第88話 やっちゃった



さて、次のゴーレムが僕らの前に出てきた。


ギゴァーーー!


魔物にもかかわらず、仲間の死を前にして大きく泣き叫ぶ。


そしてこちらを向いて、何やらぶつぶつと呟く。


「おい、魔法を放つぞ。全力でシールドを張れ!」

「「はい!」」


kspc18wcw


詠唱が終わると同時に魔法陣がゴーレムの前に展開される。


ダンジョン内の魔力が一気に魔法陣に集まり、大きな土、いや岩へと変化していく。


「おいおい、このダンジョンでそれはあかんやろ」

「どうします、ルイ兄様!流石にあれがシールドに当たったら周囲への被害は甚大です!」

「わかっているが・・・・おい、アルス!斬ることはできるか?!」


僕は一瞬よぎった案をアルスに聞く。


「斬るって・・・まさか、あの大きな岩をですか?!」


すでに出来つつある巨大な岩はゴーレムの半分ほどで、ギザギザ尖っている。


「ああ、僕が魔法でカバーする」

「ですが・・・いえ、分かりました。やってみます!」


そうこうしているうちに、ゴーレムがこちらに向けて放ってくる。


それに合わせるように僕はさっきと同じ水魔法を放つ。


「【ウォータレス】!」


なるべく破片が飛び散らないように、そして勢いを殺すように巨石をある程度削り取る。


僕の魔法で小さくなった岩。


そこへアルスが一直線に向かう。


そして、手元の剣を力強く握りしめ、岩のちょうど真ん中めがけて剣を振り下ろす。


ある程度勢いをそがれていた岩はアルスの剣撃に負け、真っ二つになる。


ギガァ?!


自分の放った魔法が真っ二つにされたことに驚く二体目のゴーレム。


その隙を突いて、アルスがすぐさま走り寄り、ゴーレムの顔めがけて剣を振り下ろす。


キーン!


それに気付いたゴーレムが瞬時にシールドを展開。


アルスの剣は弾かれ、体勢を崩すもレーナが魔法でカバーする。


ゴーレムは魔法で倒せないと判断したのか、今度はドシンドシンとこちらへ突撃してくる。


踏み潰そうとアルスめがけて足を下ろすも、難なく避けられる。


失敗したゴーレムは、今度はさっきから一歩も動いていない僕めがけて両拳を振り下ろす。


が、これも僕のシールドで簡単に防いだ。


バリッ


硬い音がダンジョンに響く。


同時に、ゴーレムの拳がシールドに当たったことにより発生した衝撃波が、地面の砂を巻き上げる。


流石にそれは防げず、砂粒が僕の目に入る。


砂が目に入ること自体はあまり問題はない。


だが、うざい!そして微妙に痛い!


「おのれ、ゴーレムめ!!」


この僕を傷つけるとは万死に値するぞ。


「貴様のような下等生物が僕を傷つけるとは。愚かな!」


殺意を込めてゴーレムを睨む。


「あの〜ルイ様?どうしてそんなに怒っているのですか?」


レーナが後方から恐る恐る聞いてくる。


「僕の目に砂粒を入れた。つまり、僕を傷つけたことになる!!」

「???」


駄目だ、この怒りは下民には分かるまい。


人間ならまだしも、魔物にやられた。しかも下等の。


コカトリスの時とはわけが違う!


例えるなら、犬に噛まれるのはまだ許せるが、アリに噛まれるのは許せない的なことだ!


分かりやすいでしょ?


とりあえず、殺す。


「集い乱れ、水の神となれ、―」

「ルイ様!それ以上―」

「【ウォーグラン】!」


僕はゴーレムめがけて聖級水魔法を放つ。


ゴーーーーー


巨大な大河が一気にゴーレムたちを襲い、体をズタボロにしていく。


ただ勢いが強く、後ろのゴーレム、さらにはダンジョンの壁まで削ってしまった。


ガガガ、ドスッ


一部の壁が崩れ、崩落する音が聞こえる。


土埃が収まると、崩れた壁が崩落した後、ぐちゃぐちゃになったゴーレムの遺体が露わになる。


「ルイ兄様、やりすぎです!」

「・・・だってあいつが全て悪い!」


僕は死骸から出てきたゴーレムのコアを指さしながら言う。


「はぁ〜〜〜どうするんですか?壁に穴が空いたんですよ!」

「すまんすまん。それにしてもどうして穴が・・・」


僕は崩落した跡を進みながら壁の穴のところに着いた。


穴の中は暗くてよく分からない。


穴に入り興味本位でしばらく歩いていると、突き当りにすぐに面した。


そしてそこには、小さな祭壇のようなものがあった。


それを覗いてると、何やら文字の書かれた石版のようなものを発見した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る