【33・王都に向かって続】

「……着いた」


「ふぁ、行くならまだ先に進めるけど?」



森を抜けると一泊予定の街の近くに出た。ぽかーんと街を見て呟くようにリカルドが言っていたのを、私はそれを聞きながら欠伸をした。



「いや、それを決めるのはリューリに任せましょう。しかし、こんなに早くここまで来れるとは驚きです」


「ふん。街の名前とかは知らないが、方角さえ教えてくれれば、だいたいは行けるさね」



あの後はリューリも体調を崩さず、今は私とリカルドの後ろで地図を見ながら何かを考えていた。



「リューリ。まだ、時間は早いがどうする?この街に泊まるか?」



リカルドがリューリに声を掛けると、私達の元に来てリューリは考えながら地図を広げて私にも見せた。



「こんなに早く着くとは思わなかったから次の街まで行こうと思ってる。……アリア、王都は此処から南西に行ってこれが王都・アルペルシャ。僕たちはライヘン領にある主街・カルーアから出て、今居るのはセバーリア。どう分かる?」


「ふむ……。中々遠いねぇ。まぁ、南西だね?次の街で休んで明日からなるべく私の進み方で行くよ? いいね?」



地図を見ながらリューリの説明を聞くと、素直に街道沿いを行くよりできるだけ南西に直進した方がいいと判断して了承を得る為、リューリとリカルドを見る。



「あー……うん。野宿はなるべくならないようにしてくれればいいよ」


「分かりました。スピードは程々にした方がいいですが、アリア殿に任せます」



二人から了承を得れば、さっさと移動しようと二人を乗せて再び私は走り出した。

そして、しばらく街道沿いを走ったり草原を突っ切り、やって来たのは隣街のリケア。先程のセバーリアに比べ、発展しているようで街を守るように壁が出来ている。



「そ、そこの魔物止まれー!」


「そんな事言われなくても止まるさね」


「アリア……。大人しくしててよ?」



私が思わず門番にツッコミを入れるとリューリは呆れて、リカルドと共に私から降りると冒険者カードを取り出し門番に見せた。



「……すみません。あの子は僕の従魔です」


「じゅ、従魔だと?君のような子供が本当かね」


「……横から失礼します。私はリカルド・ライヘン。これは息子のリューリ・ライヘンです。実は今、王都に行く途中でして、従魔契約しているのは、本当です。従魔はフェアリアルキャットですよ」


「ら、ライヘン騎士爵様?!も、申し訳ございません!」


「フェアリアルキャットだとっ……!」



ザワザワと騒ぎ出して私を見てくるが、私はひたすら我慢した。唸り声が出ちゃうのは勘弁して?



「あ、あの!ちゃんと迷惑をかけないよう気をつけますので、入れてもらえませんか!」



リューリの言葉に慌ててリューリとリカルドの冒険者カードを確認すると、頭を下げ謝られながら街に入るのを認められた。



「な、なんとか入れた……」


「ふん。これで、私が普通に話したら腰でも抜かすかねぇ」


「やめて!僕が怒られるんだから!」


「……しかし、改めてアリア殿の凄さを感じますね。私達は慣れてしまいましたが、これが、普通の反応ですからね?」



えー? 毎回、こんな反応されるんじゃ、鬱陶しいなぁ……。三者三様の反応をしつつ従魔も大丈夫という宿に行くと、店の前で私を見てきたリューリにため息をして察すると、小さくなった。



「いらっしゃい!……おや、リカルドさん! お久しぶりです!」


「え? 父さん、知り合い?」


「あぁ、店の名前を教えて貰った時は内心驚いた。王都に行く時や冒険者時代にも何かと世話になってね。……まだ、現役で商いをやられてたんですね」


「いやぁ……。息子夫婦にほとんど任せてますよ。私はこうして出迎えたり掃除したりして邪魔をしてるだけです」



おじいちゃん店主は朗らかにリカルドに挨拶をすると、リューリと私を見て笑顔の皺が余計増えて人の良さが分かる笑みを浮かべた。



「リカルドさんの息子さんと従魔かな? 良いですねぇ。私も早く孫をみたいものです。……おっと、いけない。本当は従魔は外に繋がないといけませんが、サイズ的にギリギリ大丈夫でしょう。他のお客様に迷惑をかけないようにね?」


「はい! 大丈夫だよね? アリア」


「……ふん『しつこいねぇ。私をなんだと思ってるのさ』」


「わがまま食いしん坊……」


「ん? 何か言ったかい? ……リカルドさん、部屋は2人部屋でいいですかね?」


「はは……大丈夫です」



心配し過ぎ。そこら辺の知能の低い魔物じゃないんだから弁えてるっての。失礼な。

私はリューリの過剰な心配に不機嫌になり、念話で話すとボソッとリューリが普通に言い返してきたが、おじいちゃん店主は首を傾げて、リカルドを見ては、返事の変わりに顔をプイッて逸らした。



「ふぁ〜……。私は疲れたから寝るよ。アンタらは食事でもしてきな」



部屋に着くと、窓辺に椅子を見つけちょうどいい感じな座り心地だったので、そこに丸まるとそのまま眠ってしまった。

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