第11話

 ナラが医療部に向かった時、マンジロウには意識がなかった。マンジロウはSHANTIで生を終えることを選んだ。


 200年を生きたキャット星人はそうはいない。だがナラにはまだ不十分だった。何度も思った。


 もう少しだけ一緒にいたい。ナラには失う準備が出来ていなかった。


 ナラが付き添って数時間後、マンジロウが目を覚ました。片言の公用語でマンジロウが言う。


「おれはおれを、ほこりにおもう」


 その彼らしい言葉に、ナラは微笑んだ。


「私も君を誇りに思う」


 マンジロウの頬を撫でたナラの手を、マンジロウが弱々しく甘噛みした。過去のマンジロウとの会話からその甘噛みの意味を、ナラは知っている。


 それがマンジロウが最期に見せた、親愛の仕草だった。

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