第13話 インターローグ:レゼド侯爵領墓地前の花屋の店主 ~花売りの娘の回想~
少女は、不思議な存在だった。
最も彼女をよく知っているのは、レゼド侯爵領のはずれにある小さな村の花屋の主人だろう。
人好きのする朗らかな顔で、近所にあるレゼド侯爵領の墓地に行く花を買い求める人たちに安心を与える花屋の店主。
その店主の前に一週間に一度くらい現れる少女。
生まれが良ければ絶世の美女になっていただろうかわいらしい少女だが、だれが見ても貧民の装いをしていた。
決まった日に来るわけではないが、一週間に一度、家の近所に咲いている花を集めて、この花屋に現れる。
店主は花の妖精だと思って、少しばかりの小遣いを渡す。
その日はいつも以上に花を持って現れた。
隣町にできたパン屋に行ってみたい、と言って花摘みを頑張ったらしい。
店主は小遣いに色を付けて、隣町迄の乗合馬車の料金を払える程度の小銭をチップとして渡してあげた。
しかしそれから数週間、彼女が訪ねてこない。
どこに住んでいるのかも、誰と住んでいるのかもわからない。
そんな彼女が来なくなっても、店主は少し寂しい思いをするだけで、日々の花屋の仕事で、いっぱいいっぱいだった。
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