第11話自宅に待っていたのは…

学校の放課後の教室


教室は夕暮れ時の光で照らされていて、机が光り輝く様に見える。




「そうか、結局浮気されていたか。」

青木が眼鏡を指で押して言った。


彼の眼鏡のレンズが反射していて、その佇まいに青木が、賢く見えた。


「はぁ〜落ち込むけど、それ以上に恐ろしいよ、彼女が。」

僕は机に突っ伏して自分の心が重く沈んでいくのを感じた。



「お前から聞いた話だと、彼女はメンヘラだな。」

青木が心配と同情を含んだ声で言った。


「メンヘラ? そうかもな。」


「で、俺の妹と付き合う気になったか? 

メンヘラには、ヤンデレで押し返すしかない。

俺の妹は、滝川さんにも負けないと思う。お前を守ってやれるはず。」


「それは何かのギャグ?」


「ってかならないよ。もう普通の子が良いんだ、僕は。」


もう変な子と言ったら失礼だけど、もうそういう子は、懲り懲りだ。



「ちょっと気になったけど、円香ちゃんヤンデレ認定したけど、じゃあなんで、僕に会いに来ないの?」


そんなに僕のことが好きなのに、会いに来ないのは、不自然だと思った。



「それは、俺に聞かずに妹に会って聞くんだな。」

青木は名言を避けた。


僕はそうか、それもそうだなと思った。




…いやいや、気になるだろ。僕はお預けみたいなことは好きじゃない。

さっさとネタバレしろよと青木に迫ろう。


「嫌だ、今知りたい。教えて。」

強請れば、聞けば道は開ける。

僕は、もったいぶらずに教えてと再度頼んだ。


あゆみの極端な性格について、結局聞かなかったことがあって、次はすぐ聞くことにした。


「分かった、答えよう。至ってシンプルな理由だ。それは、自分磨きに忙しいんだ。お前に好かれるために…な。」

青木が教えてくれた。



「そうか、それで円香ちゃんの努力を側から見てるから、僕に付き合えって進めてくるわけだ?」


僕は鋭く確信をついた様に言った。


「違う。兄が妹を親友に勧める理由なんて、相場が決まってる。俺が好きな子がお前のことを好きだからだ。それ以外妹を勧める理由なんてないな。」

青木が笑って答えた。



「青木が好意を持ってる子が僕のこと好きってことか。なるほど。なんだそれは。ちなみにそれって和田さんの事?」



「違う! これ以上詮索するな。今は答えたくない。」 

青木は怒って言う。



「そんなに怒るなよ。自分から、話振ったくせに。」

僕は愚痴っぽく言った。



「悪い。ついな。」



「しかし、厄介だな彼女。普通に寝取られたらまだ良かったが、浮気相手とは遊びみたいな話だから、それだとお前の身が心配だよ。ストーカーになったら、どんまいだな。」

心配そうな表情で青木が言った。


「ん? 待てよ。そうなったら、メンヘラからそしてヤンデレへ〜か?」



「そして伝説へみたいな言い方すな。」


「ってことはお前ヤンデレ製造機じゃないか? 俺の妹もお前と関わらなかったら、普通の子でいられたんじゃ? お前責任取れよ?」

妹と付き合えと暗に言ってる様だ。


あゆみは、ヤンデレじゃなくてただの自己中だよと、心で反論した。



「それじゃ青木、あゆみと付き合わないか?」

僕は、円香ちゃんを勧めた青木に、軽い仕返しで言った。




「それは、俺じゃなくて佐野に頼めば良いだろ? 佐野なら喜んで付き合うと思うぞ。」

青木が最もなことを言った。


その佐野、今は部活に行ったか、早いな。



「まぁね。浮気相手と付き合えばいいんだけど、中島さんの彼氏だからな。さすがに今回のことで別れるかな?」


僕はもう、あゆみの顔も見たくなかった。

なので、あの大川って人と仲良く幸せになってくれれば…そう願った。



「なに? 今なんて言った? レイナちゃんに彼氏だと? ありえない。何かの間違いだろ? お前のことが好きなのに…何か弱みでもそいつに握られてたりしないか?」



そんなのありえないって表情で青木が言った。


「それは、分からない。聞いてみないと。」



「ないな。偽装彼氏ってやつに違いない。くっそ、上手くやりやがったな。そいつは。だから浮気なんてしたんだ。そうに決まってる。出なければレイナちゃんがそんな。」

青木が必死になって言う。



「なるほど青木の推理も一理あるかもね。」


「百里あるだろ。」

断言する様に青木が言った。



なんでそう断言出来るんだ?


中島さんと幼馴染だからか。1人で僕は納得した。



ふぅ、さてそろそろ帰るか。

「じゃあまたな。」

青木に挨拶して僕は帰宅した。

  


西条の自宅の玄関


玄関で父が迎えてくれた。

その表情は穏やかだった。


おう、お帰り。お前にお客さん来てるぞ。


お客さん? 誰だろ?


「そうなんだ。分かった。」

父さんに返事をして、リビングに行った。


心の中には、不安が渦巻いていた。


父さんもすぐ後ろをついて来た。それに少し安堵した。重かった足取りが軽くなった。


もしかして、中島さんかな? 今日話せなかったから。大川さんの事で話を聞きに来たんだろう。


その予想は、ハズレていた。


むしろそうあって欲しいと思っていただけだ。本当は…本当の予想は…


僕はその子の顔を見て絶句した。


「あなた、おかりなさい。」


その声は、甘えてくる様な言い方だった。

 

そしてそこにいたのは、満面の笑みを浮かべるあゆみだった。

その笑顔は、いつもと違って不気味に見えた。それは狂気じみたもので、僕の心を凍らせた。

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