気かい?アンタはどうする?」
「俺は側を歩きますよ」
私はリューリとファイを見て渋った。リューリは全然いい。主だし、それこそ今まで乗せてきたから。でも、ファイはいくら王太子殿下とはいえ、初めて会ったのだ。背に乗せるのは、フェアリアルキャットとはいえ死角になる。それはリカルドも分かっているはずだ。
「私が王太子という肩書きがあるとはいえそこまでしてもらうのは申し訳ないよ。今はただの冒険者だ」
「そうはいきません。貴方は大事な次代の王です。なぜ、そのような格好をしているのかはこの際問いません。王宮の方々が心配してます」
「どう?似合うかな?それに、何もないんだからいいじゃないか」
「……ファイってわざとなのかな?」
「私に振るんじゃないよ」
リカルドとファイの話はファイがのらりくらりと躱すので平行線。そんな二人に私達は呆れてコソコソと話をしていた。
「はぁー……もうさ、皆で歩けばよくない?……アリアもそれならいいでしょ?」
リューリの言葉に今度はリカルドが渋るが、私とファイ、リューリの多数決で決まった。
♢♢♢♢
そして、やって来た王都城門前。
やっぱり、リカルドの言う通りファイが居なくなりかなり騒ぎになっているようで、中々此方の様子に気付く様子はない。
しかし、一人の兵士が気付くと瞬く間にかなりの騒ぎになった。
「またこれかい……」
思わずため息が出てしまうのは仕方ないと思う。それに、本当はちょっと傷付くんだからね?
リカルドから話は聞いていただろうし、流石は王都の兵士というべきか騒ぎにはなったものの、すぐに静まり私を警戒する姿勢は立派である。
「ライヘン騎士爵殿。そちらが、件のですか?」
「はい。国王陛下の勅命を受け馳せ参じました」
「伺っておりますが、本当に大丈夫なんでしょうね?」
「はい。この通り息子のリューリ共々、此処に居るのが何よりの証拠です」
何やら偉そうでガタイのいい厳つい騎士さんが言ってくるが、失礼だな。まるで、私が危険な生物みたいじゃないか。
「私も此処にいる!アリアとリューリは確実に従魔契約をしていて、信頼関係もきちんと出来ている!」
「お、王太子殿下っ!?」
「私自身の目で見てきた!これでもまだ問題があるのか!」
………問題児めぇ。
「はぁー……アンタは勝手に飛び出してきただけじゃないか。まったく、ちょいとそこの人間。私はリューリやリカルドが言うから仕方なくここまで来たんだ。そちらが何もして来なければ、私からは何もしないよ」
ファイの言葉に頭が痛くなってきたが、ため息をして騎士に向き直ると私はそう言った。だから、一々喋っただの!なんだの騒ぐなっての!
「あ、アリアもそう言っているし、僕も気をつけます!」
リューリそういうと王太子殿下のファイを筆頭にやっと入る事が出来たのだった。
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