俺の隆盛、こんなに可愛い訳がない

進藤 進

第1話 見たで、ゴワスね?

利通が。

明治政府の重要な草案を書いていたら。


肩越しに。

太い眉が。


睨んでいました。


「な、何を・・・?」

慌てて隠しました。


「ふっ・・・」

切なく歪む隆盛の唇。


「おいどんに・・・」

大きな目から涙が。


「隠し事があるで・・ゴワスか?」

利通の胸がキュンと、なって。


「待って、これは・・・」

言いかけた言葉が詰まります。


「これは、何で、ゴワスか・・・?」

詰め寄る隆盛の瞳が大きくて。


利通は。


「明治天皇の・・・」

呟いた言葉は禁断で。


まして。

今上天皇の。


御名前は。

誰も知らない筈。


「トシちゃん・・・」

愛する人の呟きに。


利通は。

大きな髭に隠れた。


唇を。

歪ませるしか。


そう。

出来なかったのです。


※※※※※※※※※※※※※※※


続く。

・・・の、かぁ?

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