11 次なる依頼
その夜。
近くの高級レストランで金貨2枚というコース料理を注文する。
「ママ!きんか2まいってすごいね!」
いつになくテンションが高いマイちゃん。落ち着きなく椅子の上で動いている。
『そうだね。マイちゃんはあのハゲのところで一ヵ月1枚で働く予定だったからその2倍だね!』
「2ばい!……ママ、ほんとうにたべてもいいの?」
少しだけ心配そうになったマイちゃんだがその表情も実にイイ!
『今日半日だけでも3枚稼げたんだよ?2枚なんてアッと言う間だよ!明日ももっと稼ごうね!あっ、イーリス抜きでいいよね!』
「うん!ママとふたり!」
さりげなくマイちゃんの不安とイーリスを排除する言質を取った私。これで心置きなくマイちゃんの美味しい笑顔を独り占めできる。やっぱり「晩御飯も奢る!」というイーリスを断って良かった。
そしてギルドのゲストハウスに戻った私はあらためてマイちゃんんを視る。
『鑑定眼』を発動するともう生まれたままのマイちゃんが……思わず涎があふれる感覚になるがまあ実際モップだし?垂らしてないからセーフということで。
――――――
名前:マイ
種族:人族
力 30 / 耐 20 / 速 30 / 魔 50
パッシブスキル 『精神耐性』
アクティブスキル 『小回復』
称号 『ママの飼い主(呪)』
――――――
なるほど。力と魔力の伸びがいいね。あと『精神耐性』ついてる……ちょっと寂しい思いさせちゃったからかな?それとも実は私と同じでゴブのせいだったり?そんな事より『小回復』出てる!これはいい!すごくいい!
――――――
『精神耐性』つよいこ!
『小回復』いたいのとんでけ~
――――――
ってか私の『精神耐性』と微妙に説明違うな。あのアホ女神のことだからその場の思い付きなのかもしれない。まあ回復系は私、無いからね。ってかあっても良くない?あの燃費の悪い『火弾』なんていらないじゃん!
「ママ?」
考察の海に溺れていた私に可愛い声がかかる。
『あっごめんねマイちゃん!ちょっと色々考えてたの!すごいよマイちゃん!』
「マイ、すごい?」
よし!また小首傾げのイベントSSゲット!可愛いよマイちゃん!
『そう!力と魔力がグンっとアップしたよ!』
「やったー!」
『あとね……』
「う、うん……」
そして真剣なトーンに切り替えるとマイちゃんも真剣な表情に……これだけで昇天できそうだ。
『小回復って魔法を覚えました!』
「まほう!」
両手を上げてベットの上で飛び跳ねるマイちゃん!メイド服のスカートがヒラヒラ舞う!もう私はダメかもしれんね。このまま召されそう。
「ママ!使ってもいい?」
『えっああ、いいよ!小回復っていってママに手をかざして?』
私は意識をなんとか保つように努力してマイちゃんにラノベ知識な回復方法を伝授する。まあ合っているかどうかは知らないけど。
「小回復ぅー!」
『ほわわわわぁ~!』
マイちゃんの小さなお手てが私を暖かく照らす!マイちゃんの魔法は私の心を回復してくれるものなんだね!ママ、このまま昇天しちゃうかも……
「ママ?どう?」
『はっ!ごめんママ、このままお空に上っちゃうかと思っちゃった!』
「ママ!いなくなっちゃいや!」
さっきまでご機嫌だった顔は不安そうな顔に代わり私を抱きしめるマイちゃん。抱きしめるというよりしがみ付くという感じか……私はまたマイちゃんを悲しませてしまった。自重しなくちゃね……
『ごめんごめん!ママはマイちゃん残して居なくなったりしないよ?』
「ほんと?」
『ほんとほんと!ママはマイちゃんとずっと一緒にいるからね!』
「うん!えへへ」
そのまま私を引き倒し?ベットに一緒に寝転がるマイちゃん。今日は昼間離せない時間多かったからかな?何時もより甘えてくるマイちゃん。めっちゃ幸せ!
『そうだ、体の方はどう?力抜けちゃうって感覚はない?』
「うん。だいじょうぶだよ?」
『魔法使いすぎるとフワって力抜ける感覚になるから気を付けてね』
「わかった!」
ニコニコ顔に戻ったマイちゃん。マイちゃんが魔力枯渇で倒れたら私どうなっちゃうか分からないからね。なんならこの世界破壊するかも……できるかわからんけど。きっと異世界あるあるでそのうち世界を壊せる力も夢じゃない……かも?
そんな中二病な妄想をしつつもそのまま『浄化』で全身を清め布団に入る二人。
初めての冒険者な一日が終わった。
『マイちゃんおやすみ』
「おやすみ、ママ」
◆◇◆◇◆
そして次の日。
イーリスをスルーしてダンジョンに入ろうと画策したのだがものの見事に呼び止められた。
『今日は来なくていいよってマイちゃん言ってたよ』
私はイーリスの耳元に飛んでいきそう告げる。
だが悲しい表情をしたイーリスから「そうじゃないんだよね」という返事が返ってきた。
『どゆこと?』
「昨日ね、マイちゃんがメイドさんにって言ってたでしょ?だからギルマスにお願いしといたんだよね。そしたら……ちょっとよろしくない貴族からお呼びがかかっちゃって……」
ばつの悪い顔でそうつげるイーリス。
『ほお……それでイーリスはその依頼をOKしたと?』
「そんなわけないでしょ!ギルマスに『ふざけんな〇すぞ』って言ったら……こっちからお願いしたのに今更断ればその子にも迷惑がかかるぞって……」
『まあ、それも一理あるよね』
「そうなのよ……」
なるほどね。まあ何があっても私がいれば大丈夫か。
『マイちゃん。メイドさんのお仕事入ったけどやる?』
「えっ!メイドさん!やるー!」
即答でした。
そんなこんなでそのポポスという子爵家の館までの地図を書いてもらいお昼までに尋ねる予定だ。もちろん地図はヘックに書いてもらった。イーリスはほぼ全てをヘックに聞いて書こうとしたからね。
まずは食堂で朝食をほおばるマイちゃんを堪能した私は、再びイーリスのもとに戻り情報収集。
案の定ヘックに後を任せてギルド長の部屋に行く。
「入るわよ!」
ノックと同時にそのドアをこじ開けるイーリス。
「ノックなんかしてどうした?」
「私だってノックぐらいするわ!」
このやり取りだけでも何となく二人の関係性が分かる気がする。
「とりあえず天使ちゃん、じゃなかったマイちゃんの行く伯爵の情報を頂戴!」
「その気持ち悪い話し方をやめろ!」
そう言われたイーリスは何やら歯噛みしている。というかイーリス普段脳内でマイちゃんのこと天使ちゃんって呼んでるんだなきっと。気持ちは分かるけど。
『マイちゃん。イーリスに自然なお姉さんも好きって言って?』
私の小声にコクリとうなずくマイちゃん。
「マイ、しぜんにはなすイーリスさんもすき」
「だってよ!聞いたかよ今の!やっぱマイちゃん天使!」
「その嬢ちゃんに配慮してたのかよ……」
ニッコニコになっているイーリスにつかれた様子の厳ついおっさん。普通であればこのおっさんがギルドマスターなのだろう。どれどれ……
――――――
名前:ディッシュ
種族:人族
力 650 / 耐 900 / 速 690 / 魔 110
パッシブスキル 『精神耐性』
アクティブスキル 『交渉』『見切り』『我慢』
称号 『鬼教官』『
――――――
『精神耐性』あらゆる精神負荷を軽減する心の防壁を生成する
『交渉』相手の心を読むがごとく話術が閃く才を得る
『見切り』攻撃軌道を分析し予測により身を躱す
『我慢』守りの力を増幅させ己の身を守る殻を作り出す
――――――
イーリスよりは弱いけどそれでも中々のステータス。
というかスキル多いな。あと『精神耐性』はこんな説明になるのか……というか称号二つもってる。また鬼か……この世界の人って鬼好きすぎじゃない?まあ実際イーリスの方は鬼人だけどさ。
「とりあえず知ってること全部話せ!」
「わ、わかったからそう睨むな。それに多少評判が悪いだけでそこまで他の貴族とかわらんからな」
ギルド長ディッシュはため息をついた後、その依頼主であるモーモス・ポボス伯爵について話し出した。
イーリスはすでにその部屋の豪華なソファーに座り、隣にマイちゃんを呼んで座らせていた。私はいつもの背中の鞘の中だ。何かあればいつでも飛びです所存ではあるがどうやら大丈夫そうだから大人しくしていよう。
ディッシュの話で分かったことは普通の貴族と同様若干自己中なこともあるようだが、力に応じて良い地位を与えることに力を注いでいるため非情に優秀な人たちが多く仕えているという。
近いうちに侯爵にも成れるだろうという今近隣の貴族たちの中でも注目の人物らしい。それはマイちゃんにも良い職場かもしれない。
マイちゃんもメイドの仕事にやる気満々のようなので遅れないように行かなくてはと、早めの昼食を軽く済ませえて念のため『浄化』で身だしなみを整える。そしてヘックの書いてくれた地図をもとに歩いていく私たち。
ここが……伯爵家なのだろうか……
たどり着いた先には館といってもどっかのテーマパークですか?というような広い敷地にメインの大きな屋敷を中心に、いくつかの綺麗な家が建っている場所だった。いや、きっとこの真ん中の大きな建物が伯爵家なんだろう。
そう思っていた時がありました……
「マイです。メイドさんのおしごとにきました」
その建物をぐるりと囲む門の前にいた兵が近寄ってくるので自己紹介をしてペコリとお辞儀する可愛いマイちゃん。今日もとっても良い子。
「ここはモーモス・ポボス伯爵家だけど間違いないかい?」
「うん」
これ全部が伯爵家なのか。思った以上に伯爵の権限って大きいかもね。もしかしたらこの街の領主様になるのかな?
そして「ちょっと待ってな」と言われて待つこと数分。白髪で髭を蓄えた如何にも執事なおじさんが出てくるとマイちゃんの方にナチュラルに手を差し伸べ、まるでおじいちゃんと孫ちゃんという感じで屋敷へと歩き出す。
こやつ……できる……
ナチュラルすぎだろ……あの感じで近づかれて暗殺されるなら防ぎようないよ。そう思うぐらいあっという間にマイちゃんを案内する。もちろん私は背中に鎮座して肩越しに二人の会話を聞いていた。
「なるほど。お母様もメイドをなさっていたのですね」
「うん!おとうさんがそういってた。だからマイもメイドさんのしごとするの!」
なん、だって……亡くなったお母様はメイドだったのか。確かにそう言った話は今まで聞かなかったからね……マイちゃんに下手に思い出して悲しい思いをしてほしくなかったから配慮していたつもりが……
本当はこんな話を私ともしたかったのかな?
とはいえこの執事の話術は参考になる。ぜひ体得しなくては……そう思って聞き耳を立てじっとしていた。そうこうしている内に気づけばもう館の一室のドアの前へとたどりつく。
「失礼します」
軽いノックの後、返事を待たずして中へと入る。
「旦那様、ギルドから連絡があった新しいメイドの候補をお連れしました」
「そうか」
豪華な一室のゴテゴテとした高そうなデスクから顔をのぞかせる男、これはこの伯爵家の当主、モーモス・ポボスということで間違いないようだ。
――――――
名前:マイ
種族:人族
力 30 / 耐 20 / 速 30 / 魔 50
パッシブスキル 『精神耐性』
アクティブスキル 『小回復』
称号 『ママの飼い主(呪)』
――――――
『精神耐性』つよいこ!
『小回復』いたいのとんでけ~
――――――
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名前:ディッシュ
種族:人族
力 650 / 耐 900 / 速 690 / 魔 110
パッシブスキル 『精神耐性』
アクティブスキル 『交渉』『見切り』『我慢』
称号 『鬼教官』『
――――――
『精神耐性』あらゆる精神負荷を軽減する心の防壁を生成する
『交渉』相手の心を読むがごとく話術が閃く才を得る
『見切り』攻撃軌道を分析し予測により身を躱す
『我慢』守りの力を増幅させ己の身を守る殻を作り出す
――――――
とりあえずマイちゃんはどんどん強くしていかなきゃ!しかし伯爵家か……マイちゃんを雇うにふさわしいか、私が見極めなければ!
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