第6話 5歳~8歳
もちろん10歳になるまでにも多くの出来事があった。
リアムの村では子供が少なくお年寄りが多い村である。しかし、子供がまったくいない訳ではない。数人の子供がいるのだがどうしてもリアムとでは考える思考が合わず一人で過ごしていることが多い。
そして、何もないこの村にもリアムのお気に入りの場所が一つだけある。
家の窓から見え、徒歩20分ほどにある大きな桜の木の下である。
日本とは大きさが違うが、昔を思い出せるこの場所で本を読むのが大好きなのである。
毎日毎日本を読み、魔法の練習をするのが日課である。
一人でずっといるといつしか「バイバイ、また来るね」など桜の木に向かって話すことが多くなる。もちろん歌を口ずさむこともしばしば。
そんな日々を過ごしていると小動物や鳥達が近づいてくることも。
リアムは持ってきたお昼ご飯を上げているといつのまにか動物達に懐かれていた。
そして、一年が過ぎた6歳の誕生日に思いもよらぬ事が起きた。
それは一年に一度の誕生日のスキルを楽しみにしていたリアムが6歳になった瞬間にスキルを確認したら、なんと…。
……。
………。
そのスキルは《桜の木の加護》であった。
・桜の木の加護
慕われている動物などの気持ちが何となくわかる。基礎能力値上昇。運上昇。
ランクの低いスキルと書いてあったのであまり期待していなかったのだが、開けて見ると期待以上のスキルでビックリである。
5歳の時に授かったクリーンも実用性に優れたものだった。
・クリーン
対象の物に使うと綺麗・清潔になる。
このスキル、人や動物にも効果がありお風呂に入らなくても清潔でいられるのだ。
もちろんリアムはお風呂が好きなので毎日入っているがゆくゆくダンジョンなどのことを考えても便利なスキルである。
話は逸れたが、桜の木の加護の一番のメリットはやはり運上昇である。奇想天外のスキルは運によって左右されるとも書いていたので、今一番欲しかったとも言える。
しかし、一年経った現在となることに悩まされている。それは、どんなに頑張っても魔法を発動出来ないのだ。
アスランの本には魔力操作の習得には基本的に時間がかかるから気長にやるといいと書かれていたが、流石に1年経っても覚えられないと焦りだす。
さらに1年が経った。
今だに魔力操作は出来ないが、この年に授かったスキルが凄かった。
何が凄いかって、一度きりと言う条件がついた召喚スキルだったからだ。
・召喚
一度だけ自分の魔力を糧に親和性の高い動物・魔物が召喚される。その後召喚陣に入ることは出来るが魔物は元いた世界に戻ることは出来ない。
リアムは授かった召喚スキルを使うか迷っていた。
いくら親和性の高い魔物や動物とは言え、この地に呼んだら一生共にしないといけないからだ。
俺はいいが、呼び出した魔物にとってそれが最善の結果とは限らない。
「う~ん、どうしたもんか。一度きりのスキルなんて聞いたことないから使いたいんだが…。それに元いた世界ってことはこの星の生き物とも限らないし迷うな」
そして、迷っていると月日は経ち8歳の誕生日になっていた。
未だに魔力操作は出来ず、最近では何か可笑しいのではと疑問をもつようになっていた。何となく細い糸のような魔力を感じる時もあるのだ、これが本当に魔力かもわからない。疑心暗鬼になっているとどうしても俺は魔力がないのでは?と疑うようになった結果、召喚スキルを使うことを決意した。
「魔力が無ければ召喚出来ないはず。やり方はスキルが教えてくれている…。」
ついにリアムは召喚の祝詞を唱えた。
「天に誘う戯言よ、迷いし運命に導かれ、世界の国境を越え参らん。天地天命‼」
桜の木の下には輝く召喚陣が浮かび上がり、眩い光と共に一匹の魔物?が姿を現した。
「キュイ?」
リアムは魔物の容姿を見てビックリしながらも話だした。
「この世界に君を呼んだ本人なんだが、呼んでも大丈夫だったかな?」
魔物は何度も首を振り頷いている。
「キュイキュイ」
桜の木の加護のおかげか、それとも召喚主だからか、何となく感情や伝えてる意味がわかる。
何故だかわからないが凄く感謝されている。そしてリアムの胸に抱き着いて離れようとしないのだ。
外見はリスに似ているのだが、大きさはウサギと同じくらいである。
お腹周りは白色で顔や背中にかけて茶色の中に黒色が少し混ざっている。
綺麗な毛並みで触るとモフモフっとして毛は柔らかく量も多い。
そして、特徴的だったのは額のところに月のような模様が描かれた宝石がついていた。色はエメラルドグリーンで、宝石のように綺麗に輝いていた。
そして、名前をつけて欲しそうだったのでムーンと迷ったが「クルミ」と名前をつけた。
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