第22話 入学試験
ココロと両親の身支度が整うまで奴隷商人に簡単な奴隷の話を教えてもらった。
話しているとココロは最低限の身だしなみを整えてもらい現れたのだが、その容姿は痩せ細ってはいるが誰が見ても綺麗な容姿をしていた。
ちなみに奴隷商の話では現在エルフの奴隷がいるらしく、何でも自分に相応しいご主人様じゃないとお仕えしないとか…。それって本当に奴隷なのって思ってしまうが契約を交わしていることから事実みたいだ。
異世界小説では御馴染みではあるが、リアムにとっては他の可哀想な奴隷を一人でも雇ってあげた方が為になるのではと思っている。
ココロと両親の支度が整い一緒に宿に帰ったリアムはセイラに報告した。
セイラは事情を聞いた瞬間ココロを思いっ切り抱きしめた。
「もう大丈夫よ。皆さん大変な目に遭いましたね。村に帰ったらゆっくりして下さいね」
ココロも両親も突然のことでオロオロしている。
「ココロと両親は母さんに任せるよ」
「ええ、任せておいて」
こうしてココロと両親のことはセイラに任せリアムは入学試験に向けて準備をする。
そして一週間が経った入学試験当日。
希望の星学院の入学試験は王都とダンジョン都市の二か所で行われる。
貴族のお披露目会の後、準備をして王都にて試験を行えるように全学院が王都にて試験会場があるのだ。
王都の希望の星学院の試験会場に到着し、受付をうけると何故かすぐに試験会場に通された。
「リアムンド殿、こちらの試験会場にて模擬戦を行いますのでこちらの木剣をお使い下さい」
「あ、あの~、普通は全員に説明してから順番に行われるのではないのですか?」
「通常はそうですが、王家より実力は確かであるから形式場行っておけとの言付けを承っております。あちらにいるB級冒険者に一撃でも当てれば合格となりますので宜しくお願いします」
木剣を渡されたのだが、普通はB級冒険者に子供が一撃当てるのがどんなに至難の業か…。リアムは心の中で愚痴りながらも口角を上げ楽しそうにしている。
試験官の元に行きお辞儀をする。
「ほぉ、貴族なのに礼儀正しいな。だからと言って手加減はしてやれんぞ」
「大丈夫です。ちなみに一撃でも当てれば合格で宜しかったですか?」
「ああ。B級冒険者の俺に当てれるとでも思っているのか?」
「さぁ、どうでしょうね」
「面白れぇ、じゃあ開始と行こうか」
そして、審判の始めと言う掛け声とともに試合が始まった。
木剣を左に持ち、冒険者へと歩みよる。
冒険者は様子見のようで、リアムは予想通りと確信し徐々にスピートを上げる。
木剣の間合いのすこし手前で身体強化を使い、一気にギアを上げ左上段から切り落としを行う。
冒険者は子供のスピードとは思えない速さに驚くが難なく木剣で鍔迫り合いを行おうとした。
しかし、木剣と木剣が触れた瞬間に冒険者の木剣はスパンと切れ、リアムの木剣が冒険者に迫っていく。
これには流石の冒険者も焦り、咄嗟に躱そうとするが余りの速さと出来事にギリギリ躱すことができず冒険者の胴体に木剣の剣先が触れ一撃をもらってしまった。
その光景を見た審判は「それまで」と発し試合は終了した。
「おい、何故俺の木剣が切れた」
「切り札を簡単に教える程バカではないので」
「ちっ、もういい、合格だ」
冒険者は納得の行かない様子をしているが、一撃をもらったら合格と言った以上合格をだすしかなかった。
無事に合格したリアムは一礼をし、試験会場を後にするのであった。
リアムの合格をタイガは喜びながらも浮かない表情をしている。
「どうかした?」
「いえ、なんでもありません」
「俺はタイガのことを家族のように思っている。だから何かあれば遠慮なく言ってほしいな」
タイガはその言葉を嬉しく思いながら、やっと口にした。
「リアムンド様はいつも情報収集を大切にされますので、王都でもいろいろな情報を探っていたのですが…」
「それで何かあった?」
「私の故郷にて知っている者が塞ぎこんでいると言う情報を得まして」
タイガに詳しく説明させると、タイガと同じハーフの獣人が魔力暴走にて人を殺したことによって塞ぎこんでいるとか。魔力暴走の原因に死者が関与していたことで刑罰などはないが村での扱いも酷いことになっているそうだ。
「じゃあ、王都で用が済んだらタイガの故郷経由で帰ろうか?」
タイガはモヤが晴れたように笑顔となった。
「有り難うございます」
「でも、タイガの故郷に行くことは大丈夫なの」
「なんの未練もありませんので大丈夫です」
タイガは、自信を奴隷にした村に帰ることを心配してくれるリアムンド様に感謝しつつ、執事に対しても気遣えるこの主にずっと仕えたいと再度思うのであった。
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