第23話 無難がいいの、無難が
そして支払いを済ませて店の外に出る時、店員さんはアパレルよろしく入口の前まで元々着ていた服を持って来てくれた。そしてお姉さんに小声で何かを話していた。聞き耳を立てる。
「本当に売れてよかった。可愛い服なのに全然売れなくて。やっぱり恥ずかしいのかな。肌の露出が多いし、同じような服もあまりないからね。ありがとね、買ってくれて」
え……初めて? てことは街中こんな格好してるのは私だけで……なんか中世はそもそも前世みたいに肌を出さないって聞いたことがあるような(ソースはない)、ここは異世界だけど馬車を使ってる時点で、似たようなもんだろうし……やばい暑くなって来た。耳絶対真っ赤っかだよこれ。
その時ふと大きめのローブが目に入った。
「あの……これください」
震える声でそう言った。
「別にローブなくてもよかったのにね」
ギルドに戻る途中、お姉さんにそう言われた。
「よくないです。恥ずかしいです」
「そう?」
「そうです!」
「でも、流行の最先端っていつもそうじゃない?」
一体何を目指しているんだこの人は。
「別にそんなもの目指しているわけではないです!」
「そういうものかしら?」
「そういうものです!」
ふーふー。ちょっと大きな声を出したから息があがちゃった。誰もパレコレしたいわけじゃない。無難がいいの、無難が。
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