最恐の祟りを追う!!「ヨシエさんの写真」調査記録③ (月刊ファクト 2013.08)

最恐の祟りを追う!!「ヨシエさんの写真」調査記録③


月刊ファクト(如水出版 2013.08)


ここに1枚の写真がある。日常の1コマを切り取っただけのありふれた1枚に見えるが、「ヨシエさんの写真」と呼ばれるこの写真に関して、実は恐ろしい噂が存在するのだ。「ヨシエさんの写真」には強力な怨霊が憑りついており、見ただけで呪われるという噂は、オカルト好き御用達の怪談専門ネット掲示板「八百万物語」でも語られている。

しかし、通信技術が発達した現代、誰もがインターネットに気軽に接続できるようになった。1枚の画像が膨大な数の人の目に触れることも珍しくない昨今、たとえ強い怨念を持っていたとして、見ただけの人をしらみつぶしに呪うことなんてできるのだろうか疑問が残る。

しかし、見たら呪われるという噂は、筆者が確認しただけでも10年近く前から存在している。長らく語られるということは、この恐ろしい噂にそれなりの裏付けがあるのかもしれない。今号ではこの真相を調べるため、この写真で本当に呪われたという方々の体験談を調査した。


驚いたことに、体験談は数多く寄せられた。それではここで今回届いた体験談の一部を紹介しよう。


「学生時代、同級生が高熱を出してしばらく学校を休んだのですが、その人は『ヨシエさんの写真』を見た直後から体調が悪くなったと言っていました」(神奈川県 女性)


「姉の友人の体験談なのですが、彼女は霊感があるのですが、『ヨシエさんの写真』を見てから、写真の女の人が『私じゃない』と叫んで追いかけて来る夢を毎晩見るようになったそうです」(岐阜県 女性)


「10年ほど前、『ヨシエさんの写真』を見てから、急に地元でヨシエさんを見かけるようになりました。他人の空似にしてはありえないほど写真のままで、見かける頻度も偶然とは思えないほど多かったので、つけられていたのだと思います。1年ほどして地元を離れてからは見かけなくなりましたが、今でも街で見た人を見かけると身の毛がよだつ気分になります」(東京都 男性)


これ以外にも信憑性の高い話は他にも編集部に寄せられた。これだけインターネット上で話題に上がっている写真なのだから、当然数多くの人が目にしたことがあるはずだ。したがって、本当に写真を見ただけで呪われるとするならば、実際に呪われた人も膨大な数になるはずである。

しかし、体験談が寄せられたというだけで、本当に写真がもとで呪われたと考えるのは浅はかである。決して体験談自体を否定しているわけではない。ただ、中には呪いの噂が強烈に印象に残ったことで、「ヨシエさんの写真」を見た直後に偶然降りかかった不幸や災難を呪いだと捉えてしまった事例だってあるだろう。

だが中には非常に興味深いものもあった。


「高校時代、駅のホームで『ヨシエさんの写真』を見た友人がその直後、電車が近づいていたホームに飛び降りて死んでしまいました。自殺するほどの悩みを抱えていたわけでもなく、今でも写真のせいだとしか思えません」(愛知県 男性)


この話で注目いただきたいのは『見た直後』というフレーズである。写真を見た直後の自殺、それは偶然と考えるにしてはあまりにも時間が近すぎる。我々はこの体験の詳細を知るため、投稿者の男性に連絡を取った。


「Aは自殺するような人ではありませんでした。」


体験談に記した友人(Aさん)についてのインタビューを快く引き受けてくださった現在愛知県の大学に通っている投稿者の男性は、死ぬ直前のAさんをそう説明した。

当時、茨城県内の高校に通っていた男性は、その日も高校に最寄りの駅でAさんと別の友人と3人で帰りの電車を待っていたそうだ。Aさんはかねてより志望していた都内の私大へ推薦入学が決定し、将来に希望を抱いていたそうだ。

ホームで電車が来るまでの暇つぶしに動画投稿サイトを開いたAさんは、おすすめに上がっていた怪談紹介動画を何気なく再生しはじめた。

「その動画で、呪いの心霊写真として『ヨシエさんの写真』が取り上げられたんです。その時にAが不意に『懐かしい』と呟きました。」

城山佳江の名を知っていたものの、いわゆる『ヨシエさん』の姿よりも歳をとった写真の印象が強かった男性は、なぜ懐かしさを感じたのかAさんに尋ねたそうだ。

「コイツ、葛丘連続殺人事件の犯人じゃん」

それがAさんの最期の言葉だったという。そのまま、ホームの端までまっすぐ進んでいくと、男性の目の前でAさんは列車が警笛とともに近づくのも厭わずに線路に飛び込んだ。あまりにも突然のことで、男性にAさんを引き留める余裕はなかった。何より普段通りの意思を感じられる足取りからは、Aさんが自殺するだろうという発想にまで至ることはできなかったそうだ。


偶然近い時期に起こった出来事に因果関係を錯覚してしまうのが、多くの呪いの起源なのかもしれない。しかし、Aさんが写真を目にしたのと自殺したのはあまりにも近すぎるのではないだろうか。さらに男性の話によれば、Aさんの自殺は呪い以外に原因が考えられないくらい不可解なものであった。たしかに写真には呪いをかける力があったのだ。


これはもしかすると、深入りするなという編集部への警鐘かもしれない。しかし真実を追い求める小誌編集部は「ヨシエさんの写真」についての真実が明かされるまで追及の手を緩めるつもりはない。


北見祐介


註 スクラップ帳では、記事からヨシエさんの写真が切り取られていた。

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