第65話 下見と記念ガチャの予告配信
記念ガチャを開催するにあたって、田中達は各地の土系ダンジョンを下見して回った。
土系ダンジョン――――出没するモンスターとして、代表的なのはゴーレムなどだ。
そして――――実は土系ダンジョン内部にいるモンスターの数はそれ程多くはない。もちろん土系ダンジョンにおいても、モンスターは脅威には違いないのだが…………
――――その代わりとして、内部が迷宮のように入り組んでいるという厄介な点がある。下のフロアへと潜ることはもちろん、帰ることさえもままならない。
冒険者達は、探索途中に迷ってしまい、食事が尽きたりと苦しめられ、ただ単純に強いだけでは攻略出来ないのである。
――と言っても、本格的に帰れない程入り組んでくるのは中層から。
上層であれば、1日あればなんとか帰って来られる程度のものだ。
だが他ダンジョン同様、中層からは違う。一度入ってしまえば運が悪ければ帰還は困難、と言われる程に難易度が上昇する。
壁も特殊な土を使われているのか、他のダンジョンよりも丈夫で壊しづらく、一部の例外を除いて強行突破は不可能だ。
そんな地雷臭のする土系ダンジョン。それでも潜る冒険者達もいるにはいる。
理由としては、発見数は少ないが、ミスリルゴーレムといった地上では採れない特別な鉱石を倒すことで、落とすモンスターが出現するためだ。
ミスリル等の鉱石は、地上の鉱石よりも強度において優れているため、地上に持ち替えられたそれら貴重な鉱石は、鍛治系のジョブを持つ者達によって凄まじい切れ味の武器として生まれ変わるのである。
ちなみに、灰華も以前土系ダンジョンに潜ったことがある。その時は、上層で早くも苦戦し、迷いながらもなんとか中層へと進んだが、そこで完全に迷子になった。
最終的には、開き直って、大量の魔剣を使い捨てて、障害となる壁も何もかもを破壊し尽くして、階層全てを平らにし、無理やり帰還した。
このことから、強行突破もまったくの不可能という訳ではなく、強力な魔法やスキルであれば、砕くことが可能ではある。しかし、それは魔剣があるからこそ出来る裏技。
前述した通り、壁は強固だ。そんな壁を壊す威力の攻撃を何回も繰り出す――――体力が途中で尽きて、そんな所をモンスターに襲われでもしたら、一巻の終わりである。
中層でこの難易度。下層となると、探索に特化したジョブの特殊な技能でも無ければ、まず帰って来れないだろう。
冒険者達も土系ダンジョンには潜りたがらない。
故に、情報も集まらず、世界で最も未知の場所は土系ダンジョンではないか、とまでまことしやかに言われていたりもしているのだ。
しかし、今回はあくまでトレジャーハントの場。場所としては上層で充分だ。遭難者を出すようなデンジャラスな企画にするつもりはない。
あとは、同じ土系ダンジョンの上層といっても、ダンジョンによって中の構築はそれぞれ異なっているので、田中達は最終的に二十と少しあまりのダンジョンを下見して、悩んだ末に、一つの会場を選んだ。
―――――――――――――――――――
そして、会場とするダンジョンが決定した数日後に、田中は配信を行った。
配信開始と、同時に待機していた視聴者から送られてくる大量のコメント。
“待ってた!”
“例の噂ってどうなの!?”
“配信キターー!!”
ところどころ閉店の噂を聞いてくるコメントがあるが、タイミングを見て話す予定なので、田中は一旦スルーし、
「それでは配信を始めます。」
配信を始める旨の発言をしたのだが、
“次は何の魔剣のガチャなんだ!?”
“光と来たから次は闇かな?”
“でも噂だと……”
「えぇと……今回はですね、事前に報告通り重大なお知らせを発表しようと思います……!」
“重大なお知らせ、ね……”
“まさか……”
“聞きたくなーい!!”
その反応が、噂を信じる視聴者達をさらに誤解させることとなり、送られてくるコメントも閉店関連の物が一気に増えていった。
これには、田中も早めに誤解を解いておかなければ、話を進めることは出来ないかも知れないと考えたのか、さっそく話すことを決め、
「えっと……困ったことに何故かネットで閉店説がやたら出てるんですけど、事実じゃないですよ?」
その噂が完全なデマであることを伝えた。
“え……?”
“あれ……?”
“違うの?”
「あれは完全にデマです。
単にリニューアルしてるだけですよ。今回の重大なお知らせは、普通にいいお知らせです」
“なんだぁ~~~~”
“安心したー!”
“誰だよ、こんなデマを初めに言い出したのは!”
誤解も解かれ、視聴者達が落ち着いたのを確認した田中は本題へと入った。
「いいお知らせも早速発表しますね」
“よかった~、これで安心して見れる~!”
“いいお知らせってなんだろ?”
“てか、リニューアルって何を変えるんだろ?”
「次回のガチャはなんと――――――初の記念ガチャを開催することに決まりました!」
“記念……ガチャ?”
“特別なガチャってことだろうし、魔剣が出やすくなるとか?”
“え? もしそうだったらむちゃくちゃ嬉しいな!”
「いくつかのコメントで当たりを言っている人がいますがその通りです。
記念ガチャはなんと! 魔剣が当たる確率が2倍です!」
“確率2倍!?”
“つっよ……それなら当たるかもしれないって希望が持てる”
“そんなガチャ……もう回す他ないじゃん笑”
「そして工事中の為、場所はいつものショッピングセンターではなく、ダンジョン内での開催になります!」
“……え、ダンジョン?”
“危なくね?”
“何故にダンジョンなんだ……?”
「せっかくの記念ガチャってことで普通にガチャを回すだけじゃ味気ないなと思ったので、トレジャーハント要素を入れてみました!」
“トレジャーハント……”
“少し前にあった、ダンジョンでLR魔剣を拾う騒動みたいになりそう”
“まぁ、面白そうだしいっか”
「じゃあ、細かなルールとかを説明していきますね」
“おおー!!!”
“俺、絶対参加する!”
“早くも、記念ガチャ当日が楽しみになってきたーー!!”
「――――――――――――――――――――――――――――――――エリアに一つある金色に塗装されたガチャガチャのマシーンからは、魔剣が確定で出たりと――――」
その後も、多くの視聴者達に向けてルール説明等を田中は行うのだった。
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