第23話

「とりあえず突破はできたが、この後どうする?」


 シャーナは、ライツに質問する。


「ナンバーは控えられたでしょうから、ゲートから高速を出るのは不可能ですね」


 ライツはそう答えた。


「じゃあどうする?」


 まさか袋の鼠なんてことはないよなと不安を感じつつ、シャーナは更に聞く。


「徒歩で高速道路の外に出られるサービスエリアを使います」


 ちゃんと策はあったようだ。シャーナは少し安心した。


 徒歩では工作船との合流時間に遅れる危険もあるが、装甲もない物資輸送用のバンで警察に封鎖されているゲートを通過するよりはマシだ。


「警察の展開能力から考えても、元々拠点がある出入り口ゲートだけならともかく、外部に出られるサービスエリア全てをカバーすることは不可能。ただ、10分もあれば各サービスエリアにも警官を派遣できる」


 元警察官のサリアが、短機関銃の弾倉を交換しながら発言する。


「サービスエリアに派遣できる警官の規模はどのくらいだ?」


 ザルノフがそう聞く。


「おそらく2〜4名程度。それ以上を派遣しようとするとカバーできないサービスエリアが多くなりすぎる」


 サリアは、少し考えてから答えた。


「その程度なら最悪強行突破もできるな。到着時間に遅れるのが一番まずい。できるだけ砂浜に近いサービスエリアを使え」


「了解」


 ライツは、車を加速させた。


 緊張しているからか、その動きもいつになく荒っぽい。


 幸い、警察車両に鉢合わせることも検問に引っかかることもなく、彼らはサービスエリアにたどり着けた。


 やや広い駐車場にトラックが二台ほど停車していて、奥の方に薄汚れた公衆トイレがあるだけの寂れたサービスエリアだ。


 シャーナ達は車を降りる。幸い警官の姿はまだない。まだ到着していないのか、あるいは人手不足でここまで手が回っていないのか。


 両方かもしれない。


 ガーランがカヤに肩を貸した。


「歩けるかな?」


「うん。なんとか」


 カヤは肩を支えに何歩か歩いて、そう言った。


「シャーナさんの腕は大丈夫?」


「ああ。問題ない」


 ガーランの気遣いに、シャーナはそう答えた。


 血はまだ止まっておらず、ガーランが車内で巻いた白い包帯にどす黒い血の染みが浮かび上がっている。


「もたもたしている時間はない。行くぞ」


 ザルノフの呼びかけで、彼らは一斉に歩き出した。

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