少年編 1章
第3話 この世界
五歳児の僕は一生懸命勉強をしている。
前世では勉強嫌いだったが、それを押さえつけて頑張っている。
前世のように無能と言われないよう。
最初に僕は地理と歴史を勉強した。
この世界の前提として三つ。
まずは大陸は三つあり、それぞれが三角の形をしている。
一つの大陸を上としてその他二つがその左右下にあり、何処から見ても同じ形に見える。三つ鱗紋と同じ感じだ。
次はいくつかの種族がいること。
人族、エルフ族、ドワーフ族、など。数十はあるとされている。
最後に魔法と呼ばれる存在があること。
詠唱を唱え、空気中の魔力を上手く扱うことで使えるものだ。
俺が生まれたのは第三大陸の北部から西部、中央部をかけて領土を持つ大きな帝国だ。
500年前に誕生した国家であり、この世界でもトップクラスの歴史を誇る。
転生した先、ブルボン公爵家は帝国の歴史と共にあるぐらいの名門家。
血筋としても皇家と縁戚関係にあり、僕自身もそんな血を受け継いでいる。
ブルボン公爵家の領地は北西部のアークヤク地方一帯。
農作地帯で鉱山も保有し、大きな漁港もある。
公都は帝都の次に大きな街で、商業の中心地。
公爵領は非常に栄えているところなのだ。
そんな公都の中心に大きな屋敷を構えていた。
端から端まで歩いて二十分もかかる大邸宅に僕は住んでいる。
前世のあの家よりも大きいこの家で、優雅に暮らしていた。
「ルイ坊ちゃま。当主様、奥方様とのお食事のお時間です」
「わかった。すぐに行くと言っておいて」
「分かりました、直ぐにお伝えします」
言伝をしに部屋に入ってきたメイドを下がらせる。
読んでいた本を閉じ、服を着替える。
「セバス、行くぞ」
側に控えていた執事を呼ぶ。
「はっ」
大きな屋敷を歩き進む。
白と銀、金の色を綺麗に配色しており、誰が見ても豪華だと分かる。
赤いカーペットの上を歩きながら、目的の部屋につく。
「どうぞ」
セバスが扉を開け、僕は入る。
「おお、来たかルイ!」
「待っていたわ」
広々とした部屋の中央に大きなテーブル。そこに座る二人の大人。
この世界の両親だ。
父は、ラノルド・デ・ブルボン。母がヨーハナ・デ・ブルボン。
ガッチリとした体格で金髪をオールバックにしたイケイケ男が父。
スレンダーで水色の長髪の豊満な胸部の美人が母。
歳は二人共まだ二十四で、若々しい。だが、そのためか問題もある。
父はとにかく女好きでチャラい人だが、家族思いな人物だ。
母は優しく、領地経営にも携わる頭の良い人だが、怒り出すと歯止めがきかない。
そんな二人の息子として僕は生まれた。
「今日も勉強してたんだな」
「はい」
「フフフ。貴方はきっと良い領主になるのね」
母が笑顔で言う。
「勉強は今は何をやっているの?」
「帝国の歴史を勉強しています」
「そうなのね」
そんな会話をしていると料理が運ばれてくる。
ヨーロッパなどではよくある、前菜、スープ、メイン、デザートの順で豪勢な料理が運ばれてくる。
五歳児の僕には結構な量だが、何とか食べきる。
デザートを食べながら家族で団欒。
少しして僕は、両親にお願いをした。
「お父様、お母様。僕は魔法が学びたいです」
そう言うと、二人は難しい顔をする。
「ルイ、父さんも母さんも教えたいんだが・・・」
「年齢的にまだ教えるわけにはいかないの。危険も伴うし」
「ですが・・・」
俺が俯くと二人は唸りだす。
「・・・ヨーハナ、まあ私としてはもう良いんじゃないかなと思うんだよ」
「ですがあなた。もしルイに何かあれば」
「大丈夫です!怪我無くやります!」
すかさず僕が言うと、最後まで渋っていた母が諦めた。
「分かったわ。怪我無くやりなさい」
「はい、お母様!ありがとうございます!」
椅子を降り、抱きつきに行くと「もう〜、この子ったら〜」と嬉しそうに言って抱き返してくる母。
我慢できなかったのか父もこの輪に入って抱きついてくる。
これが、家族の温もりか!
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