第44話 主人公④ (リリス視点)


精霊の色は主に赤、青、緑、黄、紫、白、黒の七色。

それぞれが属性で分かれており、赤が炎系、青が水系、緑が風系、黃が土系、紫が支援系、白が雷系、黒が闇系となっている。


この中でも白黒以外の五色はどこにでも存在している。


精霊術を使おうとするにはどうすれば良いのか?答えは浮遊精霊と主従を結べば良いのだ。

精霊自身が気に入った術士と結ぶことで彼らの力を使える。


主従は言わば無理やり精霊の力を使うものだ。精霊にも体力があり、長くは使えない。

だが、契約は強力な守護精霊と結ぶものであり本体は別のところにあるので体力自体は無くならない。本体の体力が無くなるまで使えるのだ。


それが主従と契約の違い。


さて、精霊術を使うのに大切なのが詠唱。

魔法を打つときと違い、精霊語を使う。


「リリス。お前は物覚えもいいから精霊語について授業しよう」


ある日のこと。

師匠がそう切り出してきた。


「精霊語???」


私は訳が分からず首を傾げる。


「ああ、精霊語だ。本来は精霊と会話できるようになって初めて使えるものなのだ。だから精霊語自体は教えられないが・・・精霊語とは?について話そう」


そう言って歴史の教科書を出した。


「精霊術の歴史は大体3000年も遡る」

「え!魔法が生み出されたのも1500年前ですよね!」

「もっと言うと魔物自体が出てきたのも2000年前だ」


内心で驚愕の声をあげる。


「精霊術は3000年前では当たり前の物だったんだ。ただ、実際に全員が使えたかと言うとそういうわけではなく、一部の人しか使えなかったんだ。だからそういう人々が権力者となった」

「そうなんですか」

「ああ。それで、1500年前に誰もが使えるような魔法が誕生したのだ。しかも魔法は精霊術を使える人は操れない。圧倒的に数の少ない精霊術士は魔法誕生から300年ほどで歴史から姿を消したんだ。我がこれを知っているのは細々と生きてきた精霊術士達が口伝で伝えていっているからだ」


なるほど、だからどんな歴史書にも載っていない。物語としか伝わっていないんだ。


「名を上げようとした精霊術士は何人もいた。だがいずれも魔法を管理する魔法協会に消されていった。だから皆が細々と生きている」


師匠は俯く。


「精霊術はいつか日の目を見なければならない・・・ってお前に話すことじゃなかったな」


乾いた笑いをして師匠は精霊語に話しを戻した。


「そうだ、精霊語についてだな。精霊語は3000年前から魔法が生まれるまでの1500年ほど話されていた世界共通の言語だったんだ」


たしか本で、言語が分かれたのは魔法が出来たからと聞いたことがある。


「失われた言語なのだが、精霊はそれを記憶しているし、精霊術の素質がある人も特質として話せるようになっているんだ。ただ、精霊と会話をする時のみに使えるから普通の人との会話では出来ないんだよ」

「何でですか?」


私が聞くと、師匠は首を傾げる。


「さあ?研究は専門分野では無いんでね。とりあえず精霊術は我々しか使えない。精霊術と魔法のメリットとデメリットを知っているか?」


聞かれて私は考え込む。


「・・・魔法の利点は豊富な種類に強力な威力。精霊術は素早い詠唱に精霊さえいれば良い、でしたっけ?」

「その通り。魔法は種類豊富で威力は強大だが強い魔法ほど詠唱が長い。更に魔法が無い環境になると使えなくなる。闇系精霊術には一定の周囲の魔力を無くすというものもあるからそうなってしまえばこちらの方が強い。まあ、精霊の体力があればな。で、精霊術は魔法ほどの利点は無いが、デメリットはそれだけだ」

「魔法ほど強くないけど欠点がすごいあるわけでは無いって言うことですね」

「ああ、その通り」


結構万能型なのだと私は感じた。


そして私はふと疑問に思ったことがあった。


「???ではどうして精霊術士は負けたのですか?」

「ほぉ〜良い所に気がついたかね?それが一番の精霊術士の欠点」

「何なんですか?」

「ずばり、数が少ないということが」


!そういうことか。


「わかった顔をしたな。どんなに強いやつでも多数で挑まれればいずれ負ける。精霊術士は世界に一万人もいない。1500年前時点でも数万人だ。この世界には数千万人の魔法使いがいる。それだけで差は当然だ」


精霊術士が負けた一番の理由が人数差か。


「!おっと、色々話をしていたら時間になったな。我はこれから外に用事がある。お前は今日の夕飯の買い物でも頼むか」

「あ、分かりました。と、その前に」


私は目を瞑って心のなかで言う。


みんな、集まって。


・・・・・・・・・・・・


今日も反応なし。


私はくよくよせず、外へと出た。

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