第30話 増税!?

僕が治めることになった元アルマー領、元いい現ルイ領。


アークヤク地方を領するブルボン公爵家の東に位置するこの領地は、複数の河川と広い平野に存在する。


沿岸部と帝都の中間に位置し、三つの街道が集まる商業地域でもある。


最も産業は農業が中心であるため商業地としては知られていない。


しかし、税収入の三分の一が関税であり、意外に栄えている。



さて、詳しい経営状況・・・は僕も詳しく知っているわけではないので割愛。


ただ、僕にとって重要な税についてはある程度自分で調べた。


元々、読んだ小説には税の仕組みについて詳しく書かれていなかった為最近詳しく知った。


税を取る対象は主に三つから。


農民、市民(街に住む二次、三次産業で働く人)、商人。


農民からは人頭税(住民一人にかかる税)や地代(農地にかかる税)、農税(農作物が収穫された時にかかる税)。


市民からは住民税(領主に払う税)や通行税(都市の出入りにかかる税)。


商人からは関税(領地への出入りにかかる税)や通行税、市税(街での売買の時にかかる税)。


など様々。


他にも色々とあるが、それは置いておく。


とりあえずこの税によって貴族たちは収入を得ている。


税収の内四割が貴族の懐に入り、一割を国に収め、その他を領地経営に当てている。



「ルイ兄様!話を聞いておられますか」


ぼーっとしている僕の顔を覗き込んでくるアルス。


「ん?ああ、税収の話だっけ」

「ええ、まあ」

「それで、僕にはいくら入るんだ?」


問いかけると全員が苦笑をする。


セバスは困ったような表情を浮かべて諭すように話してくる。


「ルイ坊っちゃま。話を聞いておりませんでしたね。今我々は減税の話し合いをしているんですよ。領主は領民を守るのが役目です。自分のことは後回しですよ」

「え、嫌だ」


正しいかもしれない。だが断る。


領民のためか知らんが、僕は領主で貴族。税は取れるだけ取りたいのが筋だろう。


「ルイ様。今は我慢する時です。領民に慕われるからこそ領地は安定する。そして多くの税が入ってくるのです」

「レーナの言いたいことも分かるが・・・断る!増税だ増税!」

「ルイ様・・・」


ごねる僕を本気で心配するみんな。


僕おかしなこと言ってないよね?


新たな領地経営にはお金がたくさん必要。


前世の江戸時代だって転封した藩主が税を上げてた、と習ったし。別に普通のことだと思う。


・・・まあ、自分でも何で困惑されているかは理解している。


江戸時代を例に出すなら、増税した藩では大体一揆が起こっている。


つまり、増税をしても領民に反感を持たれ、いずれ自滅するかも知れない。


帝国一の公爵家にも関わらず、貴族の中では割にまともである父の家臣たちは、それを危惧をしているのだろう。


アルスもレーナも本などを読んで、どんな領地経営が成功するのか、しないのかを学んだんだろう。


そりゃー僕だって一揆とか起こされたくないし、死にたくない。


ふと資料に目を落とすと、アルマー家時代の時の事が書かれていた。


現ルイ領一帯をアルマー家時代に仕切っていた代官は結構優秀だったらしい。


税も安く、アルマー侯爵から領民を守る模範的な人。


そのせいでクビにされたらしい。


そう、この貴族社会では善意など通じない。


貴族の言うことが全て。


一揆?軍隊で潰せばいい。



「ルイ様。お考え直してください。増税など行ったらどんな事が起こるか・・。聡明なルイ様なら分かりますよね」

「ああ、きっと暴動が起きる」


レーナは執拗に止めてくる。


おそらく彼女の両親が善良な貴族だったからだろう。娘も同じ考えを持っている。


だが、


「いや、増税はさせる。これは領主命令だ」

「・・・・・・」


僕が宣言すると皆がうなだれる。


悲しい目でちらちら僕を見てきて、すごくうざい。


「はぁ〜」


あからさまにため息をつく奴もいる。


正直キレたくなる。


だが、その前に僕の中の小さな良心が先に動いた。


「代わりに、新たな改革をしようと思う」

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