1990年6月丹波篠山
大学時代何度か訪れた、懐かしいところを再訪。
28日丹波篠山は小さな城下町だ。けれど、観光に力を入れてさらに有名になろうとしている。以前に比べて、小洒落た店が増えたように感じる。古き良きものの保存がきちんとされ、観光化の弊害があまり出ないことを祈る。妻入商家群は歩いていてほっとする。ここの醤油屋さんの山椒の醤油漬けは、あつあつご飯にちょびっと乗っけて食べると美味しい。いや、冷飯でも美味しい。なかなか外で売ってないんだよな。
篠山の近又旅館に宿泊。夕飯に麦トロ飯と山菜の天ぷらが出される。その他いろいろあり、かなり豪華な献立だった。泊客が少ないので、静かに食べることができた。
29日谷川まで出る。大学時代、おばあさんにとても親切にしていただいた、瑠璃寺に行くつもりだ。
道なりに西へ歩いて目印の円応教本部を過ぎると脇道を右手に入る。小さな家の中に仏様を置いている寺だ。幸運にも、おばあさんは未だ健在でいらっしゃった。前と同じようなもてなしを受けながら、前の分も併せてお礼を言うことができた。記憶の中より小さくなったおばあさんの、老いても輝く心の美しさに感無量。
名残惜しいけれど、お礼とおばあさんの健勝を祈り寺を辞す。
もう一つの目的、石龕寺へ向かう。石龕寺は知る人ぞ知る古刹で、聖徳太子により創立されたそうだ。歩いて行くつもりだったけれど、親切な花屋のおじさんが車に乗っけてくれ、直行。静かな境内をひとしきりまわる。以前訪れた時は、地域の定期清掃日だったようで、地元の方にいろんな話が聞けた。覚えていた話は2つ。
1つ目は境内奥にある、洞窟が熊野へ繋がっているという話。
2つ目は明治初期の廃仏毀釈に際し、たくさんの仏様が前の川に捨てられたが、後で土地の方がお助けしたという話。
廃仏毀釈の話を直に聞くのは、初めてだ。歴史の暗部って、なかなか外に出づらいものだ。
この後、金屋に向かう寺坂道を登っていく。登り詰めると、一面の笹に隠れている道をようよう下っていく。時折りひょっこりと石仏がある。昔から人が歩いている道だとほっとする。林道に出ると、そこからまた細い道を少しだけ登ると、不動明王さんがおわした。そこは禊ぎを行う、聖なる水場だった。水が勢いよく岩を降りて行く。岩清水とはこういうものか、と思いつつ汗をかいた顔を洗う。また道を下り賀茂神社に出る。さらに川に沿って道を下っていくと金屋集落に出る。集落から谷川駅へは直だ。
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