後輩の部屋探し~アニメーターはどうせ家に帰れない~
もう何年も前のことです。
仲良くはない後輩のために超ド級の事故物件を探した話です。
私が、あまりに「事故物件ッ! 事故物件ッ!」と言うので不動産屋にキレられた時のことを思い出しました。
卒業した専門スクール(学校ではない)の恩師から連絡が入り、私が住んでいる地域で『とにかく家賃が安い部屋』を探してほしいというお話をされました。
恩師は元アニメーターの方だからか、最初は稼ぐのは難しいだろうから初期費用はとにかく抑えたい、という話を聞きました。
仕事は忙しいだろうし家に帰るとしてもほとんど寝に帰るだけになるだろう……。だからこそ長く仕事をするために初期費用はなるべく安く!
仕事は好き、実力もある、けれどもお金の問題で辞めなければいけない。そんな人は多く、そういう卒業生から相談も受けていたようです。
金がないしすることもない暇人であった私は、恩師にお礼をするチャンスかもしれない! と休みの日に地域の不動産屋をはしごしました。
「とにかく安い物件」「安ければ畳に人の形のシミがついていても構わない」
当時、松原タ〇シさんや大〇てるさんが話題になっていて『事故物件』という単語が定着しはじめていた頃かもしれません。
もしその事故物件が見つかったとして、――住むのは自分じゃない!
自分が住んでる地域に超・事故物件がないかの興味本位が八割でした。
とはいえ、どの不動産屋も事故物件は「ない」ご希望の激安物件も「ない」。
口コミでは「親身になってくれる」「親切!」となっている不動産屋でのことです。
あまりにも二言目には「事故物件!」というものですから、紹介してくれていた不動産屋さんがキレました。
「あのねぇ、事故物件ばっかり言うけど……」
さすがに怒られるか……。
「事故物件じゃなくても幽霊は出るのよ!」
「まじっすか!?」
「前に、まくら元に幽霊が出るから心理的瑕疵物件なのを隠しているんじゃないかって言う人いたんだけど、本当に何にもないの」
喜ぶ私に、不動産屋はさとすようにいいました。
「幽霊は出る時は出る!」
心強いお話を聞き、さらには希望の激安物件も見つかり、後輩はその不動産屋で契約しました。
隣の部屋のトイレの音までクリアに聞こえる物件だったそうです…!
後輩が入社した会社の人もその物件に何人か住んでいたそうです。
後輩とは仲良くないし、恩師はスクール側の新理事長と方向性が合わない系の何かでもう関西かどこかに行ってしまいました。なつかしい思い出です。
恩師の最後の言葉です。
「夏伐さんには悪いけど、この学校はどうせ数年したらなくなるよ」
就職率100%のヒミツが、就職したいけど出来なかった卒業生を同じグループの派遣会社にぶちこむタイプのスクールならばそれも仕方ありません。淘汰です。
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