つばめのゆりかご

龍花

第1話 出会い

「あの子、可愛すぎでしょ……」


入学式、校庭に桜の花が芽吹く中、はっきり言って超クールな美少女であるつばめのつぶやきがこぼれた。


(ドキドキする……これって恋…………?)

(でも私、女だよ……!)

「あのー……すいません」

(話しかけられたー!)

(やばいー! 可愛すぎるー!)

「あ、うん、何?」

「その、クラスって何でしたか……?」

「え、A組だけど……」

「私もA組なんですけど教室がどこか分からなくて、一緒に教室行きませんか?」

(だめだ可愛すぎて直視出来ない……)

「良いけど……」


こうしてつばめの高校生活は始まりを告げた。恋が芽吹くと共に……


そして、もうひとつのつぶやきは教室の騒音にかき消され誰にも気づかれることは無かった。


「かっこいい……」


と。



教室に着くと2人とも離れ自分の席を探しに向かう。

つばめは離れることに寂しさを感じつつも同じクラスだった喜びを噛み締める。


「あっ」


教室に響く2人の声……


「席隣ですね、よろしくお願いします」

「うん、よろしく……」

(席隣だー! 可愛い顔が毎日拝めるー!)

「あのー、同級生だしなんか違和感あるから敬語やめない?」

「あっ、はい……じゃなくて……うん!」

(タメ口頂きましたありがとうございます……)


感の良い人はお気づきかもしれないがつばめは結構ガチなオタクである。絶対に本人は認めないけど。


「あ、あのさ……そういえば自己紹介まだだよね?」

「私は籠里つばめ……あなたは…………?」

「確かに、まだだったね!」

「私は東雲ゆり! よろしくつばめちゃん!」

(あああああ、可愛すぎる、名前まで可愛いじゃん、てか名前呼ばれたよー! 幸せだよー!)

「よろしく…………ゆり……」

(なんなら名前呼んじゃたよー! キャーーー!)


名前を呼びあっただけで異常に喜ぶつばめだった。


てぇてぇなぁ、おい、このまま付き合え!と言う意見は置いといて……

いや、置いとけ無さそうだね。

ん? あぁ私かい? 気にしないで、ただの作者だよ。

ほら耳をすましてよー? 聞こえる?

何がって?


再びこぼれたゆりのつぶやき……だよ。


「やっぱり、かっこいいなぁ、つばめちゃん」


もちろん今回はつばめに届いた。距離近いしね~。


「え?」

「わ、わたし?」

「そう、つばめちゃん」

(えええええ! か、か、か、かっこいい?)

「そ、そう? ありが、と?」

(ドキドキするー……)

「その…………」

「どうしたの? つばめちゃん?」

「ゆり……は、すごく可愛いと思うよ……」

(何言ってるんだ私ー! 絶対キモイって思われてる………………)

「ありがとう! つばめちゃん! 大好き!」

(ズッキューーーーーーン、パタ)


リアルに吐血しそうなつばめであった。

あと普通に気絶したつばめであった。



(ここどこだ……?)


視界がぼやける、頭もはっきりしない。

ただただ静かな部屋に時計の音だけが響く。


(天井……そっか、倒れたんだっけ……じゃあ保健室か……ん?)


何かが手に触れる感覚……


「うわぁ! ゆ、ゆ、ゆ、ゆり!?」


ゆりの手がつばめの手を優しく包み込む。


(手ちっちゃくて可愛い……それに温かい……)

「そっ、ゆりだよ! 驚かせちゃった?」

「可愛い……じゃん…………」

(ズッキューーーーーーン!)


頬を赤らめたゆりの可愛さも相まってまたもやつばめにクリーンヒット、ゆりよ……またつばめが倒れちゃうよ……


「か、か、か、か、か……可愛いって……」

「つばめちゃん……可愛いもん……」


………………


静まり返る部屋……顔を赤く染める2人……


「そのさ……ゆり……私ゆりのことが……」


ガラガラガラッ


「つばめー! 大丈夫かー?」

「はぁ……なんだよ、あんたか」

「あんたってなんだよ! 心配してわざわざ来てやったのによ! まあ良いや、駅前の新しく出来たクレープ屋行くけど来るかー?」

「ごめんね、もうちょい動け無さそうだから今度お願いしよかな」

「ん、分かった、じゃあな」


ガラガラガラッ


またしても静まり返る部屋……


「そのさ……今の人……誰?」


静寂を破ったのはゆりだった。


「もしかして……か、彼氏……とか……?」

「ううん、東雲風翔、お兄ちゃ……兄だよ?」

「ふーん? お兄ちゃん?」

「兄! 兄だって!」

「ふーん? 彼氏じゃなくて……良かった……」

(良かった………………? え?)


「あの、ゆり! 私……」


ガラガラガラッ


「つばめー、1個言い忘れてたわー」

「出てけー!」


なんやかんや賑やかな声が校内に響く。


「はぁ……やっと帰った……」

「あの……つばめちゃん……」

「ん? どうしたの? 顔赤いよ?」

「私さ、つばめちゃんのことが好き……付き合って……くれない……?」

(す、す、す、好き!?)

「わ、わ、わ、私のことが……好き……?」

(キャーーーーーー)


もちろんまた倒れたつばめであった。

1日何回倒れたら気が済むんだYO!


「つばめちゃん! 大丈夫?」

「あ、うん何回も倒れてごめん」


本当に倒れすぎである。

どーにかならんかね、倒れすぎてもストーリーが進ま…………おぉっと危ない、メタい話はやめとこっと。

あっごめんね、ほらほらつばめがなんか言ってるよー。


「そのさ……私……」

「ううん、ごめん……私が変なこと言ったから……きっと迷惑よね……」

「違う!」

「私はゆりを初めて見た時から好きだった! 一目惚れしたの! だから付き合って欲しい!」

「うん! ありがとう、つばめちゃん! 大好きー!」


こうしてゆりに抱きつかれたつばめはまた倒れましたとさ。

いやぁ、てぇてぇですなぁ、んー

ゆりと籠里……このカップルに『ゆりかご』と言う名を与えるとするか。by作者。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る