【36・新たなデアイ】
森で一夜を明かし再び南西の方角へ走ると、魔素の流れが変わって来た事を感じ取った。おそらく森を抜けるまでもう少しだろう。
二人に森の終わりが近いと伝えると、どこか嬉しそうな雰囲気をして先を見据えた。
「……ただ、森を抜けたとして何処まで来たかを確認しないとな」
「僕の予想だとかなり王都に近いと思う」
「なんで、そう思うんだ?」
「だって、アリアだし」
…………なによそれ。リカルドも頷いて納得してるし。
「ちょいと、私がなんだって?」
「あ!いや、別に悪い意味じゃないよっ?」
リューリがバツが悪そうに慌てて否定してくる。
「そ、それより、アリア殿!森の終わりですっ」
話を変えるようにリカルドまで慌てて言ってくる。
………なんだよぉ、二人してぇ……。
不貞腐れそうになるが、リカルドの言うように森が終わった。
「っ………ま、眩しいっ。はぁー……やっと森を抜けたぁー!」
安心したようにリューリがバンザイをして喜んだ。
そして、リカルドは地図を取り出し下に見える大きな街を交互にみて確認すると、乾いた笑い声をあげた。
「ははっ……。近い所じゃない。あれが王都だ」
「ぇえっ?!あ、あれが………王都」
「おや、あれが王都かい。見た事あったねぇ」
「え?知らないって言ってなかった?」
「ふん。人間の街とか興味なかったし、名前なんて知らないからあれが王都だったなんて思わなかったんだよ。『個人的には私という意識が生まれたのが魔素の森だったから行きたかったんだけどねぇ。まさか、こんな形でそれが叶うなんて思わなかった。よし、米、調味料ー!』」
「そういうことね『目的違う!』」
リューリと念話を合わせて会話をしていると、リカルドが私から降りて街の門前に行こうとしたので、着いて行こうとしたら止められた。
「アリア殿、このまま行こうとしたら騒がれると思うので、私が先行して説明してくるので、待っていてください。リューリ、くれぐれも頼んだぞ?」
……リカルド、そんなに念押ししなくてもいいじゃないか。そして、しっかりと頷かないで、リューリ。
リカルドは私達にそう言い残し夕方に差し掛かった太陽を背にして、門前へと向かった。
リューリは私の背で仰向けに倒れて大きく息を吸って空を眺めながら話かけてきた。
ちょっと、人の背中で何、のんびりしてるのさ、これじゃ、身動き取れないっ。
「ねぇ、アリアー。国王様ってどんな人かなぁ」
「知るわけないだろ?まぁ、アンタら家族と使用人を脅して、私を利用なんてしようとしたらただじゃおかないけどねぇ」
「………こわっ、せっかくなんだから穏便にしようよ」
「そうそう。ここは穏便に話をしようじゃないか」
…………あれ?なんか、知らない人の声がしてきた。
「のわぁっ?!………イテテッ」
リューリは驚きのあまり私から落ちて背中を打ったのか涙目になってた。
「おや?大丈夫?いやー……父上からフェアリアルキャットが来ると聞いて見てみたくてね。驚かせてごめんね?」
「い、いえっ、大丈夫ですっ!……アリアっ!気付かなかったの?」
「敵意はなかったし、何かあっても平気だから放っておいた」
苦笑いをした彼はリューリに手を出して立たせた。
見た目は、長い腰まである金髪を緩く束ねていて、着ている物は冒険者風だが、所作が違う。なんていうかあれだ、なろう小説で出てくる王太子とかそんな感じの人が身分を隠して城下を歩き回るってやつ。歳は見た感じリューリより少し上かな?キラキラ王子っぽい。
「………アンタ、誰だい?」
面倒な気がするが、話を進めようと少年に声をかけた。
「本当だ。フェアリアルキャットが会話出来るなんて!あ!ご、ごめん!僕は………ファイ!ファイって言うんだ!」
あ、今、偽名かなんか考えたでしょ。私は益々怪しいと思い、念話でリューリに注意を促した。
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