第4話

「~~~♪」


 キッチンに大助のご機嫌な声が響く。その手つきは中々に洗練されたものだ。


(明日も朝早くから日雇いの仕事がある。たとえファンタジー的な出来事が起きようとも明日は無慈悲にやってくるのだ。せつない世の中だぜ)


 大助が冷蔵庫から冷凍ラーメンを取り出す。


「やっぱ時間が無いときはこいつに限るな」


 袋を開封し、電子レンジ対応の白い皿に袋を乗せる。そしてそれを電子レンジにぶち込む大助。同時に電子ケトルの電源もONに設定しておく。


 無音の室内に電子レンジ特有のジージー音だけが反響する。


「…冷凍ラーメンってよ、マジで電子レンジだけで作れるから凄えよな」


 大助のようなバイトソルジャーにとって冷凍食品は必須アイテムだ。中でも彼は冷凍ラーメン類をとくに気に入っていた。カップラーメンとは違い冷凍ラーメンは液体タイプのスープを採用している。風味は若干落ちるが味は飲食店並みをキープしているのだ。


(安くて美味い。ついに人類の化学は神の領域へ到達したってわけだ!…なんてな)


「そういえばこのタンポポどうするかな?」


 スマホから出てきたタンポポを手に取る。どこからどう見ても普通のタンポポだ。


「え~となんだったか。…確かタンポポは全部の部位を食べれるんだったよな」


 葉、本体、根っこ。大助の発言通りタンポポは全ての部位を食用として使用する事ができる。特に根っこの部分を乾燥させて作るタンポポコーヒーは世界的に有名だ。


「雑菌とか怖いからな。とりあえず100℃以上で沸騰消毒しておこう」


 鍋に水を入れて火を立てる。沸騰させたお湯の中にタンポポをぶち込みしばらく茹でる。


「…よし、こんなもんか」


 完成した冷凍醤油ラーメンにタンポポをそのまま乗せる。


(見栄えは最悪だ。だが大事なのは見た目じゃない、味だ)


 ズルズルと麺を啜りつつ、タンポポをムシャムシャと食べる大助。


「……うん。まあ普通に美味いな」


(タンポポラーメン。意外にもいけるじゃないか。こりゃその辺に生えてるタンポポを採取するのもありだな)


 どうにかして食費を浮かせる方法を考えつつ、大助はタンポポラーメンを完食した。そして皿を台所に放置せず直ぐに洗い作業に移る。


「食器を使ったらすぐ洗う。これは1人暮らしの鉄則だ」


 固まった食器の汚れを落とすのは意外と大変な作業だ。大助はまとめ翌日洗いというこの世の地獄を経験してから、食器をできるだけすぐに洗うように心掛けていた。


「はい終了!」


 水切りに皿をブチ込み、洗濯機を起動。それと同時に大助は風呂に入った。


「ふいいい……」


 入浴終了。洗濯物を干して、歯も磨く。そして大助の就寝の準備が整った。


(おっし。これで後はもう寝るだけだ)

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