第26話 復讐
「さあ、ウッデン殿。逃れることなど出来ないぞ」
僕はソファーに座って足を組む。
「早く、『私が伯爵家を潰しました』と言ったらどうだ」
顔を青、白、赤と変化させていく様子を眺めながら僕は言う。
何か言い返そうとして、それが言い訳に過ぎないと気づいて何度かやめる。
「さあ、何か言い訳があるなら聞きますよ」
もっとも許すわけでは無いけど。
「ガキが!」
「そのガキに追求されているんですよ」
所詮は侯爵家の人間だ。証拠の隠滅や賄賂の流れなどは簡単に公爵家の力で見つけられる。
やるんだとしたら僕みたいに上手くやらなきゃ。
「糞、仕方が無い。殺れ!」
急にそうウッデンが叫ぶと隣に控えていた執事と護衛、天井に潜んでいた刺客達が一斉に僕へと襲いかかってくる。
追い詰められたため最後のの手段として僕を殺そうとするらしい。
だが・・・
「芸が無さすぎる」
僕は襲いかかられても特に動揺すること無く座っていた。
ザシンッザシンッザシンッ―――――
人が斬られる音が部屋に響く。
と、同時に襲いかかってきた奴らが一斉に血を流して屍となる。
「な!ど、どうして・・・」
驚いた表情を浮かべるウッデン。
「あのさ、僕が暗殺を警戒しないわけ無いだろ」
だからこそ、この場にはアルス、レーナ、オールド、セバスがいる。
「さて、貴方は公爵令息である僕を暗殺しようとした殺人未遂だ。大人しく捕まれ」
宣告するとウッデンはヘナヘナとその場に倒れ込んだ。
ウッデンを拘束させ外に出た僕は後ろを振り返って侯爵家の屋敷を見る。
「ルイ坊っちゃま?」
セバスが不思議そうにこちらを見てくる。
「なあ、レーナ」
「は、はい、ルイ様」
憎むようにウッデンを睨んでいたレーナは急に呼ばれ、戸惑いながらもこちらに来る。
「ここを燃やさないか?」
「「「・・・・・・は!?」
大きな声で全員が、ウッデンでさえ驚いた。
「どうしてそう驚く?」
「え、ルイ様。家を燃やすなど・・い、いいんですか?」
「僕が許す」
呆れたようにセバスとオールドがため息をつく。
「レーナに復讐をさせたいがウッデンを殺させたところで、大した穴埋めになるわけではない」
「・・・・・・」
「だから、そいつの前でこの屋敷を燃やせ」
「な、何てことをさせるんだこのガキ!」
突拍子もない提案をするとウッデンが叫ぶ。
「ガキだから分からないのか!どれだけ貴族にとって屋敷が大事か!」
「知ってるぞ。家の大きさ、豪華さが一種のステータスになる。貴族にとって自分の格式をアピールする大事なものさ」
「だったら―」
「だから貴方の前で燃やさせるんだよ、ウッデン殿」
「なっ」
「自分の大事なステータスが目の前で燃やされる絶望。まさに貴方のような人間にはピッタリの復讐方法さ」
「き、貴様は本当にガキなのか!」
そうだとも。見た目は九歳の子供さ。
「レーナ。早くやりな」
「やめろ!おい、奴隷!それだけは止めてくれ!」
レーナはしばしの間俯いていた。
その間にウッデンは止めるよう何度も叫ぶ。
不意にレーナは顔を上げ、ウッデンの方を向く。
「私も元伯爵家の人間ですから貴族にとって屋敷がどれだけ大事か理解しています」
「分かっているなら―」
「ですが、貴方は今、自分の屋敷が焼かれるのを止めようと叫んだ。でも!私への謝罪は無かった」
「な、何で謝らないといけないんだ!」
「・・・そう思っているのなら、心おきなく燃やせます」
そう言って屋敷の方に向き直る。
「お、おい、や、止めてく―うっ」
僕はうるさい奴を黙らせる。
「火の精霊神よ、力を我に纏わせ、炎の渦を起こせ【ブレイゴ・ホリー・フレネード】」
レーナは力強く詠唱する。
大きな魔法陣を構築させ、魔力を集める。
そして、聖級魔法を大きく立派な屋敷へと放つ。
巨大な炎の竜巻が一瞬で屋敷を包み込み、轟々と焼き尽くす。
高く、激しく燃え盛る炎を見て僕は思う。
公爵家の僕に逆らうからいけないのだ! と。
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