第5話 決意のルージュ

 12月に入ると街は赤と緑で彩られ、人も街もソワソワしてくる。

ふと、眼力の強い女優さんの中吊りポスターが目に入った。

『あなたは、どうなりたい?』

冬季限定カラーのリップのキャッチコピーだった。

『あなたは どうなりたい?』…か。


 翌日から、寄り道などしない私がデパートに通い、そして、数日後、私はいつもの駅の3つ前の駅に降り立った。懐かしい母校が見える。スマホを握りしめ、深呼吸を一つ。『よし…。』何度も読み返し、おかしなところはない。


<まだ、学校かな?今、高校の近くにいるんだけど、カフェでも行かない?お姉さんがおごってあげるよ♪>

LIME送信…と。

 どれくらい待つ?5分?10分?嫌だったら、うまく断る理由ある?送信すると、途端に不安と後悔しかない。1分がとてつもなく長く感じられた。

数分後に、侑からの着信。あわてて、電話をとる。

「悠さん、近くにいるの?俺、もうすぐ出られるから、どこ行けばいい?」

「あ…、学校裏の本屋の向かいにあるね…カ、カフェに行こうかと思ってて…。」

突然の電話で声が上ずる…。

「わかるわかる!じゃぁそこで待ってて!すぐ行くから!」

電話を切って大きく息をつく。変な汗をぬぐい、カフェに向かう。手には、お守りの『新作のリップ』を握りしめて。


『あなたは、どうなりたい?』

『私は、日常を変えたい!』

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