第2話

 安物のソファーに横になり、大助が謎のアプリを起動する。


(…ドキドキ)


 何度目の「初めて」という感覚だろうか。この時、このタイミングだけは大助の心を強く揺さぶる。場面が黒い画面から小さな箱庭のような世界へと変化した。


「お?フルクラフト系のゲームか。中々本格的だな」


 殺風景な映像だけが大助のスマホに流れる。それから1分程経過。映像の光景に変化はない。


(なるほど。そういう事か)


 あらゆる基本無料ゲームを嗜んできた大助の直観が答えを導き出す。画面左上に表示されたヘルプのメッセージ。これが怪しいのだ。ヘルプメッセージをタップすると、突然音声が再生され始めた。


「あ~あ~テステス!…どう?変じゃない?」


「美しい声ですって?当然じゃない!私を誰だと思って…てぇ!?もう収録始まってるの!?」


「あ…あははは。えっと、どうも初めまして?……ねえちょっと!これカットとかできないの!?」


(まあ可愛い声だとは思うが…こいつ絶対アホだな)


 その後も声の主とアシスタントらしき人物の会話が続く。そしてようやく本題を話し始めた。


「初めまして。私があなたのサポートを担当する謎の神々しいガイドちゃんよ。それとこのメッセージは録音だから。もしさっきの件で低評価とかしたらブチ殺すからよろしくね♡」


「えっ!?」


 不穏なメッセージの不意打ちに大助が驚く。


「さてと、長々と話すのは趣味じゃないのよ。とっとと要件を話すわ。アプリの事は自分で色々試してみなさいな。その内色々な事が出来るようになるんじゃない?よく知らないけど」


「え~と、最後に何を言うんだっけ?…ああそうそう!喜びなさい人間!初回特典でこの3つの薬草の中から1つをプレゼントしてやるわ!喜びに咽び泣くといいわよ~」


 アプリのメインメニュー画面にメール型の四角いアイコンが追加された。


「まあ貰えるもんは貰っておくか」


 メール画面を開く。そこには3つの植物が表示されていた。


・タンポポ


・ドクダミ


・ミツバ


「…どれもよ~く聞いた事があるような植物なんだが」


 薬草という表現はあながち間違いではない。実際にドクダミなどは簡易的な漢方薬としても重宝されている。当然そんな事は大助もよくよく理解はしているが。


「あえてこの中から選ぶもの…まあ無難に考えればこれ一択だよな」


 大助は数秒程でタンポポを選択した。


<タンポポを1つ獲得しました。畑に植えますか?>


「おお?」


 大助に選択肢が提示される。当然、大助は植えるを選択した。画面が切り替わり、地面に何かの芽が出ている状態が確認できるアングルに変化した。そして画面に再びヘルプの文字が表示される。


「ポチッとな」


「どうやらタンポポを選択したようね。良いセンスだと褒めておこうかしら。それじゃちょっとだけアドバイスしてあげる。植えたタンポポをタップしてみなさい。面白い事が起きるわよ」

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