第61話 路線バスの復活

2022年5月22日、日曜日。


一時帰国から戻り中国に再入国してから、とうとう80日目となりました。


本日から一部の地下鉄と路線バスが再開するとのことだったので、ホテルの前に出てみると、思っていた以上に頻繁に路線バスが通り過ぎていきます。


然しバスに乗るにはPCR検査陰性証明その他色々な条件をクリアすることが必要、また地下鉄も上海から出て行く新幹線のチケットを持っている人のみが乗車可など、まだまだ正常な状態には程遠い状況です。


復活した路線バスを見ると、車体に「別来無恙bié lái wú yàng」との文字が書かれていました。


yàng」は、日本語でも「つつがなくお過ごしでしょうか」などで使いますし、有名な唱歌「故郷ふるさと」の2番の歌詞「如何にいます、父母、つつがなしや、友がき」で聞いたことがある方も多いかと思います。


人を刺す「恙虫つつがむし」が居ない=平穏である、が語源との説もありますが、どうもこれは逆のようで、「恙」自体に病気や災厄の意味があり、これが災いとなる虫の名前に使われるようになった、というのが定説のようです。


少し脱線しましたが、「別来無恙bié lái wú yàng」は直訳すると「暫く会わなかった間、恙(病気)などありませんでしたか?」となり、通常は「その後、お変わりありませんか?お元気ですか?」といったニュアンスで使われるそうです。


私は中国語で「恙」が実際に使われているのを、このバスの文字で初めてみましたが、コロナウィルスで長らく部屋に閉じ込められてきた今の状況には、まさにぴったりの表現だと感じました。


一方で、こんな酷い状況であるにも関わらず、住民の生活インフラ確保とは全く無関係のないバスのペイントにコストと人手を掛けていることに対して、体面を重んじる中国らしい行為だな、そんなお金や労力があったらもっと住民を助けてくれればよいのに、と批判的な目で見ていました。

 

ぼんやりと街を眺めていると、解除された場所から来たと思われるお散歩や自転車の人も、ごく僅かではありますが見かけるようになり、出口が見えているような気もします。


気のせいかもしれませんが。

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