『毒虫』のカフカ

南瓜の王冠

第1話 家

むかしむかしそれなりに昔にダンジョンが出現し魔物が現れ亜人に変異する人達が出現する様になってそれから、非現実ファンタジー現実あたりまえになった世界で「可能かのう浮奏ふーか」はある日ある時、目が覚めたら『毒虫ワーム』に成っていた。


これが創作なら何故とか如何してとか矛盾の無い理由付けを第三者キミたちは求めるだろうが残念ながらこの世界は現実で彼が半ば人を辞めたのも特にコレと言った理由は無かった…偶々である。


運悪く。何と無く。不思議な事に。何か人間を辞めたのだ。


まあ、『毒虫ワーム』になったと言っても特別見た目が変わった訳では無い。

精々固めが爬虫類の様な見た目に変わって一寸ちょっと犬歯が生えただけだ。


強いて言うなら体が軽く成った気がするし、少しだけ前よりも朝日が眩しいかもしれない。そんな所だ。


もっとも味覚を初めとして未だ未だ謎は多いが…正直彼の内心は「そんな事よりも彼は眠たかったし二度寝行く行くは三度目をすらも…」と言った所だったのだ。



さて、では彼が…可能かのう浮奏ふーかが二度寝に入ろうとしている間に丁度良いので何故可能かのう浮奏ふーかが己は人間を辞めたと判ったかの話をしよう。


如何でも良いと思うかもしれないがまあ聞いて欲しい。

可能かのう浮奏ふーかが人間を辞めたと判った理由はある意味で単純でシンプルな理由だ。


なんか直感的に判ったのだ。それだけだと思春期の理由も根拠もない妄想の様に聞こえるが、目が覚めた彼には狂おしいほどの確信があったのだ。

—己は『毒虫ワーム』なのだと—

—もはや人間ではないのだと—

—それはそれとして未だ昼だしクソ眠いな—

と言う確信が。


何れくらいの確信かと言うと教室にいるテンション高い奴は確実に陽キャだと思うレベルの確信だ。まず間違いない。




自分で振っておいて何だが、そんな事は置いといて彼は起きた。

目が覚めて5分くらいボーッとしながら時計を見て3時か何て休日とはいえルーズすぎる様な思考をしながらベットのマットレスに手を置きながら立ち上がろうとして…


「はっ?」


絶句した。動転した。思考が呈して。修理代を脳裏に馳せて…

漸く彼はヒトデナシの腕力が制御不足でベットを抉ったのだと理解した。


「あーえーー…どうしよう」


本人視点では是と言って変わった事も無かったので『毒虫ワーム』に成った事については今の時代そんな事もあるかと思っていた彼だが、被害が出たのなら話は別。


「えっ」「えっ」「えっ」「どうすんのこれ」


困惑して。混乱して。最終的に出した結論は…


「ダンジョンに…行くか。…はぁ」


ダンジョンで稼ぐ事だった。彼は通っている学校の性質上曲がりなりにも一様サポーターとしてだが一応探索者としての資格を持っているのだ。


さて行こうと思いながらも体が動かない、金縛りとかそう言うのでは無くて「さてやるか」となる時にふとある「面倒くせえなぁ」とか「だるい」とかそう言う情動によるモノだ。


ため息は止まらなし、何で態々休日に何て気持ちは収まらない。

彼は別に休日に仕事を入れてまで特別な力が欲しかった訳ではないのだ。


何なら口ではチートだの何だの言いながらも創作の主人公に実際になるのは御免被る。物語は側から見ているから面白いし楽しいのだ何て思うタイプの凡人だった。


何だかんだ言っても彼はそこそこの比率でおやつやジュースを買って動画を見たり漫画を読んだり小説を閲覧して人生の貴重な時間を無駄にする事こそがの幸せだと思っていたし今も思っているし変えたいとも思わなかった。


本当は休日に本屋以外に動く事も割とかなり不本意だった。家をまだ出てないのに既に彼は帰りたい気持ちで一杯だった。





慎重に…慎重にゆっくりと出来るだけ力を込めない様にして立ち上がる。ベットはもう買い替えるとしても力を込めすぎて立ち上がる事も出来ないのは流石に困るからだ。


何で自室でこんなに緊張しなければならないのか自分が何をしたの言うのか何もしなかっただけじゃないかとこの世の不条理に思いを馳せながらも漸く歩き出す。


さて、とスマホを取ろうとし一瞬握りつぶしてしまうのでは?と言う不安感に襲われるが自分のスマホは探索者用の頑丈なモデルである事を思い出し意図的に力を込めなければ大丈夫かと思い直した。


次は…と考え彼は凍りついた。何をスマホを持っただけで安堵しているのか最難関の試練が未だ残っているではないかと…


そう、服である。パジャマ(下だけ)と下着で出るのは最終手段だ。近所にゴミ捨てに行ったりコンビニに軽く行くのとは訳が違う。いくら高校生男子とはいえ不審者扱いされるのは免れない。そして残念ながらそれはヒトデナシとしての暴力ちからじゃ如何しようもないのだ。


一枚、二枚、三枚とどんどんと破いていきやっとこさ十枚目にして着替えを完了する。さっき迄の失敗と経験を生かしパーカーを着てフードを被って荷物を持ち、部屋から出ようとしドアノブを回して…回して…回して?或いは将又何て音を立てながらドアノブは360°捻られてお亡くなりになった。


「…あ〜あー…修理費が嵩む…」


家を出る時のドアノブは何とか粉砕せずに済んだ。

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