第9話復讐のNTR

大川律の視点


「だって。ほんと、やばい子でしょ? 情緒不安定。」

桜が言った。



「みたいだね。でもまさか、僕が隣で聞いてるとは思わないだろうね。」

僕は、笑って言った。



「笑わせないで。大川先輩の口説き話術にかかってるからよろしくお願いします。」

桜が頭を下げて言う。


「優しくしすぎると、怒るタイプみたいだね…かかってきた。」僕は立ち上がって、桜に離れてから、電話に出た。


ここは、桜の自宅。彼女から電話が来る予想をしていた。何故予想できたか? もちろん、桜井と僕は、グルだから。



「あのー、大川先輩ですか? 桜から聞いたんですけど、桜井先輩と友達だとか。」


「そうだけど、えっと滝川さんだね? 何かようかな?」

僕は、何もしらない素振りで言う。



ところで、何故僕が桜に協力しているか? もちろん、滝川あゆみを抱くためだ。




つまり、僕は中島レイナとは、付き合っていない。じゃあ綾瀬桜と付き合ってるかって? 



もちろん違う。僕の個人的な復讐の為さ。僕の父が、滝川あゆみの父にリストラされたからさ。社長の娘を傷物にしてやる。


上手く口説き落とし、結婚まで行けば、会社すら乗っ取られる。行かなくても、どちらでも構わないがね。


ふふ、桜は、西条の母がやったことに対する怒りでの復讐、僕は、あゆみの父にボロ雑巾の様に利用され捨てられた復讐。


考えてみれば、当の本人は、何も悪いことをしていない。

完全な八つ当たりさ。


桜は知らないが、僕はそれを自覚している。


「実は、桜井先輩に言い寄られて困ってるんですよね。友達の大川先輩から言ってやってくれませんか?」

彼女が言った。



「なるほど。それは大変そうだ。電話じゃ、あれなんで、会って詳しく聞かせてくれないかな?」

電話一本で済むんだけどね、本当はさ。彼女を誘き寄せるためにそう言った。



「えー会ってですか? 電話じゃ駄目なんですか?」

滝川あゆみが当然の主張をした。



駄目だね。それは出来ない相談だ。



「電話では、難しいかな。それと、ちょっと僕も相談に乗ってもらいたいことあって、レイナのことでちょっと。」

恋敵の名前を出せば乗っかってくるのは、僕には、分かりきっていた。





「中島さんの事? 分かった。じゃあ仕方ないけど、会います。」

彼女が同意した。


チョロいな。僕は笑みをこぼした。




カフェでの話し合い


滝川あゆみに挨拶を済まして僕は言った。

「さて、早速本題から入ろうか。」


こう言う女は、せっかちだからな。早く用件を済ましてやって、話を聞くのが言い。



「ええ、電話でも話しましたけど、桜井先輩から言い寄られて困ってるんです。先輩がなんとか出来ませんか? 私大事な彼氏がいるので。」

 


ふっ‥僕は心の底から笑った。大事な彼氏がいる癖に、僕といるのは何故だい? 彼女を見下した。


「そうなんだ、分かった。なんとかしよう。」僕はコーヒーを飲みながら言った。



「ありがとうございます。彼氏にも合コン相手なので、相談しにくくて。それで大川先輩の相談って?」

彼女が感謝しながら言った。



「実は、僕の彼女のレイナが言いづらいんだけど、僕のことを拒絶してね。それが、ちょうど君の彼氏と、会った日からなんだ。」

大嘘だが、滝川あゆみが知る術はない。



「…なんですって? 中島さんが? それって私の彼氏のことが好きってことですよね?」

彼女が驚いて聞いた。


「そうかもしれない。君はどう? 最近彼氏に拒絶されたりはないかな?」


ふっ拒絶されたんだろ? タイミングが良かったな。運も味方してくれた。



「…はい…されて…ます。」

彼女が動揺して言う。



「それは…2人が…うっっ。情けない。悔しいよ。彼女を取られるなんて。」

僕は泣き真似をして言った。




「…大川先輩のせいじゃないです。浮気した中島のせいです。」

彼女が寄り添って言う。


ふっ、そんな証拠ないのに…な。



「ありがとう。滝川さんは優しいね。はぁ…彼女と別れるしかないのかな?」


必ず引き留めるはず。僕が別れたら、中島と西条が付き合うと、彼女は想像するからだ。



「それは駄目。そんなことしたら、西条に取られちゃうよ? それは悔しくないの?」

彼女が引き留めた。


「悔しいさ、じゃあどうすればいい? 教えてくれないか、滝川さん。」


「それは…そうだ、2人の浮気の証拠、それを掴んで、2人に突きつけてやるのはどう?」

彼女が、まともな答えをした。


ふふ…その提案は、僕の想定内。



「無駄だよ。その証拠を突きつけた所で、開き直って、じゃあ別れましょう。これで終わりさ。僕達は、高校生だよ? 彼等は何も失わない。」


「でも…他に方法が…ないですよね?」


「ひとつだけある。滝川さん、僕と関係を持ってくれないか?」



「はっ? 嫌ですけど、いきなり何を言うんですか?」

彼女が拒絶した。ちっくしょう。僕は、この反応に…作戦の成功を確信した。



「だろうね。けど、どうするの? 他に方法ないよ。それならひとつだけだ。関係を結ぶか、彼に捨てられるか。」


「捨てられるのは嫌です。」彼女は顔面蒼白になって言う。



ここで彼女を追い込んで抱く、そんな方法を取っても、彼女の心は掴めない。


ここは一歩引く。少しずつだが、確実にやる。



「ごめん、追い詰める様なこと言って。関係持つと言っても、身体の関係じゃなくて、僕らの浮気現場を見せるんだ。楽しそうにキスをするところをね。」



「そんなところ見せたら、別れるって言われない?」


「でも試す価値はある。まずは、僕の彼女に見せる。それが上手く行けば、彼氏にも見せてやるんだ。」


「もし君の彼氏が、怒って別れる様な反応をしたら、僕が脅迫したって言えば言い。実際そうなんだからね。」



「だけどこれは、練習しないといけないよね。僕は、演劇部だからする必要ないけど、滝川さんは、練習しないと。」


僕の作戦は、まずはキスを交わす。そこから、彼女との関係を発展させる。拒否されたとしても、問題はない。


もう彼女は、僕の蜘蛛の巣に掛かっているのだから。


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