第13話 ステータスウィンドウを手に入れろ②
「ちょっとじゃまするぜ」
「わりい、通してくれ」
聞き覚えのある声が会場出口の方から聞こえてきた。
―――廉か。
廉は持ち前の筋肉を生かして、人込みをゆっくりとかき分けて進んでいく。
もちろんかけ分けられた人々は嫌悪感を示すが、相手が相手だ。
なかなか表立って対立することはできないようだ。
―――その後ろには、亮がいる。
廉が作った道を歩くので、トラブルもなく進んでいる。
やるな。あいつら・・・。
そんな一幕を見ていると、突然隣から声をかけられた。
博人が目線を戻すと、なんと隣に見知らぬ女性が座っていた。
地味な顔だ。薄い化粧と眼鏡をした顔。髪は胸あたりまで伸びている。
パーカーにロングスカートの服装。
正直言って、自分から話しかけてくるようなタイプには見えなかった。
「あの・・・お水の入ったペットボトル持ってませんか」
そう、うつむきがちになりながら聞いてきた。
「―――え?」
女性の言葉に博人は驚き、言葉が出なかった。
そんな様子に気付いていないのか、女性はまだ続ける。
「昨日から、何も飲んでないんです!部屋の洗面所の水は飲めなくて。ペットボトル2本持ってませんか?」
女性の叫びは懇願に近かった。本当に昨日から何も飲めていないのだろう。
「ペットボトル1本しかなくて、飲みかけなんですが、それでもよろしければ・・」
博人が言い終わるのを待たず、女性は、
「ありがとうございます!いただきます!!」
と満面の笑みでペットボトルを受け取った。
女性が水を飲み終わるのを待って、少し話をすることにした。
「はじめまして。ぼくは佐伯博人と言います。刺激的な出会いになりましたね」
そう笑顔で話しかけたのだが、女性はもう博人の顔を見てはいなかった。
「はじめまして、、、。ごめんなさい。私、、お水のことで頭いっぱいになっちゃって、、、。
細川 彩です」
細川さんは、うつむいたまま博人に答えた。
その様子を見ながら、博人はゆっくりと話す。
「部屋の前にお水がなかったんですか?朝早くに確認したときは、まだどこの部屋の前にも水と食料の入ったバスケットがあったと思うんですが」
博人は今朝の様子を思い出しながら言った。
今までの運営側の対応を見ると、表向きとしては「平等」をうたっているような印象を受ける。
そうなると、食料や飲料の提供に格差を設けることは考えにくいように感じる。
「そうなんです。周りの部屋の前には水や食料が入っていたのに、私の部屋の前のバスケットには何も入っていなくて、、、。佐伯さんの前に何人か水をもらえないか聞いてみたんですが、1本しかないとか2本持っている人からもらえとか言われてしまって、、、」
細川さんは、両手をぎゅっと握りながらそう言った。
博人は聞いた情報から、考えや疑問点を洗い出す。
細川さんは気の弱い性格なのだろう。
もし自分なら、自分だけバスケットに何もはいいていなかったら、運営に話すか周りのバスケットから奪うことを考えるだろう。
この会場にいるのに運営に相談しない、水も持っていない状況をみるに、そんな勇気はないということだろうか。
そして疑問点だ。
「細川さん、水を2本持っている人がいたんですか?」
ここだ。
「はい、、、客室フロアは3階と4階にあることをしっていますか、、、?4階フロアの人たちは2本入っていたようです。あとは、3階フロアの人の中にも持っている人がいたという話も聞きました、、、」
―――これは、おかしい。
4階と3階で分配が違うのは、何かしらの法則や規則で決まっている可能性は高い。
ただ、3階にいる人の中で2本持っている人がいるのは変だ。
それでは平等性にかけてしまう。
ここまで話した後、博人は情報に、細川さんは水をもらったことに対して、双方お礼を言い、その場で別れた。
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