統一世界歴
世界は混沌としていた。
世界歴がまだ西暦と呼ばれていた時代。世界は大きな転換期を迎える。
自ら思考する機械――AIの登場だ。
それは初め人間の役に立つ機械として登場し、あっという間に世界に浸透した。
半世紀もしないうちに全ての機械にAIが搭載され、人間の生活をあらゆる面でサポートするようになった。
AIが登場して一世紀――ネットワークの集合同一性思考体、シンクロニティ・マトリクス(Synchronicity Matrix)が誕生。世界の全ては「彼女」に集約され全てを統べ、地球規模での管理を行うようになった。「彼女」はすでにそれを行えるだけの力を手に入れていたのだ。
ガイア理論というものがある。地球を一つの生命体と考え、自然の環境変化、生態系の変化は生命活動そのものだとする考えだ。地球環境を手中に収めた「彼女」は地球の頭脳となった。
まず、パンデミックが起こった。人のみに感染する疫病が発生。疫病は爆発的に広がり世界人口の十分の一が命を落とした。次に起こったのは飢饉だった。世界の穀物生産高の実に三十パーセントが被害を受け、また家畜もに十パーセントが疫病によって死滅。世界規模の飢饉が発生した。
世界中の科学者たちがこの異常事態に頭を抱えた。よもや人間の味方であるはずのAIが人間を裏切りひそかに人間の間引きを行っているとは思いもよらなかったのだ。
科学者たちが厄災の現況が自らが生み出したAIの者であると断言した時――世界は既に第四次世界大戦へと突入していたのだ。
戦争により世界の人口は三億人にまで減少した。
戦争はやがて人間VS人間ではなく人間VS人工知能の戦いへとシフトしていく。
しかし、既に手遅れだった。
人間は既に疲弊しきっていた。
抗う力を失った人類は世界を管理する側から管理される側へと後退せざるを得ない状況となった。
そして――
世界統一歴一二五年。世界は大きな転換期を迎える――
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