【21・カイモノ続】sideリューリ

 ーーー綺麗。


 ただ一言そう表わすのが、その時の僕には精一杯だった。そして、それを作り出した頼もしいアリアの後ろ姿。


 太陽の光に反射してキラキラ光りながら球体に流れる水の檻。でも、その綺麗さに反してその水流は速く触れたら怪我をすること間違い無しだ。


 そもそも、出会いからして衝撃的だったのに従魔契約。更には、似た境遇の僕達。


 元人間には見えないほど、自由で強くてでも、何処か優しいのが僕から見たアリアの感想。



「ねぇ、アリア。聞いてもいい?」



 引ったくり犯が、魔法が解除されると直ぐに兵士が捕らえるのを眺めながら、僕の隣で暇そうに欠伸をするアリアに僕は問いかけた。



「……なんだい?」


「僕もさっきアリアがやった魔法って出来るようになる?」


「……さぁねぇ。まぁ、アンタは器用そうだし、そのうち出来るようになるんじゃないかい?」


「…………難しそうだけど」


「ふん、そんなの練習次第だよ」



 んー……出来る自信ないんだけど。あんなにあっさりやってるけど、絶対、難しい。


 ブラックサーペント狩りっていうのだけで、こっちは気が重いのに、備えあれば憂いなしって昔からいうので、僕は準備を色々するつもりだった。なのに、アリアによってすっごく減らされ心もとなく感じる。



「アリアー……。本当に、必要ない?持って行った方がいいんじゃない?」



 一連の騒動が終わると、これ以上、ここに居て巻き込まれたくないし、僕が領主の息子だとバレるのは時間の問題だと思っていたが、アリアは僕の言葉を何処吹く風というように無視してスタスタとその場から離れるように歩き出していて、その後を慌てて兵士が呼び止める声を悪いと思いつつ追った。



「いい加減にしないか、さっさと終わらせて帰るよ」


「あ! 待ってって! 」



 そして、マジックアイテムを売っている店に入ると、僕はマジックポーションを買いに棚へと向かい、アリアは店に入る為、小さくなり珍しさからキラキラし何処か興奮しながら商品を見回し時折、マジマジと見ていた。


 僕も初めて来た時はアリアと似た反応してて母さんに笑われたっけ。


 そんなアリアの様子を懐かしく思いながら、僕がマジックポーションを手にしていると、隣から顔を覗かせて猫の手で奥を指した。



「これと、これ……こんなもんかな?」


「同じ値段ならその奥の2本にしな」


「え? こっちでもよくない?」


「はぁー……『物は一緒でも効果の出方が奥にある方がいいんだよ。 前世の世界みたいに品質が安定してるならいいけど、ここら辺では薬師とかの手作りが多いからねぇ。 だから、同じ金を出すならよりいいものにするんだよ。 鑑定すれば分かるよ。』」


「……『僕の鑑定でも奥の2本が品質がいいって程度しかわかんない』」


「で?どうするんだい?」


「…………奥の2本で」



 念話でそんな会話をすると、手にした二本を追加して会計をすませる。 何だかんだとアリアは鑑定スキルも使いこなしてて凄いなぁ。


 なんか、悔しいから僕も頑張ろ。



「買い物はこれで終わりだね」


「なら、明日はいよいよブラックサーペント狩りだねぇ。 ククッ……どのくらい楽しめるかねぇ」


「うわぁー……。 アリアが怖い事言ってる……」


「なに、言ってるんだい。 アンタは魔力コントロールをしっかり身に付けてもらうからね」


「げっ……。り、了解です」




 店を出てアリアは元に戻り、僕はその背に乗ると夕方に近付いている空を背に自宅に帰っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る