異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクール  H

プロローグ

第1話 転生

高い高いビルの上。


僕はフェンスに掴まり、下を眺めた。


地面に当たったらどれほど痛いのかを想像する。


どうせ、痛みは一瞬しか来ないだろうけど。


覚悟を決めて僕は前を向いた。


目線の先にあの忌々しい家が目に入る。


「場所替えようかな・・・いや、どこでもいいか」


死ぬんだから場所なんて関係ない。


逆に目にでも焼き付けておこう、僕を苦しめた家を。


「ふぅ〜〜」


大きく息を吐き、一歩前に出る。


バランスが崩れればいつでも落ちれる。


「もう楽になれる」


身分や家柄なんて必要ない。


普通の生活をしたかったな。






 僕は下へと真っ逆さまに落ちた。






地面に落ちるまで長い長い時間が過ぎた。


その間走馬灯が頭の中に流れる。



平安時代から続く名家の長男として生まれた僕は、周りの大人の期待を一身に受けて育った。


周りの大人は政財界の重鎮ばかりで、お金には不自由せず子供時代は家柄を鼻にかけ、ノホホンと過ごしていた。


でも成長するにつれ、僕に才能が無いことが明らかになる。


勉強もスポーツもそこそこ。


高校も大学もそこそこのところ。


どんどん僕の周りから大人たちは去っていった。


最後のチャンスだった一昨年の参議院選は完敗。


親にも見捨てられた。



『あんたは血筋を残すぐらいしか役に立たないわ』



母に言われた言葉が頭にこびりつく。


流されるまま親の決めたどこかの令嬢と結婚をして子供を成した。


だが子供が生まれた直後、妻となった女性は違う男と駆け落ちして逃げ出した。


生まれた子供も両親達に奪われ、僕は何もかも失った。


僕に残されたのは家柄だけ、家柄だけなんだ!



あぁ〜、このことから逃げることは無理なんだ。


家柄なんか要らない!なんて思っても、僕はそれにいつのまにかしがみついていた。


それしか誇れるものが無かったんだ。


存在意義をそこに見出していたんだ。


家柄の・・・亡者となっていたんだ。



ふっ、まあいいさ。


この時代、家柄なんて何の役にも立たない。


能力で劣っていたら、負け組なんだ。


だから、俺は・・・





憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い


能力なんて多少あればいいじゃないか!


何で家柄の良い僕がこんな苦しむんだ!


下民なんかが何で僕より上に立つんだ!


支配する側は僕の方なのに!





違う、違う違う違う違う違う違う


これは本心じゃない!


能力がある人間が上に立つべきなんだ!


下民じゃない、家柄なんて関係ない!


生まれた時から命はみんな平等なんだ!





どちらも本心なんだ。


どこかで僕は人を見下していたのかもしれない。


だから、天罰なんだ。


家柄の亡者となった僕への天罰。




ああ、地面が近い。


もうこの人生を終わらせられる。


やっと・・・・




 ドッ・・・・・・・




大きな衝突音とともに全身に痛みが走る。


僕は死んだんだ!


意識は朦朧とする。






意識?



何故意識がある?


僕は本当に死んだのか?


目は開けられない、体も動かない。


先程の痛みも感じない。


何も聞こえ―



「・・・元気な男の子です!」

「おお、そうか!これで―――家も安泰だな!」


知らない人の声。


ここは何処なんだ?


目に力を入れると、今度は開いた。


ボヤけてよく見えない。


木造の天井が視認できたがそれ以外はさっぱり。


本当に何が起きているんだ!?


周囲の大人の声に耳を傾ける。


「旦那様、お名前はどうされますか?」


名前?いやいや僕にはちゃんと名前があるよ!


「もう、決めてある。ルイ、この子の名前はルイ・デ・ブルボンだ。我がブルボン公爵家の長男だ」


公爵家?長男?


まさかまさか・・・


転生したとでも言うのかよ!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る