第20話 アイリスの方向転換

貴族のお披露目会が終わった数日後。


リアムは王都のお洒落なカフェで待ち合わせをしている。


数分後、従者を連れて一人の女性がリアムの席に訪れた。


「待たせたかしら?」


「さっき来たところだよ」


「そう。ところで一人?従者はいないの?」


「あそこの違う席にいるよ」


アイリスは従者に同じ席に座り交流を深めるように指示をだした。


「会話が会話だけにすこし離れた場所を用意してくれたのかしら?」


「まあ、そうだね。これからの内容は聞かれたら困るしね。ところで一つ先に聞いてもいいかい?」


「いいわよ、何?」


「なんか、神と出会った場所で軽く挨拶した時と性格がガラリと変わった風に見えるけどこちらの世界で苦労でもしたの?」


リアムの問いかけに聞いてよと言わんばかりに一方的な会話が始まった。


簡単に言えば、貴族の子供達はマウントをとるための自慢話ばかりで、傲慢な子供達は俺の婚約者になれと迫ってくるのだとか…。そんな貴族の子供達に魅力を一切感じないアイリスは一心不乱に勉学と魔法の向上にひたすら取り組んでいるうちに鬼才の才女と言われる様になっていたそうだ。


「そ、そうなんだ。まあ、精神年齢が違うからしょうがないよね」


リアムはあははと苦笑いをするのが精一杯だった。


「でも来年からは同じ学院だから楽しみね」


「えっ?アイリスも希望の星学院に行くの?」


「えっ?」


「………。」


「なんで、そうなるのよ。普通優秀なスキルを持つ貴族は王国学院に行くはずでしょ」


アイリスは鬼の形相で言い寄ってきた。


「ま、まあ、普通はね。貴族の子供ばかりの所なんて面白くなさそうだったし…、ダンジョンでレベルを上げたかったから…。」


リアムの声は何故か小さくなって言った。


「じゃあ、一週間後にある各学院の受験は希望の星学院を受けるのね?」


「は、はい」


「書類を作り直さないといけないじゃない。お父様にも伝えないといけないし…。」


アイリスはそう言いながらリアムをキッと睨んでいる。


「い、いや、アイリスさんは別に王国学院のまま入学すれば問題ない気が…。」


「私に傲慢な貴族の子供の相手を一人でしろと…」


「い、いえ。是非、一緒の学院に行きたいなぁ~って実は思っていまして」


「そうよね。今から忙しくなるから今日は帰るわ」


そう伝えるとアイリスは会計をリアムの分まで済ませて帰っていった。


「まだスキルの話もしてないんだけど…。はぁ~、鬼才の意味が分かった気がするよ」


こうして予定よりも早く終わり暇を持て余したリアムはついでとばかりに奴隷商の元へ行くことにした。


セイラから紹介状と場所の地図を貰っているので、それを頼りに歩いていく。


奴隷商に向かう途中にタイガが話かけてくる。

「リアムンド様、優秀な執事はどうか買われないで下さい」


「俺の執事はタイガだけだよ。本当に助かってるから安心して」


その言葉を聞いてタイガは喜んでいる。


「それにサクラやクルミもタイガを気に入ってるし今後も頼むね」


「もちろんです」


「そうよ、リアムなんて私を雑に扱うのに比べてタイガは丁寧でいいわ。まあ、もう少しフランクでいいのにと思うところもあるわ」


「キュイキュイ」

クルミをそうだそうだと言ってるみたいだ。


「そ、そんな滅相もない。精霊様と月黄泉様に失礼があってはなりません」


リアムはタイガの言葉に疑問が生まれた。


「月黄泉様って何?」


「以前、私の村の御伽話の話に月の紋様が似てるとお伝えしたと思いますが、そのお伽話の月黄泉様をどうしても重なってしまいまして…」


「そ、そう。確か人族の奴隷として扱われていた獣人族を救うお話しだったよね?」


「そうです。月の神様の御供に月黄泉様が一緒にいるのです」


リアムは深く考え込んでいると奴隷商についていた。


奴隷商は王都の繁華街からすこし外れた場所にあった。


「ここであってるのかな?」


「はい」


裏路地なのにやたら存在感のある扉を開けた。


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