第13話 主人公(リリス視点)



何故?どうして?




それが私の感情を支配した。




痛い、痛いよ。父様、母様。




両親を呼ぶが答えてくれない。



ああ、そうだ。


私は捨てられたんだ。



両親に、家族に、世界に


重い足取りで路地裏を歩いた。






私は男爵家の生まれだった。


そこそこの街を治めるそこそこの家。


普通の貴族だった。


ただ、私は生まれながら魔法が使えなかった。


世界から忌み嫌われる存在、無能者だった。


それでも両親は愛してくれた・・・妹が覚醒するまでは。



一個下の妹は普通の娘だった。


魔法も年相応に使えていた。


だがある日、覚醒した。


この世ではよくある神の祝福だった。


急激に扱える魔法が増え、強くなる。


そうなると愛情は全て妹に奪われた。


私は両親から忌み嫌われ、妹からはバカにされ、使用人たちからも陰口を叩かれた。




みんな、今まで優しくしてくれてきたのに




ただ、それでも耐えた。


私の家はここだけ、ここだけなんだ。


どんな仕打ちを受けようとも耐えた。


でも・・・長くは続かなかった。




ある日捨てられた。


唐突に屋敷から追い出された。


持ち物もなく、下着一枚で。


奴隷として売られていたほうが良いと心底思うほどだった。


最後の家族の言葉が忘れられない。



『お前のような無能者は我が家の恥曝しなんだよ!』



父様は怒鳴る。



『あんたを産んだことが一番の後悔よ!』



母様は吐き捨てる。



『今のあなたは本当に滑稽だわ。無能姉さん。オホホホ!』



妹が嘲笑う。



私はどうすればよかったの!


何で生まれてきたの!


何で何で何で何で何で何で!!!!!!!!!!




あーもう死にたい。寒いし体中が痛い。



路地裏で倒れ付した私がふと目を開けると緑色の光る点が漂う。


「な、に」


小さい頃から私にしか見えないもの。


誰もこのことを信じてくれない。


点はそこら中に漂っており、常に見える。


「あ、なた、は」


声がガラガラで喉が痛い。


意識も遠のいていく。


もう、私は・・・



「へぇ〜この子か。君達が言っていた見える子って言うのは」


美しい声が聞こえる。


女神様なのか?


「われ以外にいたとはな。おい、少女よ」


少女?私のこと?


目を開けて頭を少し動かし見上げる。


「おお、生きているか。だったら聞け。お前、われの弟子にならないか」

「で、し」

「そうだ。お前は魔法が使えないだろ。われも同じだ」

「お、なじ?」

「そうだ。代わりに精霊術を使うんだ」

「せい、れい?」


そんなの物語でしか聞いたこと無い。


「信じなくても良い。その内分かってくる。でも、一つだけ確認だ。お前を虐げてきた奴らを見返したくないか?」


見返す?家族を使用人たちを?


そんなことは・・・・・・したい。


そうだ、ここで死んだら今まで耐えてきた意味がないじゃないか。


今まで無かった感情が渦巻く。


「おお、生きようとする目をしている。決まりだ、お前をわれの根城に連れて行く」


そう言われ背負われる。


誰かの温もりを久しぶりに感じた。



私、リリス・デ・エヴルーはこの日から精霊術士になった。





―――


後書き失礼します。

ここまで拝読していただき誠にありがとうございます。

明日からも毎日投稿、とりあえず学園入学前まではしていきます。

これからも気軽に読んでください。よろしくお願いします。

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