2013年7月秋田駒ヶ岳から八幡平へ

八甲田山にするか八幡平にするか迷った。雨になる確率が高いので、テント無し小屋泊まりが出来ることが前提条件だ。結局、長く山を縦走出来る方に決定。秋田駒ヶ岳から八幡平へ。

8日初っ端から雨だ。夏山シーズンが始まっているので、バスで一気に八合目まで行く。秋田駒ヶ岳はさすがに百名山のネームバリューと夏山シーズンが始まる時期も相まって、悪天候なのにけっこう人がいた。降りしきる雨の中、乳頭山経由田代平山荘を目指す。天候のせいで視界もあまり良くない為、道中の記憶がさっぱりだ。夕方には雨が激しくなり、山荘手前の道は俄か渓流となっていた。山荘はしっかりした作りで、雨から逃れられたのがありがたい。宿泊は自分だけだったので、遠慮なく濡れてるものをすべて干す。きちんと乾かないだろうけど、明日までそのまま。明日のパッキングはビニール袋を二重にしてこれ以上物が濡れないようにしよう。しかし、スタッフバックも交換時かな。この間買ったの以外、ちょっとしけっている。19時過ぎだ。そろそろ手元が暗い。外は凄い雨と風だ。明日は晴れるといいな。

9日一日中ずっと雨だった。途中2〜3時間止んだけれど、また降り出した。田代平山荘を朝5時立ち。大深山荘夕方6時着。ずいぶんと歩いた。後になるほど道がわかりにくく、大深岳手前1時間は藪漕ぎに難義した。湿原もいくつか、木道が無い状態のところを横断。靴と靴下はびしょ濡れ、明日も乾かないだろう。濡れてばかりでウンザリの為、明日は盛岡まで出て、ビジネスホテルで濡れた物を洗濯・乾燥させることにする。あー、後4日をどう過ごそうか。

こう書いているとしょんぼり感たっぷりだけど、それだけではない。花はたくさん咲いていたし、湿原の横断なんてふた昔前の山歩きのようではないか。今どき貴重な自然そのままの湿原。人がたくさんいる所は、自然破壊防止対策として、木道や柵がやたらあって、公園みたくなっている。晴れたら最高だろうけど、雨降りも良かった。たった一人、雨混じりの霧が風と共に湿原を駆け渡る光景を見ている…。なんと幻想的だろう。白馬が駆ける…とはこういう光景なんだと納得。木霊や風の精がそのあたりで踊っていても不思議はないような。足元がぐしょぐしょで肩の荷物が重い上、濡れた雑巾みたいな様子をしてる自分だけが場違いなようで、少し悲しい。

何もない、誰もいない、風雨たなびく湿原に一人立っていると、自分という存在があたりに溶け込んでしまい、どこにもいなくなるような、そんな不思議な気持ちになった。

10日朝5時立ち。行程を半分くらい歩いた頃、雨が止んだ。それでも道は渓流みたくなっている箇所がけっこうあって歩きづらい。ようやく、八幡平ビジターセンターに続く舗装路出ると、ほっとする。10時過ぎセンター着。雨具を片し食堂で暖かいうどんを食べる。盛岡駅行きバスの時間まで見返峠辺りをぶらつく。茶臼口くらいまで頑張って外を眺めていたけど、その後は爆睡だ。

11日今日も雨だ。梅雨前線が停滞しているらしく、週末まで雨が続く。山はお腹いっぱいなので、海へ行くことにする。まだ宮古には行ったことがないから、宮古はどうだろう。ちょうどいい時間のバスがあるので乗り込む。宮古への道は思ったより細く、人家はほとんどない山間や、川沿いをバスは走って行く。出来たら宮古で泊まりたいなぁと思っていたけれど、震災の復興関係者で宿は満員。おまけに月命日だった。駅周辺は活気があって思ったより宮古って大きいと感じたが、バスで浄土ヶ浜方面へ少し行くと、更地が広がっている。草が繁るばかりでのっぺらぼう。たまに、一畳二畳のマッチ箱のような掘立て小屋があるだけ。ああ…このあたり津波でもってかれたんだな、と思い至る。死者は出たのだろうか?青の洞窟へ小さなボートで行った際、船頭のおじさんの話では出ていない口ぶりだったがはてさて。青の洞窟内の海の水は透きとおっていて、ウニ、ホヤ、岩にはなんとワカメがうじゃうじゃ。たまに珊瑚も生えている。上天気の日には白亜の岩壁にコバルトブルーが映え、さぞや美しかろう。伊坂幸太郎の死神の精度の最終話ってそんな感じのラストなんだろうかと、はたと思い至る。また今度晴れた日に来よう。

宮古では宿泊不可なので、岩泉で宿を取る。1日予定を前倒しだ。龍泉洞はまだ見たことがないので楽しみ。

途中、小本でバスの接続待ち1時間半ほど。雨がけっこう降っていて歩きたくなかったので、駅横にある小さな児童図書館で雨降る本屋を読みながら、しょうゆパンと牛乳をいただく。美味。牛乳は地元産の低温殺菌牛乳なので甘みがある。こんなまったり感はしばらくぶり。

岩泉の旅館は私一人だけ宿泊だった。宮古とずいぶんな差がある。とても感じの良いところで、夕食後に、ちょっとしたデザートや旬のさくらんぼがついてきた。おまけに翌日はおにぎりとさくらんぼを昼のしのぎにといただく。

13日は岩泉をぶらつきつつ、龍泉洞へ。とても丁寧に管理されていて、幻想的だ。地底湖は、まるでナルニア物語の銀のいすに出てくる地底湖のようだ。龍泉洞を出ると、また雨がしとしと降っていて止みそうにない。しょうがないので、盛岡までバスで戻る。4時頃着。本屋で文庫新刊を購入、ビジネスホテルにチェックイン。時間に余裕があるので、前回たどり着けなかった珈琲店機屋に行くことにする。あちこち歩き、たどり着けたのは7時前だ。かなりマイナーな場所にあった。珈琲もケーキも美味。店の雰囲気も好み。苦労したが、たどり着けて良かった。また明日時間があれば行ってみようかと思う。

14日最終日晴れ。なんだかなぁと思うが、リベンジで八幡平へ行くことにする。朝一のバスで行き、最終便で盛岡駅まで戻る。必要ない寝袋や着替えなどをロッカーに預けて身軽にGO。八幡平山頂付近は快晴、秋田駒ヶ岳からの道行きの苦労はなんなんだ?と思ってしまった。

ま、それもこれも全部ひっくるめて、いい思い出になった。

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