第5話 秘めた感情の渦

吉子の心はジュンヤとの出会いから一変していた。


日々の生活は変わらず続いていたが、彼女の内面では激しい感情の渦が巻き起こっていた。


ただおとの会話は以前よりもさらに平凡で、吉子は彼との間に深い溝を感じ始めていた。


ある週末、ただおは仕事で出張に出かけ、吉子は一人家に残された。


その夜、彼女はジュンヤに電話をかけた。彼との会話はすぐに心地よいものとなり、二人は深夜まで話し続けた。


ジュンヤの声には温もりがあり、吉子は自分がどれほど彼に惹かれているかを改めて感じた。


ジュンヤとの関係は、吉子に新たな自由と自己表現の場を提供した。


彼女はジュンヤのアトリエを訪れることが増え、彼と一緒に絵を描いたり、創造的な時間を共有したりした。


吉子は芸術を通じて自分自身を表現する喜びを発見し、彼女の心は次第に解放されていった。


しかし、その一方で、ただおへの罪悪感と、自分の行動に対する不安が常に吉子の心を圧迫していた。


彼女は二つの世界の間で揺れ動いていた。ジュンヤとの関係が深まるにつれ、彼女は自分が抱える感情の重さをより強く感じるようになった。


ある日、きみえと会ったとき、吉子は自分の心の中を打ち明けた。


「私、ジュンヤのことが好きなの。


でも、ただおとの生活を壊すわけにはいかないのよ。」きみえは彼女に共感を示しつつも、「自分の幸せも大切にしないと」とアドバイスした。


吉子は自分の幸せと責任の間で葛藤していた。彼女はジュンヤとの関係が持つ意味を深く考え、どう進むべきかを決めかねていた。


ただおへの配慮、ジュンヤへの想い、そして自分自身の心の声。これらすべてが彼女の心の中で渦巻いていた。


その夜、吉子はただおの隣で眠りについたが、心はずっと目覚めたままだった。


彼女は自分の心に正直になる勇気を持てるのか、それとも安定した生活を選ぶのか。


吉子の心の中では、決断の時が近づいていた。

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