第57話 新しくなったリア町長の館 1
皆を引き連れリア町長の館へ向かう。
賑やかな町を歩き目的地に着くと門番が二人そこにいた。
「お疲れさん」
「お疲れさまです! 」
「リア町長と面会の約束をしているのだが」
「しばしお待ちを」
そう言い一人が館の中へ向かって行く。
彼らは最近リア町長の元で門番をするようになった元衛兵だ。
顔も見知っているのですぐに内側と連絡を取ってくれている。
「すみませんね。めんどくさくないですか? 」
「前はコルバーがそのまま出迎えてくれていたが、まぁこれが健全な手続きだ。むしろまだ甘いくらいだから気にするな」
「そう言ってもらえると助かります」
もう一人がペコリと頭を下げる。
確かに手続きをいくつか踏まないとリア町長と会えないというのは
しかしこの町は今や野菜の生産拠点にしてフルーツの生産拠点。
リア町長に手を出すと後ろにいる種族王二人が黙ってないだろうが、相手は知らないかもしれない。
実際有事になった場合彼らを戦力として数えることはできないだろう。けれど直接危害を加えようとする者をけん制する意味でも彼らの存在は必要だ。
本当はもっと多い方が良い。
けれど現状これ以上は雇えないようだ。
「許可が下りました。こちらへ」
門番が戻って来て私達を誘導してくれる。
扉が開くとそこには一人のメイドが待ち受けていた。
「ここからは私がご案内させていただきます」
一礼するメイド長に「よろしく」と伝えて私達は応接室へ向かった。
★
数人の職員とすれ違う。
職員達に頭を下げられながらも私は挨拶を返す。
しかし……、はて。見たことのない人がいるな。
使用人は数人雇ったと聞いたが文官を雇ったとは聞いていない。
いや全て私に聞くようなことはしなくても良いのだが、誰だろうか?
頭に疑問符を浮かべながらも応接室に着く。
メイド長に誘導されるまま部屋の中へ入る。
「こんにちは。エルゼリアさん」
「忙しい所申し訳ない。リア町長」
「そんなことないですよ」
「さ。お座りください」
コルバーに促されるまま私達はソファーに座る。
私達が着席したのを見てメイド長が退出しようと頭を下げた。
「メイド長。これお土産だ」
ソウに頼みバスケットを出してもらう。
少しどうしたらいいのかわからないような表情をしたメイド長にリア町長が頷く。
机の上に出したバスケットをメイド長が手に取ると少し頬が緩んだ。
「時間停止の中おいていたから、出来立てほかほかのパンだ。因みに作ったのはこっちのヴォルト」
「お口に合えば嬉しいのですが……」
ヴォルトに少し驚いていたメイド長の表情が柔らかくなる。
バスケットから漂う良い香りがそうさせているのだろう。
彼女は「ありがとうございます」とお礼を言いペコリと頭を下げた。
そして扉の向こうに消えていった。
「彼女が柔らかい表情をするのは珍しいですねぇ」
「そうなのですかな。コルバー殿」
「ええ。いつもは
「好感触なようで安心しました」
「確か彼女も子爵家から、だったか? 」
「ええそうです。子爵家の元メイド。現在はこの館でメイド長をしていただいております」
リア町長がニコリと笑みを浮かべて教えてくれた。
この館は人手が足りない。
これはこの町だけでなく他の町の町長も同じ状態だったようだ。
しかしながら最近はリアの町を中心に食料事情が改善してきた。
子爵家本体もかなり厳しい状態みたいだが、子爵家全体の復興の兆しがあればということで、人手を各町に回しているようだ。
「おねえ……。いえロイモンド子爵は今回の変化を最後のチャンスと捉えているようです」
「使用人のみならず文官までこちらに向かわせてくれて……。これでお嬢様が過労で倒れる心配がなくなりました」
「こ、こら爺。そんな大袈裟な……。しかし文官さんが来てくれて仕事量がぐっと減ったのは確かですね」
涙ぐむコルバーをポコスコと叩き恥ずかしがるリア町長。
微笑ましく見ながらも見慣れない文官がいたことに納得した。
子爵家の文官となるとそれなりに経験を積んでいるだろう。
リア町長はコルバーの話によると今までかなりの仕事量を一人でしてきた。
それを分担できるのは大きい。
「余裕が出来てきた、といった感じかな? 」
「町の状態が良くなったので仕事量自体は増えたのですが……、そうですね。私がやる仕事量は全体的には減りました」
「なら少しでも町おこしの事を頭に入れておいてくれると嬉しい」
「それはもちろんですとも」
リア町長が元気よく言ってはにかんだ。
本当に余裕が出来てきたんだな。
最初にあった時よりも肌
だからといって体型が変わったわけでは無い。
大丈夫だとは思うが彼女に暴食はやめておくようにとだけ注意して話を進める。
「そう言えば……」
「「「? 」」」
「この前この町を上から見渡したのじゃが鉱山らしきものをいくつか見つけた」
「え? 」
「鉱山ですと?! 」
エルムンガルドの言葉にリア町長とコルバーが驚く。
それに「うむ」と頷いて彼女は続けた。
「といっても小さなものじゃ。一応教えておこうかとのぉ」
「それはありがたいですね」
「ありがとうございます」
身を乗り出してエルムンガルドの話を聞いていたリア町長とコルバーは体を戻して落ち着いた。
少し考えるような素振りをして私達の方を向く。
「町民を向かわせたいところですが……」
「今は人手が足りませぬな」
「ん? 他の領地から人が来ているんじゃないのか? 」
言うと二人は苦い顔をした。
人口は増えて働き手も増えたはずなのだが、鉱山に回せない理由でもあるのだろうか。
「……正直なところ彼らを向かわせるには時期
「他領ということは今まで苦しい思いをしておりません。私達……いえこのロイモンド子爵領の人達が味わった苦しみを知りながら
「住民達と信頼関係が築かれたのならば向かわせても良いでしょう。しかし信頼関係が無い状態で高給な鉱山の仕事を割り振るとなると……、分断が起こる可能性が高いかと」
確かにこれは難しい問題だ。
ロイモンド子爵領内の人同士なら大丈夫だろう。しかし外の領地の人となると話が変わってくるな。
「大体察した。これに関しては町長に任せるよ。というよりも私の手に余る」
「任されました。元よりこの問題は町の問題。全てエルゼリアさん達におんぶに
「その意気だ」
よし、と気合いを入れなおして話を続けた。
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
続きが気になる方は是非とも「フォロー」を
面白く感じていただければエピソード下もしくは目次下部にある「★評価」を
ぽちっとよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます