世界を支配する悪い魔女は こっそり気紛れの人生を過ごすことにした ~可愛い勇者に倒して貰うまで~

白山 いづみ

星の無い夜の中で






「……私、行かなくちゃ」

 

 深い、黒。

 星の無い夜空のような闇に、イオエルがぼうっと薄く浮かぶ。

 ふたりの距離が、いつのまにか、遠くなりかけていた。

 

「待ってください! 俺も…………っ?!」

 ――届かない。ぐっと胴体を掴むような力強い何かに、引き戻される――。

 

「幾億の夜を越えて、ずっとずっと、待ってた。でも結局、一番大切な流れ星に、私は、気付けなくて……。ごめんね…………」

「でもこうして、出会えた……!」


 魔法拘束から脱するのと同じ要領で、謎の拘束力から抜け出す。

 ――今度こそ絶対に、離さない。伸ばした自分の腕で、薄く輝く身体を、強く、抱き締める。


「………………っ」

 ひとまわり小さな身体が、震える。


 ずっと一緒にいる、約束。

 その言葉のまま、彼女は純粋に、真っ直ぐに、待っていてくれた……。


「生きることを、諦めないでください。たとえ限りある命が終わっても、また新しく出会い、新しい大好きなところをみつけるんです。一緒に、何度でも。――愛しています…………イオエル」














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